お江戸日本橋亭、、好い寄席だよ 小満んも好いよ
2009年 05月 14日
日本橋三越辺り、すっかり見違えるように再開発が進んでしまった。
あの橋の上の高速道路、あれがいけなかった。
見かけは立派でも日本橋の老舗の何軒が生き残っているのだろう。
あるお菓子やの会長に「どうして身を張ってでも高速道路に反対しなかったのですか」と訊いたことがある。
年寄りに酷なことだったかもしれない。
でも今頃になってその老人が高速道路の地下化をいいだしているそうだ。
(最高裁、気持は分かるけどよ、そんなにシャッチョコばらなくても、、まるで要塞だぜ)
そんな日本橋にひっそりと「お江戸日本橋亭」なる寄席がある。
入り口に恰幅のよい見るからに元気なご婦人、今夜の主人公・小満んの奥様だ。
つい「今日は」と頭を下げてしまう、気さくな空気が全身にあふれている。
入ろうとしてふっとすれちがう人を見たら、なんだい、小満ん師匠本人だ。
半袖にスラックス、シャレた格好で、、着物に着替えなくていいのだろうか。
来る客に挨拶をしている。
(遅れて来た青年ならぬ、桜花一輪、ゆっくり咲けよ)
靴を脱いで入るとすぐに畳敷き、なんだか田舎の町内会館みたいだ。
一杯に小さな座布団が敷かれて、八分くらいの入り、人数にして100人ちょっと。
壁際に椅子が少し置いてあってそこは満員。
若い女性が結構多いのは意外だった。
前座・鈴々舎やえ馬が「金明竹」をはじめる直前まで入り口の戸が開いていて外にいる小満んが見える。
着替えが間に合うのかなあと俺が気ィもんでどうする。
(東上野で)
「本膳」
着替えの心配は杞憂、いつものように粋な藤色の着物に黒の羽織でニコニコと登場。
今昔物語辺りから採った噺、「お芋コロリン」とか言ったナ、小さい頃絵本で読んだ気がする。
マナーの難しい食事は面倒だ、というテーマでマクラに小咄をいくつか振る。
「ベベットの晩餐会」(バベットだと思うのだが師匠はべベットといった)という映画で村人が海がめのスープを吸って幸せそうな顔になるのをチラッとやってみせる。
小咄とか俳句・川柳などを紹介してイタズラっぽい目でにこっとするところがなんともいい気分だ。
爆笑というのではなくて柔らかいあったかい笑い。
滑稽、という言葉が似合う。
「清正公酒屋」
加藤清正が「セイショコ」さまと庶民に親しまれ畏敬されているという噺から白金の覚林寺の謂れや熊本の清正ビイキ、大衆芸能などで清正が「さしたる用はなけれども」なんて言いながら出てこないと納まらない、なんてマクラ。
こんな噺を聴いているのが楽しいのは小三治のマクラと同じかもしれないが内容はまるで違って小満ん風。
酒屋の息子が向かいの饅頭やの娘に惚れたけれど親同士がこじれにこじれて絶交中。
どうしても諦めないというなら勘当だってんで二人は高輪心中、男は法華経で門徒の女も「ナンミョウホウレンゲキョウ」ってやるけど、どうも気分が盛り上がらない。
やっぱり心中は「なんまいだぶ」だと、そしてドブン!
