権太楼、下ネタを丁寧に 吉弥も好演  落語研究会(国立小劇場)

大銀座落語祭は5年で閉幕となったが「TBS落語研究会」は481回目、毎月ってのは早いね、6月30日が前回だったからなおのことだ。
前回の模様を書こうと思いながら果たせなかった。

三遊亭好二郎「一分茶番」。
今秋真打ちに昇進する人、張り切って芝居ネタ、先代金馬「蛙茶番」のテープは時どき聴いているがこれは初めて聴いた。
”間”、これから一生かけて学んでいくのだろう。頑張れ!

桂吉弥「池田の猪買い」 。
「ちりとてちん」ファンには垂涎?
「アホとちゃうか」をかなり超えてしまって「アホそのもの、どないにもならん豪傑アホ」が新鮮な猪の肉を薬食いするとて産地・池田の鉄砲打ちを訪ねる噺。
道中の地名を言い立てるのが楽しい。
丼池筋、淀屋橋、大江橋、蜆橋、安土町、淡路町、、

「黄金餅」で江戸の地名を一気呵成に言い立てて「歩いた連中は随分草臥れたけれど、あたしも草臥れた」と志ん生がやるのは何べん聴いても面白い。

出だしは、ちょっと、と思ったが丼池を出て北へド~ンと突き当たる辺りから調子が出てきて会場を味方にしていく。
池田で鉄砲打ちが登場すると、それは堂々たる貫禄の猟師、アホとのやりとりがいい。
けれんみのない正々堂々の高座、上方落語もいいねえと思わせて、なるほど、人気があるはずだ。

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(目白で「グリーンカレー」、暑いときにはうまい)

立川志の輔「三方一両損」。
お~っと!だね。
先日正朝のを聴いたばかり。
この噺は江戸っ子の活きの良い啖呵を楽しむところが眼目だと思う。
その点、正朝の方に軍配は上がる。
志の輔は職人と言うよりオサムライさんのような感じがするのだ。
それと彼、ふつうにやるんじゃツマラナイと思ったかヒネリを利かせる。
大岡越前は後世に名を遺すために大向こうを唸らせるような事件、解決を選んだ、という評価をする。
「三方一両損」のお裁きを下して「私ってなんて切れるんでしょ!」と自己陶酔する越前が金太郎や吉五郎に「三方一両損の意味が分かるか」と問い、分からないというので何度も説明をするが両名意地になって分かろうとしない。
二人に膳部を振舞う大岡が「振る舞い飯を食べ過ぎないように」と注意すると「しんぺえいらない、大岡(多かあ)食わねえ」「たった越前(一膳)」と答える。
ふつうはこれでサゲになるのだが志の輔の大岡は「それのどこが面白いのじゃ」と訊くセリフを付け加える。
あまり理屈っぽくするのもなあ。
もちろん全体として流石当代の大立者、十分すぎるほど楽しませたことはいうまでもないのですがネ。

桂藤兵衛「源太の産」。
私には初めての噺家、前の正蔵に入門して正蔵亡き後、2代目橘家文蔵に入門した。
珍しい人が珍しい噺をやった。
小咄でも済むようなバレ噺をひとつの噺にするのにはやや平板、単調だった。

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(大塚・小閣楼「豚バラと青菜のチャーハン」、豚バラの脂と青菜の瑞々しさがミックスしていける。俺には量が多すぎるのが難か)

柳家權太樓「家見舞い」。
兄貴ンとこが家を新築して仲間はみんなお祝い(家見舞い)に行ったのに俺たち二人だけまだだ。
行くのはいいんだが手ぶらじゃ行かれない。
持ってるものをあげても無駄になる。
こいつは先にナニが欲しいか訊いてみようって、なかなか配慮の行き届いた二人だ。
「なんでも好きなものを、そう云ってくんねえ、ド~ンと持ってくるから」

ばあさんが井戸の水を運ぶのが大変だから水がめにしよう(それに水がめなら安そうだし)ってんで水がめを買いに行って驚いた。
頃合いのが「26円」だって。
その焼け火箸を水に突っ込んだようなのは無しにしてくれよ
??
ジューってのを、とって
ああ、6円?それならこっちがと見せられて、それでいいかと決めそうになって明らかになった衝撃の事実、二人の有り金は5銭、そう、たったの5銭、なにが「なんでも好きなもの、そう云って」だ!

