とんだ博多の「穴どろ」 福岡中央魚市場のオソマツ (福岡紀行 ③)
2006年 10月 07日
翌日の午前中の会議を”早引け”して駆けつける。
ああ、魚市場、今はセリもとっくに終えて静かな市場になっているがそれでもあの活力に満ちた市場の空気の残り香が。
5年も前に若い社員たち20人ほどと築地のセリを見に行ったことを思い出す。多くの社員は近くのホテルに前夜泊までしたんだぜ。
新しいビル・”会館”の中にありましたよ。何軒かの24時間営業の店。
「海鮮」に入る。「定食は11時から、刺身定食なら出来るよ」
じゃ、それだ。
鯛の噛み応え!九州で暮らしたら東京の魚って食えないよ、多くの九州勤務の連中が言ったセリフの真実は高級な店ではなくこうして食べる魚に表れる。
美味しく食べて満足してさっさと帰ればよかった。
岸壁が見たかったのだ。ビルの中からは見えんかったし。
これじゃあ昔八戸に行って列車の待ち時間にアホウドリを見にタクシー飛ばしながら時間がなくなって海も見えない高い岸壁のところでUターンしたのと同じだ。
ビルを出ると海側に工事用かとも思われるような階段通路がある。
おいでおいで、といっている。
アチコチ歩いているうちに大きな長い「西卸売り棟」という建物の二階通路に入り込んだ。
300メートルはあろうか、右側の窓から見える海、10メートルもあるか下に続くセリの場所。
食後のいい運動とばかりに楽しんで歩く。
突き当りには「関係者以外は立ち入り禁止」とある。
もう一度戻るのは面倒、ノブを廻すと静かに開いてビルの外づけの階段にでる。
降りる。フエンスの間に又もや「関係者・・」のドア。
ノブを廻す。出られた。
ナントそこは岸壁の端っこ、目の前に見える道路に出るところがない。忍び返しのついた背の高いフエンスばかり。
ヤレヤレ、又戻るのかとドアをあけようとするとウントモスンとも。
ホテルのドアと同じ、出るのは自由、入るのにはキーがないと、という奴だ!
下の写真は左が俺が出たところ。右には木の台枠が高く積み上げてある。
右の写真は後で自由の身になってから外から撮ったその場所。
右に見える階段を下りてきて正面に見えるドアから向こう側、すなわち左の写真の場所に閉じ込められたのだ。
網の目フエンスを隔てて車や人が行き来する。
大声をあげて助けを求める?冗談じゃない!俺の威厳てえものが。
フエンスを乗り越える?革靴だし結構背が高い。荷物や靴を向こう側に放り投げておいて?
それで向こうにいけなかったらどうするよ?今日は大きな札入れもっているからポケットにも入らないし。
大体手が滑ってひっくり返ったら海にドボンということも。
ああ、危うし、正義の味方・梟仮面!
紙芝居なら「この続きは又明日」で済むが、これはリアルに俺の身に今現在降りかかったことなんだ。何とかしなければ。
ここで、落語「穴どろ」だ。
年の瀬、借金が払えず米の飯も食えない男。
かみさんに「三両何とかして来い。三両出来ないうちはうちに入れないよ。お前みたいな男は豆腐の角に頭をぶつけて死んじまえ!」。
とぼとぼと歩いていると大きなお店の裏木戸があいている。
無用心だから注意してやろうと入り込む(このあたり正蔵は明確な泥棒をするつもりで二階から忍び込む演出。文楽、小さんは濃淡はあるがついつい入り込むという形。)。
縁側から上がってみると座敷にはさっきまで宴会をしていたらしくご馳走が食べ残してある。
酒の飲み残しを茶碗で一杯、八つ頭の煮物(正蔵)、刺身(文楽、小さん)を「コリャうめーや」なんてやってるとこの家の坊やがハイハイしてくる。
根が子供好き、すきっ腹にグーっとやって気が大きくなっているもんだから
「かーいいなあ、手のなるほうへ」なんてあやしていて穴に落ちた。
火事のときに家財を投げ込むための水を張った穴だ。
「なんだああ?謀りやがったなあ。まだナンにも盗んじゃいねーぞ!」
聞きつけてアルジが来る。
「今日は坊の誕生日、縄付きは出したくないから引揚げて逃がしてやろう」
ということで鳶頭を呼びにやるがあいにく不在で代理の者としてきたのが「横浜の平さん」という。
肩で風切る割りに頼りない。
穴の男とやりとり
男「下りてきて見やがれ、柔らかいふくらはぎにぱくりと噛み付くぞ」
平「あんなこといってますよ」
旦那「しょうがないなあ、うまくやったら一両やるから」賞金で釣ろうとする。
平「じゃあ、飛び降りて頭を蹴るぞ」
男「やってみろ、下からゲンコツでキンタマを突き上げるぞ」
平「うわっかなわん。痛そうだなあ」
旦那「二両出すから・・」
男「てめーなんざ両方の足首つかんでピィ~っと股を引き裂いてやる」
とうとう旦那は「三両出す」
穴の中から男が
「三両だすう?待ってくれ!三両なら自分で出て行く」。
「穴どろ」の間抜けの名は無い。「男」というだけだ。
俺には「佐平次」という落語界のスーパーヒーローの名前がある。
その俺さまが何たる!
どう始末をつけたかって?
「穴どろ」もソコンところはいわねえ。
俺も云わない。今こうして無事書いてるってことだ。
九州の醤油も美味しいのですが、やはり慣れ親しんだ関東の醤油とは比べられません。
ちなみに私の最近の武勇伝は、皇居で撮影中、職務質問を受けた事。
えっへん。
マジ一時は青くなりましたよ。
あの溜り醤油はなかなか慣れません。