芝居仕立てが途中で入ったり(音の悪い録音の伴奏がチョイとご愛嬌)、普段はみられないネタと師匠の役者振り。
まあ、正直なところ俺はここんとこはあんまり、でしたが。
「天災」
いろんな人の天災を聴いた。
小満んの八五郎の乱暴さも相当なもんだ。
乱暴で心学のナマル先生を「デンガクヤロウ」(シンガク野郎)などと罵倒しつつもその教えに心を開いていくあたりが気持ちがいい。
こいつ本当はいい奴だなと共感できるのだ。
リェンジョ(離縁状)20枚も書いといてくれ、壁ェ貼っといてカカアやババアと喧嘩するたんびに引っ剥がしてくれてやるんだ、って本気で離縁する気なんか皆無だ。
ハッツアンが持参した紹介状を読みながら上目遣いで「フンフン、この男が、なるほどなるほど」って声には出さないけれど、頷いてニヤッと笑う場面、短いけれど実に自然で今まで聴いた高座では一番かもしれない。
(お江戸日本橋亭、はねて小満ん師匠一家総出で見送る。右端の和服姿が師匠、真ん中あたりでベージュの洋服でお辞儀してるのが奥様、娘さんは左奥らしい)
帰るときに受付にいたお嬢さんが「お母さん」と呼ぶので、師匠の娘さんだと分かった。
一家総出の手作り寄席でしたね。
お江戸日本橋亭が壊されないように祈る。
あの橋の上の高速道路、あれがいけなかった。
見かけは立派でも日本橋の老舗の何軒が生き残っているのだろう。
あるお菓子やの会長に「どうして身を張ってでも高速道路に反対しなかったのですか」と訊いたことがある。
年寄りに酷なことだったかもしれない。
でも今頃になってその老人が高速道路の地下化をいいだしているそうだ。
そんな日本橋にひっそりと「お江戸日本橋亭」なる寄席がある。
入り口に恰幅のよい見るからに元気なご婦人、今夜の主人公・小満んの奥様だ。
つい「今日は」と頭を下げてしまう、気さくな空気が全身にあふれている。
入ろうとしてふっとすれちがう人を見たら、なんだい、小満ん師匠本人だ。
半袖にスラックス、シャレた格好で、、着物に着替えなくていいのだろうか。
来る客に挨拶をしている。
靴を脱いで入るとすぐに畳敷き、なんだか田舎の町内会館みたいだ。
一杯に小さな座布団が敷かれて、八分くらいの入り、人数にして100人ちょっと。
壁際に椅子が少し置いてあってそこは満員。
若い女性が結構多いのは意外だった。
前座・鈴々舎やえ馬が「金明竹」をはじめる直前まで入り口の戸が開いていて外にいる小満んが見える。
着替えが間に合うのかなあと俺が気ィもんでどうする。
「本膳」
着替えの心配は杞憂、いつものように粋な藤色の着物に黒の羽織でニコニコと登場。
今昔物語辺りから採った噺、「お芋コロリン」とか言ったナ、小さい頃絵本で読んだ気がする。
マナーの難しい食事は面倒だ、というテーマでマクラに小咄をいくつか振る。
「ベベットの晩餐会」(バベットだと思うのだが師匠はべベットといった)という映画で村人が海がめのスープを吸って幸せそうな顔になるのをチラッとやってみせる。
小咄とか俳句・川柳などを紹介してイタズラっぽい目でにこっとするところがなんともいい気分だ。
爆笑というのではなくて柔らかいあったかい笑い。
滑稽、という言葉が似合う。
「清正公酒屋」
加藤清正が「セイショコ」さまと庶民に親しまれ畏敬されているという噺から白金の覚林寺の謂れや熊本の清正ビイキ、大衆芸能などで清正が「さしたる用はなけれども」なんて言いながら出てこないと納まらない、なんてマクラ。
こんな噺を聴いているのが楽しいのは小三治のマクラと同じかもしれないが内容はまるで違って小満ん風。
酒屋の息子が向かいの饅頭やの娘に惚れたけれど親同士がこじれにこじれて絶交中。
どうしても諦めないというなら勘当だってんで二人は高輪心中、男は法華経で門徒の女も「ナンミョウホウレンゲキョウ」ってやるけど、どうも気分が盛り上がらない。
やっぱり心中は「なんまいだぶ」だと、そしてドブン!
芝居仕立てが途中で入ったり(音の悪い録音の伴奏がチョイとご愛嬌)、普段はみられないネタと師匠の役者振り。
まあ、正直なところ俺はここんとこはあんまり、でしたが。
「天災」
いろんな人の天災を聴いた。
小満んの八五郎の乱暴さも相当なもんだ。
乱暴で心学のナマル先生を「デンガクヤロウ」(シンガク野郎)などと罵倒しつつもその教えに心を開いていくあたりが気持ちがいい。
こいつ本当はいい奴だなと共感できるのだ。
リェンジョ(離縁状)20枚も書いといてくれ、壁ェ貼っといてカカアやババアと喧嘩するたんびに引っ剥がしてくれてやるんだ、って本気で離縁する気なんか皆無だ。
ハッツアンが持参した紹介状を読みながら上目遣いで「フンフン、この男が、なるほどなるほど」って声には出さないけれど、頷いてニヤッと笑う場面、短いけれど実に自然で今まで聴いた高座では一番かもしれない。
帰るときに受付にいたお嬢さんが「お母さん」と呼ぶので、師匠の娘さんだと分かった。
一家総出の手作り寄席でしたね。
お江戸日本橋亭が壊されないように祈る。
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takoome at 2009-05-15 01:35
サワディ〜カ〜
アケビやねぇ,去年いっぱい爺さんから種をもらったけど,数本出たっきり、それも枯れてしまったよ,でも今年、とんでもないとこから一芽でてきた。無事を祈る!