困った二人に古道具屋の店主が見せるのは軒下で雨を受けている口の広いカメ。
只でもよい、もって行けと言うわけは、どこかの家を壊したときに発生した便所の肥えカメだった。
水を張って置かないと臭くてたまらないから水を入れて兄貴のところに持ち込む。
兄貴、すっかり喜んで「一杯やっていきな」。
ウマイ酒はいいのだが一緒に冷奴が出てくる。
「うまい!あっしはこいつがデエ好きで」二つも食ったか、隣りの相棒が妙な顔をしてこっちを見ている。
「なんでえ、おめえも奴は好きだろう?」ささやく相棒「随分冷たそうな水に入っているね」
兄貴、この水は?
そうよ、おめえたちが持ってきてくれた水ゥ、早速使わせてもらったぜ
忘れていました!あっしは豆腐断ちをしたんで。
そりゃ、しょうがねえ、じゃあ”かくやのこうこ”はどうだ
いいですねえ、かくやのこうこ、古漬けを刻んで水に、、思い出した、こうこも絶っていたんだ。
なんでも絶ってるんだな。それじゃ酒は止めて焼き海苔でおマンマを食っていけ
焼き海苔におマンマ、、(大丈夫だ)、いただきやしょう。
うまいうまいと飯を食っていたら相棒は又黙ってこっちを見てやがる。
なんだい?「そのおマンマ、湯気が立ってる。炊きたて?」
おマンマも絶ってる。
水かめの水を使ったというと変なことになるってんで流石の兄貴も不審を抱いてカメをみると酷いオリが浮いている。
尻に帆立てて逃げ出そうとする二人に
こんだ来るときに、鮒ァ二、三匹持って来てくれ。鮒はオリを食うというから
なあに、それにゃァ及ばねえ。今まで鯉(肥え)が入っていたから。

臭い、下品ともいえる噺で、寄席では短い時間でウケを取るのに都合がいいのか時どき聴く。
権太楼の師匠、先代小さんは
汚ねえ噺は、より丁寧にやれ
と云ったそうだ。
伝統の落語研究会で、しかもトリにこれをやる。
権太楼は誠にじっくりと丁寧にやった。
肥えカメのくすぐりだけに焦点をあてて臭気芬々にするのではなくスッカラカンの二人を演じ分けた上でその二人の掛け合いの妙、店でのやりとり、窮地に追い込まれた二人が”名案”に助けられた思いで肥えカメを担いでいく姿、彼独特の愛嬌のある笑顔を活かしていい噺にした。
”香気”漂う噺だった。

ついでに前回のメンバーとネタだけメモしておこう。

三遊亭歌彦 「谷風情相撲」 、柳家三三「万金丹」、春風亭昇太「茶の湯」、林家正雀「音曲質屋」、入船亭扇遊「三年目」 。
扇遊は「三年目」を初めてやった(ネタおろし)。
Tracked from お笑い芸人大好きブログ at 2008-08-18 12:51
タイトル : 三遊亭楽太郎が円楽を襲名
あの笑点で有名な三遊亭楽太郎さんが円楽に襲名したそうです。楽太郎さんは正直襲名は嫌だった見たいです。というのも自分が襲名するということは、師匠が円楽でなくなってしまうからだそうです。落語の世界はあまり詳しくないけど、色々と複雑な心境なんですね...... more
Commented by 74mimi at 2008-07-25 06:16
そちらはお暑いようですから栄養価の高そうなお食事はいいですね。でも、ほんとうに量がたくさん・・・
↓このお湯のノレン雰囲気が素敵ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2008-07-25 07:30
74mimiさん、暑さしのぎには栄養と落語です。
笑っていればすっきりします。
33度とかいう発表はビルの屋上の百葉箱での観測、コンクリートの照り返しを受ける道路ではもっとアツいのですから寄席にでも逃げ込まないと蒸し焼きになってしまう^^。
Commented by nao at 2008-07-25 14:05 x
グリーンカレーもいいですね♪
最近、自宅での制作に追われて汗をまったくかかない生活を続けていたら
夏バテ気味に^^:暑い時には汗を沢山かかないと駄目
なんですね。だから暑い日に辛いものが食べたくなるのかな☆
Commented by イネ at 2008-07-25 16:14 x
残暑お見舞い申し上げます
吉弥さんいいですね。わたしもちりとてちんファンですが、そもそも吉弥さんのお顔に魅せられて番組を見ることになってしまいました。
いつか高座の吉弥さんにお会いしたいです。
Commented by makiand at 2008-07-25 20:19
うーん。美味しそうです。
今度、そちらにいく時には私も食べてみようかな。
目白ですね。
チャーハンはまねして作ってみようかな。
ほとんどご飯を食べないのですが、チャーハンとか味つきご飯は好きなんです。^^
Commented by saheizi-inokori at 2008-07-25 22:30
nao さん、若いんだから走りなさい!
朝晩3キロ!
Commented by saheizi-inokori at 2008-07-25 22:31
イネ さん、ソウカナア、フツーの顔だけどなあ^^。
Commented by saheizi-inokori at 2008-07-25 22:33
makiandさん、グリーンカレー、店の名を忘れました。
チャーハンの方がお勧めかな。
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by saheizi-inokori | 2008-07-24 21:25 | 落語・寄席 | Trackback(1) | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori