俺のご先祖さまを知らねえか 志ん輔が語る「居残り佐平次」
2009年 09月 16日
ぎりぎりの時間につくと前座・雷太がすでに佳境に入っていた。
達者に「熊の皮」をやる。
色っぽい噺を色っぽくしないでサゲた。
亡き志ん朝の弟子、1953年生まれ、品川出身、越後獅子の出囃子でひょいひょいと登場する。
「志ん輔三夜連続独演会」の千秋楽だ。
釈台を置いて「弥生町巷談」、弥生町の師匠なんだ。
挨拶代わりの趣向、江戸落語らしい語り。
「船徳」と「居残り佐平次」の順番を変えて「居残り」を最後に持って行く、噺の順番としては予定通りの方がいいいのだけれど、なんといっても「居残り」は長いから最後にすると断わりを言う。
俺としてはまったく異存のない所。
千秋楽だから最後に手締めをするのが常ではあるが時間的にどうなるか分からないので最初にやってしまいます、笑ったけれどピシッと決まった。
朝太が「粗忽の釘」
「落ち着きさえしたらお前も一人前なんだから」(俺みたい)と女房に言われるデエクのハッツアンが引っ越しの当日壁に8寸釘打ち込んで隣に謝りに行く噺。
落ち着かなくちゃあ、と座り込んで煙草を吸いつけて女房との馴れ初めから二人で行水した噺まで、バレ(艶笑)噺にして笑わせる。
寄席じゃやらない演出だろう。
(久しぶりに池袋・いつもの定食や、「がんもと野菜定食」。うまいものは店でてから戻ってお代わりしたくなる)
志ん輔「船徳」
船宿に居候をしている若旦那がどうしても船頭になりたいって身をくねらせて嘆願する。
好いた吉原の女が船頭が一番好きだといったもんだから、若旦那は二番目に好きだと言われたもんだから。
「四万六千日暑い盛り」、二人の客を乗せて行くことになるんだが、、。
先日、権太楼のを聴いたばかり、夏の噺だからなあ。
あの時の方が暑かった、その分だけ志ん輔、損したか^^。
仲入りを挟んで正楽の紙切り。
祭囃子をバックに「秋祭り」、「野球場に連れてって」をバックに「イチロー」、「打ち上げ花火」「お月見」
注文も季節感たっぷりだ。
志ん輔「居残り佐平次」
久しぶりに俺の噺だ。
さっきは縹色の着物に薄卵色の羽織だったのが鉛色と濃柿の取り合わせに代わる(「和の色事典」で見当をつけたから間違いかもね)。
吉原の客で一番いい客は「来ない客」、「上は来ず」、「中は昼来て昼帰り、下は夜来て朝帰り、下下が流連(いつづけ)、そのまた下下が居残りをする」なんてン。
うがってるなあ、テわけで俺は下下のそのまた下下、鬼太郎の子分かい?
「居残り」ってのは金がなくて誰かが持ってきてくれるまで布団部屋かなんかに残って掃除でもやってる。
情けない、だらしのない男だ。
そんな情けない男の名前をなんで俺がつけたか?
居残りは居残りでも佐平次兄貴はちょいとばかり居残りが違う。
友だち連れて行ってどんちゃん騒ぎ、ホントは10円もかかるところを5円づつ出させて、その金は店に払わず自分のお袋に生活費として渡してくれ、俺はここで養生するというのだ。
どうも佐平次、胸の病、温かくいい空気の品川(昔はそうだった)の遊郭で病を治そうという魂胆。
布団部屋の住人となった佐平次、店の手が回らずいらついている客のところにスルリと入り込んで巧みなヨイショをするから客が喜んで指名までつく次第。
このあたりの佐平次の調子のいいこと、乗せられる客の鼻の下がどんどん長くなるのがおかしい。
豪胆・細心なだけでなく女郎衆には優しいからモテル。
前からいた男衆(牛太郎)は客からのご祝儀も回ってこず面白くないから旦那に言って追い出してもらう。
旦那から借金はもういいから出て行ってくれと言われた佐平次、実は
お気持ちはありがたいが、今出て行くと御用と手が後ろに回る、そうすりゃお店にも迷惑はかかるでしょう、とすごんだものだから、旦那はすっかり怯えちゃって路銀から着物までやって、頭ァ下げて、お引き取りを願う始末。
意気揚々と店を出る佐平次が無事逃げおおせるかを見届けるために後をつけた牛太郎に、佐平次は旦那への噺はみんな嘘、
前にちょっと書いた映画「幕末太陽伝」はこの噺をもとにした名作だ。
落語の国の悪党連の中でもひときわ人気の高い居残り佐平次、その直系の血ィ引いてるのが、何を隠そう俺様なのだ。
達者に「熊の皮」をやる。
色っぽい噺を色っぽくしないでサゲた。
亡き志ん朝の弟子、1953年生まれ、品川出身、越後獅子の出囃子でひょいひょいと登場する。
「志ん輔三夜連続独演会」の千秋楽だ。
釈台を置いて「弥生町巷談」、弥生町の師匠なんだ。
挨拶代わりの趣向、江戸落語らしい語り。
「船徳」と「居残り佐平次」の順番を変えて「居残り」を最後に持って行く、噺の順番としては予定通りの方がいいいのだけれど、なんといっても「居残り」は長いから最後にすると断わりを言う。
俺としてはまったく異存のない所。
千秋楽だから最後に手締めをするのが常ではあるが時間的にどうなるか分からないので最初にやってしまいます、笑ったけれどピシッと決まった。
朝太が「粗忽の釘」
「落ち着きさえしたらお前も一人前なんだから」(俺みたい)と女房に言われるデエクのハッツアンが引っ越しの当日壁に8寸釘打ち込んで隣に謝りに行く噺。
落ち着かなくちゃあ、と座り込んで煙草を吸いつけて女房との馴れ初めから二人で行水した噺まで、バレ(艶笑)噺にして笑わせる。
寄席じゃやらない演出だろう。
志ん輔「船徳」
船宿に居候をしている若旦那がどうしても船頭になりたいって身をくねらせて嘆願する。
好いた吉原の女が船頭が一番好きだといったもんだから、若旦那は二番目に好きだと言われたもんだから。
「四万六千日暑い盛り」、二人の客を乗せて行くことになるんだが、、。
先日、権太楼のを聴いたばかり、夏の噺だからなあ。
あの時の方が暑かった、その分だけ志ん輔、損したか^^。
仲入りを挟んで正楽の紙切り。
祭囃子をバックに「秋祭り」、「野球場に連れてって」をバックに「イチロー」、「打ち上げ花火」「お月見」
注文も季節感たっぷりだ。
志ん輔「居残り佐平次」
久しぶりに俺の噺だ。
さっきは縹色の着物に薄卵色の羽織だったのが鉛色と濃柿の取り合わせに代わる(「和の色事典」で見当をつけたから間違いかもね)。
吉原の客で一番いい客は「来ない客」、「上は来ず」、「中は昼来て昼帰り、下は夜来て朝帰り、下下が流連(いつづけ)、そのまた下下が居残りをする」なんてン。
うがってるなあ、テわけで俺は下下のそのまた下下、鬼太郎の子分かい?
「居残り」ってのは金がなくて誰かが持ってきてくれるまで布団部屋かなんかに残って掃除でもやってる。
情けない、だらしのない男だ。
そんな情けない男の名前をなんで俺がつけたか?
居残りは居残りでも佐平次兄貴はちょいとばかり居残りが違う。
友だち連れて行ってどんちゃん騒ぎ、ホントは10円もかかるところを5円づつ出させて、その金は店に払わず自分のお袋に生活費として渡してくれ、俺はここで養生するというのだ。
どうも佐平次、胸の病、温かくいい空気の品川(昔はそうだった)の遊郭で病を治そうという魂胆。
布団部屋の住人となった佐平次、店の手が回らずいらついている客のところにスルリと入り込んで巧みなヨイショをするから客が喜んで指名までつく次第。
このあたりの佐平次の調子のいいこと、乗せられる客の鼻の下がどんどん長くなるのがおかしい。
豪胆・細心なだけでなく女郎衆には優しいからモテル。
前からいた男衆(牛太郎)は客からのご祝儀も回ってこず面白くないから旦那に言って追い出してもらう。
旦那から借金はもういいから出て行ってくれと言われた佐平次、実は
人殺しこそァいたしませんが、夜盗、かっつあき、家尻切り、悪いに悪いを重ねております歌舞伎の「白波五人男」の忠信利平のセリフで身の上噺、志ん輔得意の見得を切る。
お気持ちはありがたいが、今出て行くと御用と手が後ろに回る、そうすりゃお店にも迷惑はかかるでしょう、とすごんだものだから、旦那はすっかり怯えちゃって路銀から着物までやって、頭ァ下げて、お引き取りを願う始末。
意気揚々と店を出る佐平次が無事逃げおおせるかを見届けるために後をつけた牛太郎に、佐平次は旦那への噺はみんな嘘、
おう、おめえもなァ、この稼業で飯を食うんだったら、おれの面ァよオく覚えとけよ、えェ?おれァね、吉原(なか)ァ行っても千住(こつ)ゥ行っても、どこでも相手にし手のねえ、居残りを商売にしている佐平次ってェ者(もん)だ。(略)すっかり小遣い稼いだし、当分の間、楽に暮らせる、旦那によろしく言っとくれ、なァッ、あばよッかっこいいねえ!
前にちょっと書いた映画「幕末太陽伝」はこの噺をもとにした名作だ。
落語の国の悪党連の中でもひときわ人気の高い居残り佐平次、その直系の血ィ引いてるのが、何を隠そう俺様なのだ。
by saheizi-inokori
| 2009-09-16 22:03
| 落語・寄席
|
Trackback
|
Comments(0)