ヘンタイに美あり ヘンタイに哀しみあり 許光俊「世界最高の日本文学」(光文社新書)
2006年 10月 18日
トルストイの「戦争と平和」、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」、、
日本では芥川に鷗外に漱石に潤一郎、、。
”教養として読まなければならない本”がたくさんあって
真剣に”何かを学ぼうとして”読んでいた。
社会人になってミステリとか、”中間小説”(今はそういう言葉はないのか)なども大いに読むようになった。
全集には載りそうもない作家や作品も読む(全集ブームそのものも去ったが)。
経済的・精神的に余裕(?)もできて”好み”で楽しみながら本を読むようになった。
肩の力が抜けたのだ。
その結果と言うべきか、古い人については全集に載らないような人とか作品を読まないままになっている。
鮨屋でトロばっかり食っていたようなものだ。白身やヒカリモノ、旬の貝の旨さを知らない野暮天だった。
この新書はいわば鮨屋の真髄を楽しめる12編を紹介している。
「こんなにすごい小説があった」が副題。
解説書や研究書とは違って面白さ本位、”おいしいところ”を集めた。
いわば”日本文学グルメへの道”。
著者の若干品を欠く言葉を借りれば「お客さん、いい子いますよ」、と声をかけるキャバクラの呼び込みだって。
潤一郎「少年」、康成「眠れる美女」、乱歩「芋虫」をはじめ取り上げている作品の多くが多かれ少なかれヘンタイっぽい。
日本文学にはヘンタイ性が際立つと著者はいう。
”世界中に数え切れない小説家がいるが、こと人生の切なさを岡本かの子ほど美しく表現できた人は稀である”というかの子だけ「鮨」と「老妓抄」の2作が取り上げられる。
鷗外は「牛鍋」と言う、すき焼きをむしゃむしゃ食う男、食わずに見つめる女、食いたくても食えなくてそれでも何とか食う女の連れ娘、の陰惨なすき焼き光景を描いた小説、映画にもなった鏡花の「外科医」、これぞ完璧至純の愛?そうともいうがグロともいうだろう。
「女に飢えてる」と言うことをたった4行の間に4度も言う日本文史上最悪な主人公が登場する武者小路実篤の「お目出たきひと」、
セックスと切腹を”立派過ぎる”男女の行いとして書いたこれは童話だ、童話として読むべきだという「憂国」・三島由紀夫。
世界最高のウヂウヂ文学、マゾでもありますなあ嘉村磯多・「業苦」。
ここまで来たら全部書こう。
ずっと前殺した友へと言うような短歌(「猟奇歌」)をつくる
根気よく年賀状を出す
愚かなる吾
よそのヲジサンが
汽車に轢かれて死んでたよ
帰ってこないお父さんかと思ったよ
夢野久作の「少女地獄」、そして虐殺された小林多喜二「党生活者」。
以上12編、さあ、御用とお急ぎのない人は・・それにしては店内は豪華絢爛だ。入るんなら覚悟を決めてじっくりと遊んでこなきゃなんねえよ。
読み残してきたにはそれなりの訳もあったのだが、サテそれは大丈夫なのか?
順番待ちの列を乱すってかい?どう乱すってんだい、うまく行ったらお慰み。
写真の花は「殿ヶ谷戸庭園」・「アキチョウジ」
私も少女地獄や芋虫はフツーに学校の図書室で借りて読みまして、男女の営みや猟奇的な描写に対する規制は、活字の世界では甘いなぁっってその頃から思ってました。
アキチョウジ初めてです。この庭園、何時行っても2,3珍しいのがあります。
著者は岡本かの子をずいぶん高く評価しています。
『眠れる美女』!絶対ヘンだよ、気持ち悪いよ。
ということで、思いっきり衝撃を受けた作品が2つも入ってる~(>_<)
恐いもの見たさで、ちょっと気になる本だなぁ。
『眠れる美女』で思い出したけど、小川洋子の『ミーナの行進』に、『眠れる美女』をと~っても美しく解釈してる女の子が出てきます。
曲解もここまでいけばすばらしい♪の世界でした。
いや、私のほうが曲解だったのかもしれないけどね(^^;)
で?そらさんはこういうの読んだってこと?それは知らずに?怖いもの見たさで?
乱歩と川端はだまされたぁ~!って思いましたともさ♪
それまで、乱歩って言えば『怪人二十面相』だし、
川端康成と言えば『伊豆の踊子』だったんだもの。
だけど谷崎は、恐いもの見たさで読みました。
何でも興味のあるお年頃だったのねぇ。
ひょえ~~~、オトナの世界は恐いよぉと思ったのでしたマル