アケビやねぇ,去年いっぱい爺さんから種をもらったけど,数本出たっきり、それも枯れてしまったよ,でも今年、とんでもないとこから一芽でてきた。無事を祈る!
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maru33340 at 2009-05-15 07:04
朝から気持ち良いお話し伺いました。ありがとうございます。日本橋亭行ってみたいですねえ。
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saheizi-inokori at 2009-05-15 07:59
takoomeさん、紫の?そうなんですか、知らないで撮ってました。
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saheizi-inokori at 2009-05-15 08:04
maru33340さん、「小満んの会」は次回は7月13日6時半からです。予約などをしなくても会場に行けば入れます。
次回は「酢豆腐」「ミイラ取り」「千両みかん」です。
次回は「酢豆腐」「ミイラ取り」「千両みかん」です。
しゃれた名前の寄席が日本橋にあったのですね。
若い女性が多いというのが、嬉しいです。伝統的なものを鑑賞するのも伝わっていかなくては。
ミツバアケビの花、細部まで良く撮れていますね。たくさんかたまっているのが雄花で、左上の違う形が雌花らしいです。
若い女性が多いというのが、嬉しいです。伝統的なものを鑑賞するのも伝わっていかなくては。
ミツバアケビの花、細部まで良く撮れていますね。たくさんかたまっているのが雄花で、左上の違う形が雌花らしいです。
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saheizi-inokori at 2009-05-15 09:14
tona さん、ありがとう。小渕沢で撮りました。
今もいい風が吹いているでしょう。
今もいい風が吹いているでしょう。
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mmiizzz at 2009-05-15 11:40
日本橋、むかし通勤してましたが、
良いところだよなあ~と思うばかりで何も遊びませんでした。
人形町も近いし、今度行ってみようかな。
私が通勤していた会社は。。。再開発でビルごと無くなりました。
とほほ。
良いところだよなあ~と思うばかりで何も遊びませんでした。
人形町も近いし、今度行ってみようかな。
私が通勤していた会社は。。。再開発でビルごと無くなりました。
とほほ。
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kaorise at 2009-05-15 18:38
私は田舎ものなので日本橋に憧れていたんです。
日本橋をひとめ見ようと、えっちらほっちら受験ついでに地下鉄に乗って見にいったら、あわれ高速道路の下にぐつたり横たわる日本橋の姿。
このような立派な橋の上を道路をかけるとは、、と衝撃でした。
そのうち慣れちゃったのがまた哀しい。
日本橋をひとめ見ようと、えっちらほっちら受験ついでに地下鉄に乗って見にいったら、あわれ高速道路の下にぐつたり横たわる日本橋の姿。
このような立派な橋の上を道路をかけるとは、、と衝撃でした。
そのうち慣れちゃったのがまた哀しい。
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saheizi-inokori at 2009-05-15 23:34
みい さん、日本橋亭の取り壊しの噂があるのですよ。道路に横たわって阻止しなきゃ^^。
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saheizi-inokori at 2009-05-15 23:35
mmiizzzさん、ほんとにとほほです。
せめて寄席くらい残したいです。
せめて寄席くらい残したいです。
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saheizi-inokori at 2009-05-15 23:38
kaoriseさん、私はかなり本気であの道路を破壊することを考えました。
何とか云う薬品をかけるとコンクリートはあっさりと壊れるそうです。
その薬品の名前を忘れました。
kaoriさんならご存じでは?
何とか云う薬品をかけるとコンクリートはあっさりと壊れるそうです。
その薬品の名前を忘れました。
kaoriさんならご存じでは?
by saheizi-inokori
| 2009-05-14 22:40
| 落語・寄席
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