贅沢な一週間 「望月」三つの競演 幸弘☆満斎☆広忠☆能楽現在形・第10回(宝生能楽堂)
2009年 04月 16日
いよいよ三回目の「望月」、待ってました!
ホヤホヤの人間国宝・友枝昭世の登場だ。
調べの笛・幸弘からして前二回と違うようだ。
地謡のメンバーも凄い。
地頭が香川靖嗣、塩津哲生も隣に。
シテの登場、スイースイーと節をつけたムーンウォーク。
名乗りは明晰で説得力がある。
そう。今日の友枝シテは終始説得力に富んでいた。
静かで美しい説得力。
安田母子に亡き父の部下だったこと、主君と母子に対する思い、盲御前に扮して酔った仇を討とうと、、語る言葉。
さらに舞の全てが。
たとえば獅子舞いの準備のために橋がかりを退場する時のムーンウォークをだんだんスピードを上げて最後は幕の向こうに飛び込むような律動感のある演出や母子と再会した時のシオリの仕草などが過剰な叙情を排して小澤の心情を簡潔にしかも余すところなく表現した。
獅子舞いは片山や金井より低い姿勢で首を左右に大きく振る仕草を多用する。
美しく威厳のある舞いであるが秘めた思いをしっかりと胸に抱いているかのようだ。
覗き込み、ついには近寄って脚をトントンと踏んで望月の様子を探り、手を上げて花若にタイミングを知らせる。
得たりやおうと右手をさっと上げて応える花若の健気さ。
いざ襲撃、花若を呼び寄せ、後ろから介添えをするようにして望月の前に連れて行く。
目的を果たした後は、右手に金色の扇をかざし左手で花若の肩を抱いて立ち、天晴れ天下の孝行息子、ここに父の仇を討ち果たしたり~!
見事に絵になっている。
今までで一番幼い子方(内田貴成)だが気合いはお兄ちゃんたちに負けてない。
友枝シテを煽らんばかり。
囃子も前二回とは違った。
獅子の出る前、乱序、小鼓・大倉源次郎はトンと一つ打って太鼓・金春国和を誘い、広忠は直ぐに参加するが、今までからするとグッと落ち着いた、腹に籠った咆哮、幸弘の笛もぴよろぴよろと、これまでと違う歌い方だ。
どんなに凄い獅子への呼びかけになるかと思いきや前回よりあっさりと獅子が出てくる。
だからといって決して軽く囃したのではなく、むしろ短い時間に凝縮したのかもしれない。
金井獅子は走り出て一ノ松あたりの欄干に脚をかけて見栄を切ったが友枝獅子は舞台の手前でクルッと後ろを向いて二ノ松あたりまで戻って回って登場。
アイは再び萬斎、一回目より切れ味がなかったような気もした。
望月・ワキ・森常好に言われて宿を見つけるときに万作はちゃんと宿を見て評価しているのに萬斎はセリフが先に立って宿が感じられなかった(なんちゃって)。
観世、宝生、喜多と三つの流派による「望月」、いずれも最高の配役を得て素晴らしかった。
盲御前になったツレが杖をどうあしらうのか、梅若晋矢(観世)は橋掛かりに入るところでカラント投げ捨て、朝倉俊樹(宝生)は後見に渡して橋掛かりに行き、狩野了一(喜多)は両手に持ち替えて抱いて幕までもっていく。
三者三様でそれぞれの味わいがある。
随所に観られるそのような違い。
落語で同じネタを噺家によってまるで違う噺のように演じるのには慣れているが能もこんなに違う表現になるとは知らなかった。
誰が一番かって?
いずれ劣らぬ杜若。
(明治神宮・御苑内・南池)
他に、一調「勧進帳」塩津哲生の謡は老哲学者が深山の大樹のもと語る趣きがあった。
語りが磐に沁みこんでいく。
大鼓の広忠もしみじみ。
狂言小舞「景清」
萬斎、紫の装束と流石に連戦の窶れで悽愴の気を漂わせ、カッコイイ~!
一調一管「鷺乱」
笛・幸弘と太鼓・金春国和の長い掛け合いがナニがナンだかワカラナイ狂乱。
(神宮御苑内・菖蒲田方から南池を望む)
有り難いと言ったらそれに尽きるのではあるが一週間に三回、これだけ密度の濃い熱演を見続けて、ホンマ、腑抜け間際。
フルマラソンを完走したってこんな?
