噺家になりたい、ちょいと遅いか 柳家権太楼・塚越孝「権太楼の大落語論」

権太楼のおふくろは深川・木場の棟梁の娘だった。
親が所帯を持たせようと思っていたイシさんという大工が、こともあろうに夜這いをかけてきたんで、そんなんじゃなくて甚兵衛さんのような、おとなしい男がいいと選んだのが親父だ。
なにも又そんなことを息子に言う必要はねえのに。
おふくろは、「子別れ」の女房、女郎上がりの、いい方じゃないほうのおかみさんみたいなものだ。
おまんまが炊けなくて、料理も作れない。

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のっけからセキララに語る権太楼、塚越孝がいい間で合いの手を入れ質問を繰り出す。

滝野川の中学の同級生に倍賞美津子がいたけれど、それより寄席に夢中だった。
小六で「落語家になる」と宣言して明治学院大学では落研をつくる。
それからの落語漬けの人生が生き生きと語られる。

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前座の修行。
師匠から「タバコを買ってこい」と言われて、タバコを眼の前に持ってきたり封を開けて、トントンとやって渡す、なんてことは、、、やっちゃあいけない。
封を切るのも楽しみなのかもしれない。
鼻っ先に持ってこられたら「あんた、礼ぐらいいいなさい」ってこと。
手の届くところに箱のまま置いとく。
タクシーの助手席に乗って行き先をいう時は後ろの師匠に聞こえるように大きな声でいう。
「ああ、わかってるな」と安心する。
落語家の神経を身につけることが必要だ。

「立つより返事」、仕事してるの分かっていて用をいいつけてるんだから返事だけを早くする。
やってることをそのままに立ってくるなんざセコだ。
「捨て耳」、人と話しているときに神経を別のところにもっていく。
高座にいる噺家がいつ下りてくるか?
「周り見てろよ」ってこと。
噺家は五つの神経を使える、後ろまで目がある。
KYじゃ噺家になれない。

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(駒沢公園。昨日の写真に登場したお爺ちゃんと孫が歩いてる)

先代小さんの稽古のつけ方。
「子別れ」をやるときに小さんは、あの亀吉は自分自身なんだと思ってやる。
自分が子どもの頃母親に叱られたことを重ねて亀吉を観る。
圓生のこまっしゃくれた亀吉は“大人の考えた子ども”、それとは違って小さん自身が亀吉なのだ。
そういうことを鮨屋のカウンターで話してくれる。
それが小さんの稽古だった。

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(渋谷・「三魚洞」、ブリ大根、かつての部下を激励する。負けるな負けるな。外は月夜だ、ぽんぽこぽん!)

年間600席のうち、寄席が400席、そこでは日当3~4000円だ。
寄席は金をもらうために行くんじゃなくて稽古のために行く。
寄席でも落語研究会(先日俺がケチつけた)でも権太楼はいつも稽古だと思っている。
新宿でうまくいかなくても池袋ではうまくいくかもしれない。
「客に蹴られる」ことに慣れている。
枝雀はそれがなかったから辛かっただろう。
彼は毎週「枝雀寄席」をやって、そこでの客に「ごめん」と言えない状況を作ったのだ。

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(渋谷駅の上に)

とはいえ権太楼も新しいネタをかけるときの準備は半端じゃない。
そのネタを演じたテープ,DVD、速記録、関係あるものはすべて集めて聴く。
「この人はいったいなにを目的としてこの噺をやっているか」ということをとことん煮詰めていく。
そうしてそのネタの「絵」が見えてきたら初めて権太楼の噺を作りだす。
「芝浜」をやりたいなと思ってから、今の「芝浜」までに30年潜伏期間がある。

談志、小朝、高田文夫、現文楽、、いろんな人の歯に衣着せない評言が面白い。
若手・中堅噺家たちが「蕎麦屋の二階あたりでこじんまりやっている」姿には厳しい。
そいつらは、そのままでいればいい。町内の落語家になってろや
こっちは、全国区の噺家を目指してる。

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(mimiさん、ボクは元気ですよ~。カフエのお伴です)

