腹ふくるるは何ゆえぞ 映画「厨房で逢いましょう」
2007年 10月 11日
原題「EDEN」の方が良い。
そうしたら来館者は減るだろうけれど。
子供の頃、妊娠した母の膨らんだ腹を見て自分にもそういう腹が欲しいと思いひたすら食べまくる男の子。
十歳の時に嫌いな義父の愛犬を料理するとそれとは知らぬ義父は舐めるように食べてしまったと言うエピソードが語られる。
今は料理界注目のレストランのオーナーシエフ。
テーブル3つ、半年先まで予約がいっばいだ。
137キロの巨体が興味を持つのは料理だけ。
医学的にも女性はカフェのウエイトレスを眺めるだけの存在だった。
ふとしたアクシデントをきっかけにそのウエイトレス(エデンと言う名前)と自閉症の女児が天才シエフの創ったチョコレートを口にする。
その瞬間、二人は楽園・エデンに踏みいったような恍惚に囚われる。
もうこの楽園を出たくない。
意を決してエデンがシエフの厨房を訪ねて無理やり試食させてもらった料理の食材は「牛の睾丸」。
彼女は出された分では我慢できずにパンの中の料理を全て食べてしまう。
牛、数頭分。
こう書いていくといかにもオドロオドロした映像と物語かと思う人もいるかも知れないが、そして或る意味ではそんな展開を俺も期待したけれど、実は美しい色調の落ち着いた映像が語るのは旨いものを食う喜び(レストランで美味にうっとりする客の描写が楽しい)とどちらかと言えば有りがちな男女の関係だ。
エデンがあり得ないくらい鈍いけれど、それもよくある話。
”大きな腹”が鍵だね。妊娠、食欲、抑えつけられた、または膨満する欲望。
寓話、大人の童話、せっかくだから本当にもっとオドロオドロ路線でひねくっても面白かったんじゃないだろうか。
体調不良ですが、食欲だけはなんとかあるので・・・
ちょっと見てみたいです。
心の休息にはいいかもしれませんね。
私もモノを食っているところは基本的に美しくない場面だと思います。
しかし、うまいものに対する関心は強い(私は)。そうすると食べているところをみたい。
二つの対立する要求の中でどういう映像を作り出せるかが発信側の腕の見せどころ。
この映画は美しく見せたい場面と生の欲望をぎらぎらと見せたい場面をうまく描いているように思いました。
いったいどういう経路で出演を決めたのか・・・我が家では志の輔に駆けで負けたのか酔った勢いで、承知したのでは・・と想像して楽しみました。でも、新作イタリアン・コロッケを食べて幸せそうな顔をしていらっしゃいましたー(本音は昔コロッケ派と思いますが)。食べもののシーンは幸せそうな顔がポイントですね。無言で食べるのは時を経た夫婦。饒舌は恋愛中・・・昔のヘップバーンの映画の台詞です。ところで、この映画、あの太ったオジサンが私とダブり、ポスターも敬遠していました。原題は「EDEN」ですか、それなら見ようかな。