咳の発作も公演中は鳴りをひそめて無事乗り切った。
やる方はずっとずっと疲れただろう。
三人を中心に若い人たちが、こうして頑張り、大先輩たちはこぞって死力を振り絞ってエールを送る。
日本の明日は明るい。能狂言の世界では。
ホヤホヤの人間国宝・友枝昭世の登場だ。
調べの笛・幸弘からして前二回と違うようだ。
地謡のメンバーも凄い。
地頭が香川靖嗣、塩津哲生も隣に。
シテの登場、スイースイーと節をつけたムーンウォーク。
名乗りは明晰で説得力がある。
そう。今日の友枝シテは終始説得力に富んでいた。
静かで美しい説得力。
安田母子に亡き父の部下だったこと、主君と母子に対する思い、盲御前に扮して酔った仇を討とうと、、語る言葉。
さらに舞の全てが。
たとえば獅子舞いの準備のために橋がかりを退場する時のムーンウォークをだんだんスピードを上げて最後は幕の向こうに飛び込むような律動感のある演出や母子と再会した時のシオリの仕草などが過剰な叙情を排して小澤の心情を簡潔にしかも余すところなく表現した。
獅子舞いは片山や金井より低い姿勢で首を左右に大きく振る仕草を多用する。
美しく威厳のある舞いであるが秘めた思いをしっかりと胸に抱いているかのようだ。
覗き込み、ついには近寄って脚をトントンと踏んで望月の様子を探り、手を上げて花若にタイミングを知らせる。
得たりやおうと右手をさっと上げて応える花若の健気さ。
いざ襲撃、花若を呼び寄せ、後ろから介添えをするようにして望月の前に連れて行く。
目的を果たした後は、右手に金色の扇をかざし左手で花若の肩を抱いて立ち、天晴れ天下の孝行息子、ここに父の仇を討ち果たしたり~!
見事に絵になっている。
今までで一番幼い子方(内田貴成)だが気合いはお兄ちゃんたちに負けてない。
友枝シテを煽らんばかり。
囃子も前二回とは違った。
獅子の出る前、乱序、小鼓・大倉源次郎はトンと一つ打って太鼓・金春国和を誘い、広忠は直ぐに参加するが、今までからするとグッと落ち着いた、腹に籠った咆哮、幸弘の笛もぴよろぴよろと、これまでと違う歌い方だ。
どんなに凄い獅子への呼びかけになるかと思いきや前回よりあっさりと獅子が出てくる。
だからといって決して軽く囃したのではなく、むしろ短い時間に凝縮したのかもしれない。
金井獅子は走り出て一ノ松あたりの欄干に脚をかけて見栄を切ったが友枝獅子は舞台の手前でクルッと後ろを向いて二ノ松あたりまで戻って回って登場。
アイは再び萬斎、一回目より切れ味がなかったような気もした。
望月・ワキ・森常好に言われて宿を見つけるときに万作はちゃんと宿を見て評価しているのに萬斎はセリフが先に立って宿が感じられなかった(なんちゃって)。
観世、宝生、喜多と三つの流派による「望月」、いずれも最高の配役を得て素晴らしかった。
盲御前になったツレが杖をどうあしらうのか、梅若晋矢(観世)は橋掛かりに入るところでカラント投げ捨て、朝倉俊樹(宝生)は後見に渡して橋掛かりに行き、狩野了一(喜多)は両手に持ち替えて抱いて幕までもっていく。
三者三様でそれぞれの味わいがある。
随所に観られるそのような違い。
落語で同じネタを噺家によってまるで違う噺のように演じるのには慣れているが能もこんなに違う表現になるとは知らなかった。
誰が一番かって?
いずれ劣らぬ杜若。
他に、一調「勧進帳」塩津哲生の謡は老哲学者が深山の大樹のもと語る趣きがあった。
語りが磐に沁みこんでいく。
大鼓の広忠もしみじみ。
狂言小舞「景清」
萬斎、紫の装束と流石に連戦の窶れで悽愴の気を漂わせ、カッコイイ~!
一調一管「鷺乱」
笛・幸弘と太鼓・金春国和の長い掛け合いがナニがナンだかワカラナイ狂乱。
有り難いと言ったらそれに尽きるのではあるが一週間に三回、これだけ密度の濃い熱演を見続けて、ホンマ、腑抜け間際。
フルマラソンを完走したってこんな?
咳の発作も公演中は鳴りをひそめて無事乗り切った。
やる方はずっとずっと疲れただろう。
三人を中心に若い人たちが、こうして頑張り、大先輩たちはこぞって死力を振り絞ってエールを送る。
日本の明日は明るい。能狂言の世界では。
Commented
at 2009-04-16 22:52
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented
by
saheizi-inokori at 2009-04-16 23:16
鍵コメさん、いよいよ始まりですね。
頑張ってください。
頑張ってください。
0
Commented
by
kaorise at 2009-04-16 23:33
今日は明治神宮へおでかけですか〜saheiさん、活動的だわあ、、
ここの池にはいっぱい亀ちゃん達がいるでしょう?
暖かくなってきたから、みんな冬眠から目を覚ましたのかなあ?
ちなみにうちのみゅうは、今日は甲羅干しして体ポカポカになって嬉しそうでした。
ここの池にはいっぱい亀ちゃん達がいるでしょう?
暖かくなってきたから、みんな冬眠から目を覚ましたのかなあ?
ちなみにうちのみゅうは、今日は甲羅干しして体ポカポカになって嬉しそうでした。
Commented
by
saheizi-inokori at 2009-04-16 23:36
亀は気が付かなかったなあ。鶴はいましたよ。恋も、いや鯉も。
Commented
by
たま
at 2009-04-17 00:17
x
「五月の鯉の吹流し 口先ばかりで はらわたなし」に対して、「花は咲けども 実を付けず 山吹の花」と詠われ、子供さんに恵まれない家庭の敷地には「禁句」のヤマブキの黄花のようですが、「白花ヤマブキ」には、秋にイチゴ様の黒い実を付けるのが不思議です。
して、「イチジク」(無花果)には、「花はなくとも果を結び・・・」かしら。
ホントは、熟れた果実の中にて紅い花をしっかり咲かしているのですが・・・。
して、「イチジク」(無花果)には、「花はなくとも果を結び・・・」かしら。
ホントは、熟れた果実の中にて紅い花をしっかり咲かしているのですが・・・。
Commented
by
saheizi-inokori at 2009-04-17 06:55
この頃お面を見るのが好きになりました。
生きている人のように見えてきます。
そうそう写真展「マイ・グランドマザース」を水曜日に見てきました。
いやー、聞きしに勝る迫力ある写真の数々でした。コーラスの先生などは2度目とかだそうで、ばったりお会いしました。
ありがとうございました。
生きている人のように見えてきます。
そうそう写真展「マイ・グランドマザース」を水曜日に見てきました。
いやー、聞きしに勝る迫力ある写真の数々でした。コーラスの先生などは2度目とかだそうで、ばったりお会いしました。
ありがとうございました。
Commented
by
フローラ
at 2009-04-17 08:36
x
カロライナジャスミンかしら?
Commented
by
saheizi-inokori at 2009-04-17 09:37
tona さん、あの歯が笑えますね。最初に出てくる写真の。
能面を一つ家にあったらと思いますが、狭いところではたとえ買うことが出来ても置くところがないです。
能面を一つ家にあったらと思いますが、狭いところではたとえ買うことが出来ても置くところがないです。
Commented
by
saheizi-inokori at 2009-04-17 09:38
フローラさん、ジャスミン、そういえばそんな香りです。小さな花ですね。
Commented
by
つきのこ
at 2009-04-17 14:18
x
ホントに中身の濃いい1週間でした。
さて私は2週間後、東京ドームで2日間飛んできます^^;
さて私は2週間後、東京ドームで2日間飛んできます^^;
Commented
by
saheizi-inokori at 2009-04-17 19:40
つきのこさん、さてなんだろう?
ブログを楽しみにしてますよ^^。
ブログを楽しみにしてますよ^^。
by saheizi-inokori
| 2009-04-16 22:22
| 能・芝居
|
Trackback
|
Comments(12)