ボクのおかげで佐平次は世界が広がった

佐平次は毎日ボクと散歩してくれる。
ＣＦさんに注意されてからは１万歩なんてことはなくなってセイゼイ５０００歩を小一時間かけて歩く。
本人も毎日だとかなりばててるみたい。
土の道、日影の道を選んでくれる。


途中で行きかういろんな人と話をするんだ。
それはボクのせい、ボクが他の犬に近寄っていくとしゃべるんだ。

ほら来た、おはよう～、遊んでねって。嬉しいなあ。いくつですか？ほら、サンチ！しつこくしちゃイヤだって。ありがとうって、またねって。

ボクの代わりにしゃべるのと飼い主にしゃべるのとボクにしゃべるのがちゃんぽん、なんだかいつも喋っているより甲高い声になるのがおもしろいよ。
猫撫で声ってのかな、ボクは犬だって！

（気に入った犬を見つけるとこうやって待つんだ）

ボクがいることで今まで口もきかなかったような人と話ができるらしい。
「わんわんだ～」と近づいてくる子ども、「カワイイ！」と黄色い声を上げる女子高生、「あら、いくつですか～」と気取ったご婦人、ボクがいないのに今みたいに佐平次が話しかけたらちょっと危ないオジサン扱いだよ。

先日なんてすごくかっこいいお姉さんが追っかけてきて（犬も連れずに）「この犬、家の子とそっくり！」なんていって携帯から写真を見せてくれた。
もちろん佐平次が一人で散歩していたらあり得ないよ。

（猫君はボクが近寄って行くと逃げちゃうのが心外だ。仲よくしたいのに）

ベンチで休んでいるお年寄りなどがボクに興味を示すと佐平次は少しゆっくり歩いてボクがそのお年寄りの方に行くのを期待しているようだ。
この間も杖を横に置いたお婆さんに

どちらのご出身ですか？

なんて訊いている。
山形の訛りに聞こえたらしいのだけれど、秋田市の真ん中だといわれて

じゃあ、ねまれ、なんていうでしょ？

と知ったかぶりをしたら、分からなくて

「休め」という意味でしょ？

やっぱりワカんなくて、そりゃ山形の方でないの？とそっけなく言われてた。
ちょっとボクもこっぱずかしかったけんじょも。

（カモのお昼寝、行儀がいいなあ）

アァ見えて結構小心者で引きこもりの気味もある男だから、こういうふうにいろんな人とちょっとした話をするのはいいことだと思ってる。
おばあちゃんもうれしかったんではあんめーか。
そうそう、あのおばあちゃんがボクに

イイねえ、おじいちゃんとお散歩だねえ。

と言ったときは佐平次、ちょっと変な顔してたなあ。