覚えていたかったおばあちゃんの与太話

祖母は私に漁師の漂流奇談をして聞かせた事がある。「ところがお前、島に這ひ上がったのはええが、云ふ事が解らんのぢゃ。異人の島ぢゃから、出て来る異人がみんな赤い髪をしとってからに、何を云ふても通じりゃせん。それでこっちも困ってしまうて、指二本だした。ええか、かう云ふ風にして見せたら、さうしたらお前、やうよの事で、指が二本ぢゃから、日本人ぢゃ云ふ事だけは通じたさうな」
昨日の記事に書いた百閒随筆の一節だ。
百閒はおばあちゃん子でなかなか傑作なおばあちゃんの話が他にも出て来る。

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俺はおばあちゃんとは離れて暮らしていたからおばあちゃん子ではない。
面白がり屋で、粋ということが分かるようなおばあちゃんだから愉快な話もたくさん知っていたろうに、俺にも話してくれたかもしれないのに、
口惜しいことに一つも思い出せない。



残るいのち短く思へば来し方の吾が行ひに悔ひる事多し

この市の最高齢は百歳なりさぞ退屈のあけくれと思ふ
(80歳の時の歌)

一の扉いの席に居て大かぶき花道の所作乗り出して見る

幼き頃の書きしを見て行けばよくぞ育ちし今ぞと思ふ

姪の庭の黄菊白菊折りながらどこかへ忘れ帰り来にけり

(写真は平成館で仏教展をみて表に出たとき目の前にある黄昏時の表慶館、実際の空の色と違って携帯で撮った色の方が明るくきれいだ。西洋美術館でみたルネ・マグリットの「光の帝国」の空の色に似ている)
Commented by 散歩好き at 2006-11-15 07:56 x
小生は屁理屈を言いながら老境に入り未だいらだつ事が多いですが2代3代前苦楽を運命と受け入れ信念を持って楽しんでいたようです。情報が多すぎない方がよいのかも知れません。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-15 08:22
散歩好きさん、そうですね。ホンのちょっとしたことに感謝の気持ちをもって”足るを知る”生き方の人が多かったようです。
Commented by tenjin95 at 2006-11-15 09:52 x
> 管理人様

拙僧は、幼少の頃祖父母に育てられました。農家出身だった祖母が、やたらと米を大事にしていたのを憶えているのですが、そこで拙僧達に聞かせていた話の一つに、「米を一粒残すと眼がつぶれる」というものでした。現在だと、差別云々で問題になるのでしょうけれども、これを繰り返し繰り返し教えられたため、ご飯を残さないという習慣になりました。

結果的に、その後修行道場に修行に行った際にも、ご飯の食べ方は身についており、良く先輩から、「和尚のご飯の食べ方はいつも綺麗だな」と褒められていました。その度に、祖母を思い出している拙僧です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-11-15 11:13
tenjin95 さん、それどころか今は「ご飯は全部食べずに残しなさい」ということをダイエットのために教えているのです。
本当に目でも何でもつぶれたらいい!と言いたくもなります。
飯粒を残さないで食べると美人に見えるよ、とでも云わないといけないのかも知れません。
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by saheizi-inokori | 2006-11-14 23:31 | わが母と祖母の遺したまいしうた | Trackback | Comments(4)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori