たっぷり酔いました 友枝喜久夫13回忌追善「友枝会」(国立能楽堂)

能「橋弁慶」
友枝昭世の息子(養子)、友枝雄人がシテ・弁慶、子方(牛若丸)にその息子雄太郎という配役。
楽しい活劇。

狂言「清水」
シテ・野村萬 アド・野村万蔵
やはり親子が息の合った舞台。
萬の演じる太郎冠者が絶品で最後に化けの皮をはがされて鬼の面を取られた時の「ばれちゃったか」という笑顔がたまらない。
こんな顔を見せてくれるなら何べんでも騙されたい。

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(どこで食べたっけ?食べたことだけ覚えてる。蕎麦の実)

能「半蔀(はじとみ)」
御大、友枝昭世がシテ・夕顔の亡霊、ワキ・村崎野の僧・宝生閑に光源氏との恋の思い出を語る。

アシライ出シという大小鼓のやりとりに誘われるように登場する女性と僧の問答を聴いているうちにうっとりしてきて夢の中で能を観ているのか実際に能楽堂にいるのかわからなくなった。

後半の「序の舞い」がなんとも言えなく美しい。
「なんとも言えなく」です。ただただ夢見心地(しっかり起きている夢見心地)。

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能「道成寺」
雄人の弟・井上真也がシテで緊張の「披き」粟谷浩之のそれを観て以来の大一番だ。
幕の奥から「えいや~えいと~」とよく通るいい声が聞えて来てやがて野村万蔵と野村扇丞が他の二人と大きな鐘を担いで登場してから二時間近く、見どころばかりと云ってもいいほどの緊張の連続で腑抜けになる。
とくにシテ・白拍子が小鼓(成田達志)と真剣勝負をする乱拍子から急之舞い、そして鐘の中へ飛び込むまでが凄い。
裂帛というか、いい加減な気持で立っていたらふらつきそうな気合いがシテに受け止められる。
シテから発せられる気合いが小鼓の気合を誘う。
三十分を超す乱拍子の間、見所も息を呑み、時折「は~っ」と膝を折るときにわずかに大きな息を継ぐ。

鐘後見という鐘の綱を持つ役の友枝昭世が厳しい目で綱をつかみ舞台を観ているのが印象的だった。

ワキ・宝生欣哉
大鼓・佃良勝 太鼓・助川治 笛・一噌幸弘も素晴らしかった。

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鐘の中で蛇体となった鬼女が僧たちの祈りに苦しみシテ柱に巻きつく風をする。
ここで先日観た新作能「夢浮橋」を思い出した。
瀬戸内寂聴原作のこの能で、阿闍梨が浮舟に対する煩悩の虜になって身を焼かれる苦しみをシテ柱に絡みつく演技で表現した。
阿闍梨になった梅若六郎の謡の声と、声明(浮舟の剃髪場面で天台僧によって歌われる)の素晴らしさが際立った能だった。
Commented by たま at 2008-11-03 18:38 x
蕎麦の白花とその黒い表皮の実。
夏の段々畑に、紅色の茎に白い花、田舎の蕎麦畑の光景を思い起こします。今に思えば、酸性の土壌を嫌うため、しっかりと地面には白い石灰の白色を残しつつ・・・。(「焼畑」がいいのも、そのためとか…)
隣の白いゴマの花(ホタルグクロ様の花柄)に入ったミツバチを捕まえようとその先端をつまんだ途端に差された指に、兄に教わるままに、緊急避難でかけた小便(アンモニア)のほとばしりでした・・・。
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-03 20:23
たまさん、なんとなく胸が熱くなるような思いでですね。お兄さんはお元気ですか。
取っ組み合いのけんかなどしませんでしたか。
首っ玉にかじりついたときにプンと汗のにおいがしませんでしたか。
Commented by gakis-room at 2008-11-03 20:55
われは西搭の傍らに住む武蔵坊弁慶にそうろう,こんな始まりでしたっけ,謡曲の橋弁慶は。なぜかここだけは覚えています。
Commented by 74mimi at 2008-11-04 04:26
美味しそうですねぇ~
夢にみそう・・・
Commented by sweetmitsuki at 2008-11-04 05:30
「橋弁慶」はおとぎ話とは逆で、辻斬りが牛若丸というのが意外で面白いです。
どちらが本当なんでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-04 07:38
gakis-roomさん、もう私も忘れてしまうのですが、確かそんなセリフです。
きらびやかな装束で現れます。
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-04 07:40
74mimiさん、蕎麦はそちらでも食べられるのではないですか。貝もあるのでしょうが、調理が違う?
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-04 07:42
sweetmitsukiさん、あれはそう云う噂を聞いていくと云うのですがその辻切りが牛若ということなんでしょうか?腕試しで人を切ることなんか当たり前という倫理感だった?
Commented by MAKIAND at 2008-11-04 20:19
蕎麦の実。蕎麦畑は見ることがありますが、そばの実を食べたことはありません。
母に蕎麦を自分でこねて、まるでパン粉をこねたような状態にお砂糖とおしょうゆをかけて出されたことがあったのを覚えています。
しかし、実のままは頂いたことがありません。
Commented by hisako-baaba at 2008-11-04 21:35
お能見たことないのに、こう解説していただくと情景が浮かびます。

↓お説に同感です。こんな話を聴きました・・・父子のブッシュ(物主)の時代は戦争ばかり。レーガン(霊眼)のとき戦争は起きなかった・・・
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-04 21:45
MAKIANDさん、それは蕎麦掻ですね。私も冬の夜などに母が作ってくれました。昔は安い食べ物だったのですが今は結構高いですよ。
でも懐かしい味です。
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-04 21:51
hisako-baabaさん、能は能楽堂で実際に見られると全然違うと思いますよ。
ぜひチャンスをつくってご覧になることをお勧めします。国立能楽堂の定期公演は切符も取りやすいしそんなに高くないです。
Commented by ginsuisen at 2008-11-04 22:07 x
道成寺・・能楽師にとっては成人式だったのですね。喜多流の場合はこれを披かないと石橋とかできないのだそうです。
それにしても、芸道とは大変なものだなーと深く思います。
継ぐ運命を選択した甥の二人・・これからがますます大変そうですね。そしてこちらは、立派に継いで行くその過程を今見られることに感謝です。
Commented by saheizi-inokori at 2008-11-04 22:21
ginsuisen さん、真也さん、いや本人以上の周りの緊張ぶりが伝わってきました。
清々しいですね。
確かにこういう場に立ち会えて感謝します。
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by saheizi-inokori | 2008-11-03 15:06 | 能・芝居 | Trackback | Comments(14)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori