記事にも書けない波の世界の美しさ 第2回日経能楽鑑賞会「友枝昭世 松風」(国立能楽堂)
2008年 06月 29日
素晴らしすぎて記事にまとめられない。
行平中納言に愛された汐汲みの姉妹、幽霊となってなお行平を忘れられず恋慕い続ける。
姉(シテ・友枝昭世)が行平の形見の長絹を身にまとい松の木を行平の姿とみて妹(シテツレ・大島輝久)の制止も聞かず舞い狂う。
シテとシテツレが橋掛かりで共に謡う一声
汐汲車わずかなる、憂き世のめぐるはかなさよのなんという玄妙、か細いかと思えばさにあらず、強いということはないけれど、ぐっと俺の心をわしづかみにしてしまった。
それより以前、すでに笛・松田弘之、小鼓・成田達志、大鼓・亀井忠雄のお調べからして予兆はあった。
ワキ・森常好とアイ・石田幸雄が須磨の浦に立つ松の木のいわれを語り、大鼓が小さく、ポンと叩いて始まった真の一声が予兆を本物にして、そこに登場したシテとシテツレだったのだ。
月さえ濡らす袂かな二人が哀しみを歌って舞台にあがる。
シテが大鼓の脇を通ってシテ柱から前に進む。
友枝、亀井の二人が並んでいる!
俺はそれを確かに観て感じている。
シテ、シテツレがときに掛け合い、ときに合唱をし、ワキが謡い、地謡が語り謡い、、低くうねり、高く、強く、速く、ゆったりと、、優しく慰め、恨みに沈み、激しく舞う。
地謡が
寄せては帰る片男波と謡うとツレはするすると大小前に下がる。
見えない糸がそうしているかのようにいれ違いにシテが前に出る。
シテとツレが二頭の蝶のように舞台を交錯する。
明暗、強弱、悲しみと喜び、寄せては引き、、ここに大きな波と思えば向こうは引いている。
今は静かなたゆたいだが早くも沖には浪頭が迫っている。
波だ、波のうねりだ、潮騒だ。
波の創造主という月がすべてを黙然と照らしている。
シテ、ツレ、ワキ、地謡、囃子、アイ、後見、登場するすべてが混然一体となって創り出す波動・うねりの世界に漂い我を忘れていた。
後見・塩津哲生 中村邦生
地謡・金子敬一郎 友枝雄人 狩野了一 内田成信
長島茂 出雲康雅 粟谷能夫 粟谷明生
この日は狂言「隠狸」もあった。
シテ・野村万作とアド・野村萬斎の親子による飄逸な狂言。
これ一つで帰ってもいいほどの名舞台だと思ったが、なんせ「松風」が凄すぎた。
いつか両方ともちゃんと記事を書けるようになりたいものだ。
前記事で「genocide」や「holocaust」といった残酷な言葉を使いましたが、これらの言葉を世界的にポピュラーにした張本人の台頭から消滅までを時系列にまとめた分かりやすいドキュメンタリー映画を紹介しましょう。 『ヒットラー』(Hitler, A Career) 1977年、西ドイツ(当時)にて製作。 監督:クリスチャン・ヘレンドルファー、ヨアヒム・C・フェスト ナレーションは日本語 154分 チョット長いのですがナレーションが日本語なので時間は苦にならないと思います。 ...... more
>シテが大鼓の脇を通ってシテ柱から前に進む。
>友枝、亀井の二人が並んでいる!
>俺はそれを確かに観て感じている。
この瞬間!すばらしい!本当に一期一会!
ぞくぞくっとしましたね。