恐竜の時代に戻るのか? ローワン・ジエイコブセン「ハチはなぜ大量死したのか」(文藝春秋)(1)

1億4千万年前の世界には花は咲いていなかった。
植物の種類はせいぜい3000種類。
被子植物、花をつける植物が色、形、匂い、知恵、擬態を駆使して昆虫たちをおびき寄せ自らの繁殖を謀ったのは、それまで昆虫を遠ざけようとしていたのから見たら植物の革命的な戦略転換だった。

この戦略転換は大成功、「被子植物の爆発的な分化」が始り、今日の植物の種類は25万から40万種となったが、そのほとんどが被子植物だ。

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昆虫たちも花によって命を保持し子孫を育てるために様々な変化をして植物との共生関係を築きあげてきた。
ミツバチ、マルハナバチ、カブトムシ、ハチドリ、、花たちは自分の上得意を選別して他の虫や鳥が近寄らないように自らの姿を変えていく。
オダマキは長い舌を持つハチドリのために長い筒状の花弁を整えた。
砂漠に夜咲くサワロサボテンは普通の花の5万倍もの花蜜を蓄えて芳醇な香りで誘う。
その相手はレッサーハナナガコウモリだ。
マルハナバチがトマトが隠した花粉を引き出すのには翅の振動(一秒間に300回)というマジナイが必要だ。
それを知らないミツバチはナス科に対してはお手上げだ。
シロツメクサは受粉すると香りが失せる。
もう要らない、近寄らないで、というサインだ。

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(鳥は赤い色が好きだという)

不思議と精妙なタクラミに満ちた関係!
植物と花粉媒介者(虫たち)が共進し共生している世界をほんのちょっと垣間見るだけで俺の宇宙観が変わっていくかのようだ。

gakisさんが野の花に目覚めた「野の花記念日」の到来もまじかだが昆虫たちの野の花記念日は今の私たちの食卓を構成してくれている。
いや食卓どころか自然のシステムを支えている。

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狂牛病とよく似た噺。
今、花と虫たちのその世界が壊れそうだ。
ミツバチが、マルハナバチが、ハリナシミツバチが、クマバチが、そして人間たちが数を数えもしなかった世界の黒子たちが、激減し、絶滅しつつあるという。
どうもそれは人間たちがやってきたことのツケがまわったようなのだ。

花のない風媒の世界に戻ろうとしているのか?

訳 中里京子
スリルに満ちた楽しくも恐ろしい本だ。
Commented by kaorise at 2009-04-24 02:32
そうなんですよね、、みつばちが激減してるとニュースで知りました。
昆虫のなかでも一番可愛くて大好きなのに、、心配でたまりません。
今より少し生活が安定したら、みつばちを飼おうと思っていたのに、、
日本の両生類だってどこかのアホが持ち込んだ細菌か何かで絶滅するかもしれないと言われていますよね。
蛙さん達がみんなしんじゃったらどうしよう、と泣いてしまいました。(こどもみたいなんですけど)
花と虫が死んじゃったら生きていても辛いです、人間もその時は滅びるかもしれません、、だってそんな世界では心が死んでしまうから。
Commented by 74mimi at 2009-04-24 02:41
こちらでは「ミツバチの絶滅」とテレビで大騒ぎしていますが
私が行くところではどこでも蜂が沢山なのですよ。
斜面にあるミツバチの巣(個人か小団体の)にも
沢山群がっています。どうなっているのでしょう・・・
Commented by takoome at 2009-04-24 03:37
犬がブルブルっと蚤をふるい落とすがごとく、
私達も地球に「君たち悪い子だからいらないよ」って同じ事をされるのです。

Commented by molamola-manbow at 2009-04-24 09:12
読まなきゃ!
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-24 09:43
kaoriseさん、開発、農薬、抗生物質、外来種、さまざまな要素が積み重なって自然のシステムを壊しつつあるようです。押しとどめることが出来るのか、間に合うのか?
恐ろしい滝壺が行く手に待っている。
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-24 09:47
74mimiさん、アーモンドの農家は今破局の一歩手前のようです。
ミツバチがいないから。
アーモンドの大規模・単一農法がミツバチの首を絞めた形跡もあるのです。
お互いに首を絞め合っている。
ミツバチだけの問題ではなくて自然の連関が壊れると思いもよらぬところに破局が訪れます。
狂牛病も牛に牛を食わせるという自然を無視したところから始まったを人は忘れてはならないとおもいます。
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-24 09:49
takoomeさん、そうですよね。人間だけが永久に生きつづけるなんてあり得ないかもしれない。
もうずいぶん生きてきたんだから淘汰されてもやむを得ない?適者ではなくなった?
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-24 09:50
MANBOWさん、ぜひお読みください。海の世界にも似たようなことは数多見つかるのでしょう。
Commented by Rie at 2009-04-24 10:49 x
この記事を読んでいて思い出しました。
フランスに来て間もない頃に読んだ新聞記事の中に、ミツバチの大量死を
報じたものがありました。
フランスは実は蜂蜜王国なのですが、その蜂蜜を採る花畑に撒いた除草剤が原因で
肝心のミツバチが死んでしまったのです。胸の痛くなる記事でした。
風の谷のナウシカではもう20年も前に、そういった生態系のくずれた未来の世界で
何が起こるかを警告していますよね。
植物たちの発想の転換ストーリーにも興味がありますし、いつかぜひこの本を読んでみたいです。
Commented by gakis-room at 2009-04-24 19:14
受粉にそんな不思議があるとは知りませんでした。ミツバチの減少に着いてはニュースで知っていましたが,蜂蜜に限らず花にとって一大危機ですね。

「野の花記念日」の紹介,恐縮です。
Commented by rinrin at 2009-04-24 22:48 x
saheiziさんこんばんは
こちらは桜がハラハラし始めました。ミツバチは、前に農薬が問題になりましたね。稲に付くカメムシのための農薬です。これはカメムシがつくとお米の商品価値がなくなります。しかし、減反している田んぼが近くにあると全然役に立たない農薬です。ものすごい微粒な為に舞い上がるほうが多いのです。ですから風のない朝の早い時間に蒔くのです。昆虫がまだ動けない頃に・・・・なんだかわからない方向に指導されているような気がします。ですから昨年は我が家もその農薬を使用しませんでした。でも草刈が大変なのよ~~~
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-25 00:08
Rie さん、除草剤、防虫剤、抗生物質、開発行為、、人間たちが自然に手を加えれば必ず虫たちに大きな影響が出るはずです。
全て遺伝子工学を使ったものしか手にいれることが出来なくなるのも遠くないかもしれない。
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-25 00:10
gakis-roomさん、花に取っての大問題は人間にとっての大問題でしょうね。
野の花記念日もできなくなる?
Commented by saheizi-inokori at 2009-04-25 00:13
rinrinさん、夜道を照らす街灯に蛾が集まることすら蛾の行動には大きな影響があるといいます。
農薬びたしの花の蜜を吸ったら虫たちには影響があるでしょうね。
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by saheizi-inokori | 2009-04-23 23:54 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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