ああ、また寄席に行きたくなった。

彩流社
Commented by 74mimii at 2009-09-30 06:14
よかったわねぇ~ サンチ坊や!
時々サンチのお顔を見ないと気になるのよ・・・

噺家 遅くありませんよ ご隠居さん
是非お試しを。 
ブリ大根の大根は口の中で溶けるでしょうねぇ~ (ため息)
そろそろ大根が美味しくなる時期でしょうか。
Commented by 旭のキューです。 at 2009-09-30 08:54 x
寄席は金を貰うためにいくのではなくて、稽古のためにいく。芸の厳しさを感じます。やっぱ、サラリーマンが1番ですかね~
Commented by saheizi-inokori at 2009-09-30 09:48
74mimiiさん、毎度変わり映えのないお噂で失礼を申し上げます。
え~、白玉の歯にしみとほる秋の夜の 酒は静かに飲むべかり
なんてえ、いい時分になってきましたが、私らの酒ってェと、もう、これは静かになんてえもんじゃなくて、あんまりうるさいもんだから、周りが静かになちまうってェ、、^^。
衣カツギを塩で食うなんてのも乙です。
Commented by saheizi-inokori at 2009-09-30 09:49
旭のキューです。さん、サラリーマンでいてときどき寄席に行って好き勝手なことを言う。それが一番気楽かな。
Commented by c-khan7 at 2009-09-30 11:17
子供の仕草は難しいですね。時代が変わると、こんな子供いないだろ。。と思う事もありで。。過剰に子供のイヤらしさがでると、いたたまれなくなりますね。
Commented by saheizi-inokori at 2009-09-30 13:11
c-khan7さん、「真田小僧」の子どもがどうも好きになれないです。
「子別れ」の亀ちゃんもかわいらしく描くかいやらしく描くか噺家によって別人亀ちゃんです。
Commented by junko at 2009-09-30 17:07 x
Ciao saheiziさん
昔上野のとび職の兄弟と友達でした。
兄と弟二人なのに、お父さんがこき使うから、労働組合作ると言ってたのを思い出しちゃった。
この白い花、すごくきれいですね。
なんて言う花なのかな?
そして、相変わらず、、おいしものを召し上がっていらっしゃる..湯気もおいしさをかき立てる
そろそろお鍋の美味しい季節ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2009-09-30 19:37
junko さん、家族労働でやっているところは強いですね。でもだれかが病気になるとガタガタ、体の切り売りかもしれません。
花の名は分かりません。小さな花なのですよ。
Commented by sweetmitsuki at 2009-09-30 21:08
真っ赤な大根、人参かと思いましたよ。
さぞかし煮込んで、いい味が染みてるんでしょうね。
それで、丁度いい加減に茹った青菜が添えてあるのが嬉しいです。
何気ない所を気を抜かずにやる、何所へ行っても、プロの世界は一緒ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2009-09-30 22:55
sweetmitsukiさん、真っ赤ではないですよ。
そちらの色調をチエックしてみてください。
私がそちらを観るのは普通ですが。
Commented by maru at 2009-10-01 07:29 x
私も真田小僧とサザエさんのカツオだけはどうも好きになれません。
Commented by saheizi-inokori at 2009-10-01 09:19
maru さん、カツオ君もですか。
あの子は嫌いじゃないですよ。だめですか^^。
Commented by sweetmitsuki at 2009-10-01 21:54
大根は鮮やかな茶色に見えたのですが、美味しそうな食べ物を表現するのにあまりいい言葉ではないと思い、敢えて真っ赤と書きました。
人物の肌色はちゃんと普通に観えますので色調は大丈夫です。
紛らわしい言葉ですみませんでした。
Commented by saheizi-inokori at 2009-10-01 22:06
sweetmitsukiさん、そうですか。余計な心配をしましたね^^。
醤油の色って食欲をそそりますね。
でも赤と黄色に緑の組み合わせが一番おいしそうなのだそうです。
それを利用したのがRF1というお惣菜屋です。
この色で今やデパ地下、駅地下に大発展しています。
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by saheizi-inokori | 2009-09-29 23:12 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori
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