伝統を継承する者たちに天寵を ビデオ「鼓の家](NHKテレビ)と「歌舞音曲」(紀尾井ホール)
2008年 06月 15日
昼観たビデオ、「鼓の家」について、それから先週観た亀井広忠プロデユースの「歌舞音曲」についてしっかり書いた記事が消えてしまった。
流石に書き直す気力が湧かないなあ。
伝統を継承する家、亀井忠雄(能楽師葛野流大鼓方・人間国宝)・田中佐太郎(女性・歌舞伎長唄囃子方田中流家元)夫妻が親たちからどれほど死に物狂いで芸を教えられ、それを又子どもたちに伝えていこうとしているか。
血っていうけれどそんなものはなにもないです。亀井忠雄がいい、
名人の子どもでもダメなのはいっぱいいます。
子どもの教育って12歳までだと思う。それ以上になるともう親にはどうにもならない。母である佐太郎がいう。
突然、撥が飛んでくる。田中傳佐衛門(二男・現在田中家元)、田中傳次郎(三男)が今思い出して語る。
拾うと今度はビンタ。
鬼の佐太郎、閻魔の忠雄。
家には母はいない。
父が二人。
「安宅」の「延年の舞」の稽古をする忠雄と広忠(長男・写真・能楽師大鼓)を観ると、そんな稽古は遊びであったかと思える。
どちらも相手の命を取る気合いだ。
生きて終わったことが僥倖と思われるような壮絶なやりとり。
観ている俺が息苦しくなった。
言葉だけではなくて本当に「命がけ」「倒れるまでやれ」「命のやりとり」の修業を親子という間柄をこえて教える者と教わる者としてやっている。
それが今俺のような者にまで能やお囃子の素晴らしさを伝えてくれる。
感謝する他はない。
しかも彼らの家族の結束、愛情は外の誰も付け入る隙がない。
見事、としかいいようがない。
「紀尾井ホール」の「歌舞音曲」も良かった。
詳しいデータも、もう書く元気がないので「良かった、素晴らしかった」とまるでテレビのリポーターみたいなセリフで勘弁してください。
笛、小鼓、大鼓、太鼓の合奏の妙、それぞれの楽器の面白さ(小鼓があんなに音色を変えられるとは!)、謡との掛け合い、、あたかも囃子方入門のようにいろいろなやり方で能楽の素晴らしさを西洋音楽のホールに展開してくれた。
演者も曲目も選び抜かれたものと見えて興奮の二時間半だった。
そうそう、一噌幸弘の笛も良かったんだよなあ。
ビデオは2004年にNHKハイビジョン特集で放映されたものをちょっと前にお借りして、そのままになっていたのを「歌舞音曲」に行ってあわてて観たのです。
早くみればよかったなあ。
でも観てよかった。間に合った。
今、脇の宝生閑さん(昭和9年生)と亀井忠雄さん(昭和16年生)が能楽界を支えているといわれています。忠雄さんがかつてトーク講義でこう言ってました「亀井家の伝統は年功序列ではなく、実力主義。自分は命がけのものを見せられてきた。16歳のときに観世寿夫さんに出会い、この人について行こうと心を決めた。ライバルはいない、目標は寿夫さんの芸位。他には笛の藤田大五郎。子供に対しても、親としては子供と考えていない、超一流でないと意味がないので、1歳から道具を与えた。超一級は一人では育てられない。だから一流のシテ方に預けた。今、国立研修所で困るのは、こんにちはなどの挨拶をきちんとできて育ってきてない子が多いこと。そういうのを育てるのは苦労する。そういう子の親は親でないので・・特に、靴をそろえられない奴はダメだ・・」とも。見続けたい一家です。
凄いことを普通にしているということかな。
あの夫婦には絶妙の平衡感覚があるのですね。それがあの奇跡ともいえる家族を創り上げたんだと思います。
「きわめつけの男の料理」旨そうでした。みんな酒を飲まないのですね。当たり前なのか。
だからかえって会話が弾むのかも知れません。
お酒を飲まないのは、傳佐衛門君(野坂さんの娘と結婚・今や歌舞伎界の重要人物)だけで、広忠君、傳次郎君もよく飲むようですよー。絶滅危惧は、一噌幸弘氏のほうが先でーす。広忠君はまだ30代前半ですから、間に合うかなー。
それにしてもビデオの中にこんな映像あったのですね、まさに石橋の獅子の顔?この父子で鼓方ではなく、乱能で石橋のシテとツレを演じたことあります。うまかったですよー。さすが、謡が完全に入っていると思いました。
傳佐衛門たちは歌舞伎興行中だしね。
ビデオを携帯で撮るのは結構大変ですね。連続シャッターが切れないから。
すさまじい芸の承継です。