遅ればせながら浅草詣で

前にも書いたが浅草には格別の思いがある。
田舎から上京した俺にとって銀座はお高くとまっているようでとっつきにくい町だったし、渋谷新宿は安いバーでいっぱい飲むか映画をみるだけの町、そこを歩くだけでなんだかワクワクする繁華街は浅草だった。
渋谷から全線25円の乗車券で終点まで行ってただ歩くだけでまた帰ってくることもあった。
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(並木藪で「小エビかき揚げ蕎麦」、蕎麦やはいくつかあるけれど初めての人には一応この店をご案内する)
そんな浅草だから毎年出来るだけ早く初詣にも行くことにしていた。
会社の若い子たちを引き連れて浅草七福神を回ろうと思ったがあまりに遠いので四福神くらいでギブアップして早いとこ新年会に切り替えたこともあった。
今年も友人たちと早めに約束していたのに都合が悪くなって、そのままずるずる、、昨日やっとお参りに行った。
遠来の朋をご案内しながら、という幸便にかこつけて。
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「浅草演芸ホール」、下席の月曜日ともなると、さすがに客も減って目の色を変えなくとも座れる。
さん吉、駒三(「親子酒」)、文生(「高砂」がよかった)、馬石(「金明竹」これもよし)、市馬(「牛褒め」)、玉の輔、ホンキートンク、東京ガールズ、ダーク広和など、今年初お目見え。
雲助がトリで凧揚げまできっちりとやる「初天神」。
この人の「初天神」は親も親なら子も子、ガキ大将みたいな親が愉快だ。
雲助の芸風がホール全体にふき渡ったかのように初春の逝くのを惜しむような駘蕩たる寄席見物になる。

扇橋はまたもや「長屋の花見」、三月の落語研究会でこの噺をやることになっているから、その稽古を兼ねているのかな。
ぐるぐる回らないように頑張ってね。
白酒が「ざるや」の頭に入ると楽屋から前座がネタ帳をもって飛び出してくる。
浅い出でやった人がいたらしい(俺は三人目で入ったので聴いていない)。
野太い声を出すオッカアが”肩で息する”「町内の若い衆」に切り替えた。
枕で「気楽に見えるかも知れないけれど、これで我々も結構いろいろ気を使うことがあって大変なんです」というから、同じネタ(話題がかぶるものも含めて)をやっちゃいけないということをいうのかな、と思ったら忌み言葉のことを云った。
あまり気を使わなかったとみえる。
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もう20年以上も前に会社が改革の嵐に見舞われたときに現場社員のために云うべきことを云っただけで“抵抗勢力”とみなされ窓際に追いやられて皆がシャカリキになっているのを背中で見ているのも辛くて毎日東京の町を彷徨った。
今ならもっといろんなところに行くのだろうが、それまで仕事ばっかりだったから結局足は上野か浅草に向かった。
首になるかもしれないと思っていたから金も使えず(子ども三人小さかったし家もなかった)三本千円の「名画座」で時間をつぶした。
寅さんをみていたら後ろの席のホームレスみたいな男が俺をつついて「こんないい奴はいねえよなあ」と泣きながら言う。
渋谷の観客だったら爆笑する場面だった。

あの頃俺に吹き荒れた嵐に比べ今日の浅草のなんとのどかなことだろう。
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泥鰌はどうですか
食べたことがないのでおっかなびっくり。でも今食べないと一生食べないかもしれないから
ではちょっと試して嫌なら出ましょうと「飯田屋」へ。
こんなおいしいものを今まで食べなかったなんて損した
良かったよかった。
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静かな浅草を歩くとさびれた浅草も目につく。
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観音様、おひざ元の哀しい人も救ってやってくだされ。
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Commented by gakis-room at 2010-01-26 20:04
「抵抗勢力」,あのときも今も,つまりはいっだって意味不明なのに便利なレッテルです。
「常に自己の最大限をめざす」人の背中を遠くからですが見ていたい。
Commented by HOOP at 2010-01-26 20:17
本来なら「いらっしゃい!」と迎えなければいけないのですが、
佐平次さんのほうがよっくご存じですから。
11月に逢った友人は、17の春に一緒にキャバレーKに行った、
と信じ込んでいました。
私は、行きたかったけど、お金がなかった。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-26 23:27
gakis-roomさん、無抵抗が勢力になってはいけないのですがね。
主体か抵抗かどちらかであるべきですね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-26 23:29
HOOPさん、キャバレーKですか、知らないなあ。
私は泥鰌やと居酒屋ですから。
Commented by たま at 2010-01-26 23:51 x
そうなんですネ
500円玉の消費税相当の「25円」で市電(路面電車)でどこまでも乗れた頃。(九州の博多の場合)
大学の月謝が「3,000円」、「間借」の畳1枚当りが月額「1,000円」、「ハイライト」が「80円」!
いまだにカナカナ文字の「物価統制令」の規定が生きている「銭湯」のお値段は、いまや如何に?
散髪代が勿体なくて伸ばした髪のせいで「10円也」のサップルメントを請求されたのは、30年前位だったでしょうか。
それにしても、「首」って字は、風呂に入った姿の「草カンムリ」に「自ら」ならば、今少し「草茫々」の懐かしさや・・・?
Commented by HOOP at 2010-01-27 01:40
キャバレーは(当時はなかった)電気機関車の愛称と同じだった
らしいのですが、なにしろその名前を聞いたのが去年の11月。
今あるのかどうかも知りません。
ちなみに、本物の「キャバレー」は仙台で一度経験したきりです。
Commented by 74mimii at 2010-01-27 06:37
「名画座」懐かしいですねぇ~
今でも「名画座」のような映画館があります?
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-27 08:39
たま さん、銭湯は今450円(東京)です。
私の学生時代は家庭教師が週3回で7500円、それに特別奨学金(一期生)が7500円、計15000円あると仕送りがなくとも暮らせました(寮ですから)。
あの首を心配している頃は銭湯に入る余裕(金銭的・精神的)にありませんでした。
浅草の「蛇骨湯」をひいきにするのはずいぶん後のことです^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-27 08:42
HOOPさん、仙台のキャバレーには行ったことがありますよ。
やくざと間違えられてタダで飲んだことも^^。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-27 08:44
74mimiiさん、本当に「名画」がかかる映画館もありますよ。
飯田橋や三軒茶屋、、など少ないですが。
Commented by tona at 2010-01-27 09:34 x
25円で乗り放題の赤と黄色の地下鉄で懐かしい浅草です。
名画座、仲見世と寄席、他に駄菓子など食べ物を買い歩くのも楽しい街ですね。キャバレーは知りませんが。
今度ドジョウが食べたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-27 10:23
tonaさん、銀座線が今でもレトロな雰囲気が残っていますね。
赤坂見附駅構内、渋谷の階段を上っていくホーム、上野駅のJRからの連絡通路、そして浅草。
先日はなんとかいうお煎餅も買って幕間にバリバリやりました。
今は直ぐにお腹がいっぱいになるのであまり食べ歩けないです。
Commented by junko at 2010-01-28 04:39 x
CIao saheiziさん
おおーーーおいしそうなおそばだなあ
帰る前に食べたい。
浅草大好きです。
浅草のあの雰囲気が私の大好きな江戸だから
そうそう、UP観ました。
えっとカールおじいさんの空飛ぶ家だったっけ
すっごくよかった。
心温まりました。
Commented by saheizi-inokori at 2010-01-28 09:37
junko さん、いつ帰るのですか?浅草寄席コースもいいですよ。
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by saheizi-inokori | 2010-01-26 10:24 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(14)

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