小三治の湯屋番、聴きたかったなあ 池袋演芸場(2)

ろべい、噺家の名前。
喜多八の弟子。
弥次さん喜多さんで弥次。でもそのまんまだと弥次喜多で弟子の方が上に来ちゃう。
で、ろべい。
苦味走った良い男。
いい声で平林さんを訪ねる軽い噺。客席もあったまってくる。

世津子・奇術。
親しみやすい、スナックの陽気なオネエサンが隠し芸みたいにやって見せる。
満席の客はマニアが多いから舞台とのやり取りも良い間(ま)でますます盛り上がって来た。
と思いきやネタバレと言うかサゲを喋っちゃうバカがいた。
安倍だよ!赤城だぜ!
退場だっての!
でも世津子姉さんホッカリたしなめて被害を最少にとどめたのはサスガぁ。

志ん橋「出来心」
落語に出てくる泥棒は「スイマセン。これからは心を入れ替えて真面目に泥棒稼業に励みますから」などと親分に頭を下げて空き巣のノウハウを教わるが根が才能がないっていうかー失敗だらけ。
いかにも古典の泥棒噺の典型を切れ味よく演じた。
時間の関係か最後まではやらなかったが今日は誰も気にしない。
早く小三治聴きたい一心。バカのせいで冷えた空気を再加熱に成功。

はん治「脊なで老いてる唐獅子牡丹」
ムシヨ暮らしが長いばっかりに酒も飲まず適度の運動とバランスの取れた食事のお陰で妙に健康になっちゃって90歳まで生きたヤクザの親分がシマを荒らされて老人ホームにいる殺し屋と敵の親分(88歳)の”たま”を取りに行こうって噺。
新作、前に一度聴いたことのある噺だがペーソスもあり大笑いだ。

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ロケット団・若い二人が活きのいい漫才で目先を変えてくれる。
この漫才だけを聴いたら白けるようなものでも寄席の組合わせの中ではもてている。

喜多八
ふて腐れたような態度で出てきて、貨幣価値の違う村で大金持ちになる夢の噺。
題が分からない。
彼のあやつる方言が一体どこの訛りか、妙に切れ味のいい東北弁?なのだ。
あとで調べて分かったのは彼は東京育ち、ときどき秋田の人かと思わせるような発音は耳がいい東京人なるが故なんだね。

小里ん「棒ダラ」
御免!先を急ぐ。

扇橋「脛かじり」・仲取り
殆どマクラ無しで話す。
この人はたとえば今日の噺は面白くもなし、話し方もどうってこたあないときでも好きな人には、そのこと自体が嬉しい。
言ってみれば大好きな爺ちゃんが縁側かコタツでボソボソしゃべってくれるような心持ちにしてくれる。
初めて聴いた噺だった。

福治「町内の若い衆」
元気よく食い付きの職務を果たす。
食い付きとは仲入り後の最初の高座。
やや疲れた客がトイレに行ったり何かを食べたりしてザワザワしている寄席の空気をもう一度まとめて加熱するという結構難しい役どころ。
仲トリとトリの間にあって目立ってもいけないけれど実力がないと場が凹んでしまう。

一朝「紙屑屋」
道楽息子が居候をして何かちゃんとしなきゃってんで紙屑屋になるがついつい夢見がちになってゴミを仕分けしながら義太夫を謡いだしたりゴミの中にある手紙を読んで手元がおろそかになったりという勘当された若旦那の後日談のひとつをメリハリつけて演じる。

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二楽・紙きり
よかった。「巣立ったコウノトリ」という題を出されて結構苦心していた。

さていよいよ小三治、ふらっと登場、ナニをしゃべるかと固唾を呑んで静まり返る聴衆。
「これといって喋ることはないんだ」。
洒落かと思ったら本当にネタが決まらないみたいだ。
「湯屋番」をやる積りでいたら一朝が「紙屑屋」をやってしまった。
勘当された若旦那が仕事につこうとしてうまくいかない噺としては同じパターンだからかぶってしまう。
「何かご希望はありませんか」
「転宅」
・・「ひとつだけ?それはやりにくいな。それをやらなくちゃならなくなるから」
「味噌蔵」「何とかかんとか」声が上がる。「味噌蔵」の声が強い。
「聞かなきゃよかったなあ。今は暑い夏ですよ」
要するに「味噌蔵」という噺は冬の、火事の噺なのだ。
一呼吸置いて「じゃあ、転宅を頂きましょう」。

そんなやりとりの前に「辞書のアクセントってなくなったのでしょうか」という問いかけがあってみんな「ん?」。
昔は国語辞典には言葉ごとに標準的なアクセントが表示してあったのにいつのまにかそれがなくなった。
大阪弁が大手を振って進出してからアクセントのことが決めがたくなったのかも知れないが、やはり日本語の標準アクセントは教えて欲しい。
自分の姪が筑波大学の国語を学んでいながら「ら抜き敬語」を平気で使うのは許せないともいう。

まあ、そんなこんなで「転宅」が悪くはなくうっとりさせられたのは事実だが、俺の期待はもう少し大きかったんだね。
50分近い熱演?の小三治には申し訳ないのかどうか、今日の出来で満足したら小三治にかえって申し訳ないような気がしたんだ。

というわけで今日また池袋に行って小三治を聴いてきた。
そのことは又あした。
Commented by ume at 2007-08-05 06:53 x
東京で初めて生活した頃、言葉を標準語に変えることはさほど難しくなかったのですが、アクセントのクセはなかなか直らなかった。我がふるさとが舞台のドラマを観ていて違和感を覚えることがありますが、方言は巧妙に真似ていてもアクセント、イントネーションまで完璧に真似ることは難しいようです。
Commented by saheizi-inokori at 2007-08-05 09:19
umeさん、箸と橋、端などのアクセント。富山生まれ関西系の母は飴が降ってきたようなアクセントでした。
お国訛りって大好きですが、標準的なアクセントも知りたいですね、たしかに。
Commented by tona at 2007-08-05 09:45 x
まだ1回しか行ってないですが、自分も坐って聞いているようです。
紙切り「巣立ったコウノトリ」は凄い。見てみたかった。
東大落語会編「増補落語事典」は古いものですか・
Commented by saheizi-inokori at 2007-08-05 10:36
tonaさん、昨日演芸場で後ろに座っていた女性がなんだかtonaさんかなあ、なんて何の根拠もなく思っていました。
この本は古本屋で買いました。昭和48年刊です。1260篇の落語の梗概が載っています。問題は題名が分からない噺を内容から検索できないこと。勘で探さなければ。でもそれが楽しい。
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by saheizi-inokori | 2007-08-04 22:38 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori