ニューオーリンズ状態が毎日 「カラシニコフ」 松本 仁一 (朝日新聞社)
2005年 09月 06日
今朝のTVで被災下のニューオーリンズの状態を伝えていた。赤ん坊を抱上げて「ミルクも水も無い!」と悲鳴を上げる父親。無法地帯と化していつ銃で襲われるかと怯えて街も歩けない人びと。世界で一番の国、特に最近商業施設的にも注目を集めているニューオーリンズが一夜にして凄まじい状態になってしまった。
今アフリカの多くの地ではこの状態がずっと続いているのだ。アメリカは日本を始めとして世界中から援助の手が差し伸べられて元の文明国に戻ることが保障されている。在日アメリカ大使館ではニューオーリンズの死者に対する哀悼の記帳を受け付けている。アフリカの民にはそういう望みはあるのか?
この本はそのアフリカで、世界で、大きな力を振るっているカラシニコフについて書いた”いい”本だ。
1947年に旧ソ連軍の設計技師が開発、その人の名をとって「カラシニコフ」という”悪魔の銃“。操作、手入れが簡単で、安く精度も高い。故障もしない。この銃が世界のいたるところで猛威を振るっている。内戦・クーデター・テロ・・戦いのありようを変えてしまった。冒頭に11歳でゲリラに拉致されて15歳で住民の捕虜3人を銃殺(カラシニコフで)したシエラレオネの美少女が登場する。
著者はアフリカ各地を、時には単身で歩き(無法地帯ではガードマンを7人も雇い)その地の荒廃ぶりと、その原因となった・今もなり続けているカラシニコフが、どのようにコントロールされないままに乱用されたかを見て、写真を撮り、考える。つまるところは、兵と教師に給料がきちんと支払えていることが”国家”であることの最低限の条件ではないのか。その条件がまったく守られていない国ともいえない国は”失敗国家“だ。そのような失敗国家にも日本のODAが直接行われている。国の再建にはまったく役に立たず汚れた権力者たちの懐に入ってしまう。著者は、ロシアにカラシニコフ氏を訪ねる。好々爺がそこにいる。イギリスへ「戦争と犬」を書いたフレデリック・フオーサイスを訪ねて、途上国がわずかな武力で簡単に“乗っ取れる”ことを聴く。
現代世界の危うさ・抱えている悲惨を、普段俺は意識しないで生きている。そのことについて、胸倉をつかんで、ものを言われたようなルポだ。アフリカの餓死・カラシニコフで殺されし者たちに哀悼の記帳はされない。
読み応えがある。自分で現地・現物を訪ね、現に人に会ってきた迫力がある。
何が出来るわけでもないけれど、まずは知ることからですね。
トラバありがとうございました。
半年ものあいだ気がつかず、失礼いたしました。
ニューオーリンズでは、しかし半年たった今もなお、世界一の大国とは思えないような状態が続いているという報道を目にします。暗澹たる気持ちになります。いま自分は、自分のいる場所で、なにができるか? 自問を続けるいっぽうで、行動にも出なければ……。