燕路の泥棒がいい 鈴本上席

客席を見て差し控えなければならないネタもあるが、泥棒の噺はその点問題がない。
俺は泥棒だ、失礼な噺をするなってイカル人はいないもの。

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柳家燕路、「モグラ泥」

昼日中は目の不自由なオモライの振りをして目ぼしい家の間取りとか掛け金の位置などを確かめておく。
夜になると印をつけた敷居の下を掘って手を差し入れて掛け金を外し一件に及ぼうというモグラ泥。
ようやく手を入れたら寸法を間違えていたから掛け金に届かない。
落語に出てくる泥ちゃんはいづれもドジで間抜けでお人好し、表彰状をやりたくなるくらいだ。

おりしも家の中では主人が月末の勘定をソロバン、クチュクチュ(口の中で舌を鳴らすのがパチパチじゃなくてこっちの方がリアル)やっている。
どうも勘定が足りない。
わずかばかりのことでおっつかないってのは、情けないナア
家の中で主人が言えば外で泥的も
わずかばかりのことでおっつかないってのは、情けないナア

アア、どうしても二円足りない
アア、どうしても二寸足りない
お上さんが口真似をしてるのかと思ったら、土間の隅から手が生えてる。
騒ぐお上さんを制して主人は
細引きを持って来いって云ったんだ、股引じゃねえ。
これでとっつかまえて突き出せば褒美に二円くらいはもらえるかも知れねェ
ってんでぎりぎり!
アイテテテ!
親方!大将!勘弁してください。ホンの出来心で。病気の親の薬代も払えないんで
泣き落としにかかるがアルジはびくともしない。
ギリギリ!
見かねたお上さんが、仕返しが恐いから助けておやりと云うのを聞いて
そうだとも、俺には68人の子分がいるんだから
と今度は凄んでみせるが
付け上がって何をいやあがる!親も養えない野郎が68人もの子分がいるはずがない
火をつけるというと、家は借家だから平気だ、とギリギリ。

痛いまんまにして主人はどこかに行ってしまった。
置いてけぼりの泥的、手は痛むは野良犬が来てションベンを引っかけるは、身から出たサビとはいえ哀れにして間抜けなカッコウだぜ。

そこに通りかかった間抜けな男。
スッカンピンで兄貴に5円借りている。
足元に変なものがあるので乞食かと思ったら泥棒だと自分から云うではないか。
わ!勘弁してくれ。アタシはスッカンピンだ
泥棒は自分の背中にあるガマグチを取ってくれと頼む。
取ってくれれば一杯奢るから
中に小刀が入っているから、それで細引きを切って逃げようって算段。

男がガマグチを開けてみると10円も入っている。
へえ、いい商売してんだなあ、待てよ、これを頂いてしまえば、一杯奢られなくても兄貴に返して手銭で飲める。、、
ほんとに縛られてるんだろうな?そうかい、じゃあ。
オイ!オイ!あ、待て、泥棒!
噺の間中、ず~っと上半身を倒して、右手の肘を床につけて拳を上に上げたまま、悲鳴を上げ、怒鳴り、泣く。
見ている内に本当に床から腕が生えているような気がしてきた。
なんだか泥棒が気の毒で一杯奢ってやりたくなっちゃった。

燕路は間抜けな泥棒そのマンマの味がいい。

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ホントは今日のお目当てはトリの小三治。
「うどん屋」。
前にも聴いたがますます好い出来で小三治ワールドを堪能した。
今日のマクラは「今年の風邪を引いた時の注意事項」だった。
下痢を伴う風邪が流行っているのでそういうのにかかったら水をたくさん摂ってドンドン出すこと、とか医者みたいにいろいろしゃべって
何しに来たんだ?
と自問(どっとくる)。
そうそう、その前にインフルエンザの予防注射の案内が高齢者に来たことについて
あれは、親切心からじゃなくて、インフルエンザにかかると医療費がかかるからで、年寄りには生きていてもいいから患わないでくれ、ってことのようだ
とも云ったなあ。

噺の中でうどん屋が昨夜の夢見が悪かった
天皇陛下が越中フンドシをしていた
と云うのだが、前回は
天皇陛下が安倍川餅食ってた
だった。
俺は僅少差で安倍川に一点だ。

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寄席に行ってライブならではの歓びは小三治の百面相が見られるってこと。
酔っ払いがクダ巻くとき。
みい坊の花嫁姿を語るときの泣き顔と笑顔、これだけで帰ってもいいくらい。
炭火で手をあっためて冷たい顔やら頭を撫で回す仕草。
目をパチクリやる風情。
うどんを夢中になって啜る女が一息ついて顔を上げたときにうどん屋と目があって、ニカっと笑うおかしさ。
そして、圧巻は風邪引き女がうどんを食うところ。
上野界隈のうどん屋は思わぬ客に驚いたこったろう。



ろべえ「旅行日記」
ダーク広和・奇術、ロープが不思議。
禽太夫「風呂敷」
南喬「長短」、味がある。二人の演じわけが好い。
大瀬ゆめじ・うたじ、漫才。
志ん輔「豊竹家」、落語名人会か何かで熱演を聴いたが、こうやって寄席で軽い感じでやるのもいい。
〆治「大岡政談・池田大助」
小円歌、三味線漫談、出囃子、志ん生とか三平のが懐かしく、得意の「見世物小屋」も久しぶり。
燕路「もぐら泥」
小雪・太神楽
Commented by 74mimi at 2008-10-10 05:42
おホホッ・・・アハハッ!!
Commented by henry66 at 2008-10-10 06:27
私も安倍川餅に一点。
Commented by sweetmitsuki at 2008-10-10 06:34
泥棒が入ったお宅、門は無くて敷居の向こうはすぐ道で、敷居を開けると玄関というものは無くて直接お茶の間になっているという、そういう間取りなのですね。
子供の頃に住んでた家がそういう家だったので懐かしくなってしまいました。泥棒には入られませんでしたけど。
Commented by saheizi-inokori at 2008-10-10 07:18
74mimiさん、おかしいでしょう。
良くもばかばかしいことを考えると思いますよ。
Commented by saheizi-inokori at 2008-10-10 07:19
henry66さん、お汁粉とか牡丹餅じゃなくて安倍川ってのが、、^^。
Commented by saheizi-inokori at 2008-10-10 07:22
sweetmitsukiさん、土間といってるからたたきはあるようですね。
落語には「つるつる」とか情景がイマイチ分かりにくいのがあります。
でも可笑しい。道端に腕一本で縛りつけられた間抜けな泥棒の姿を想像すると。
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by saheizi-inokori | 2008-10-09 23:53 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(6)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori