ブリ大根が蘭堂漬けが 渋谷・「三漁洞」も健在だった

井伏つながりで「三漁洞」、渋谷駅前の居酒屋だ。
井伏の釣友が福田蘭堂、ヒャラーリヒャラリコ、だーれが吹くのか不思議な笛だ、の笛吹童子、分んない人には全くわかんない、わかる人にはヒツコイ!といわれるあのランドウさんが始めた店、彼の息子が石橋エータロー、もっと云えば明治の画家・青木繁の息子と孫の店。
今は奥様がやっているのかな。
昔、西郷山の近くに住んでいた頃、仕事の帰りが早くなったときなどわずかな酒を飲みに寄った店だ。
一年以上のご無沙汰だった。
急に来たくなって小雨の中をひとり飛び込んだ。

ブリ大根が蘭堂漬けが 渋谷・「三漁洞」も健在だった_e0016828_21235070.jpg着物に真っ白なエプロンの三人いる内一番若い子が愛想がよくてニコニコしている。
よぅみるとみんな愛想がいい。

メニューを見ると「焼きナスのゴマ風味 800円」がある。
三行目に又ある。
落語の富くじじゃないけど一字づつ較べても同じだ。
「これ、同じ?」
「アラ、いやだ、気がつかなかった!」
「上に書いてあるのと下のとどっちがうまいんだろう?」
「ソリャ、上です」
「じゃ、上ね。間違えないようにね。」
くっくっと笑いながら引っ込む。

よく冷えた焼きナスの上にゴマダレがかかって、さすがに上はうまかった。
次の注文でメニューをみたら下はなくなっている。

「石川小芋は今日からです」
「そう!じゃ俺が一番目の客かな?」
「いいえ、さっきこの席にいらした方が一番目です」
正直でよろしい。
塩で食う衣かつぎ、うみゃあな。
名古屋ではショウガ醤油で食うんだ。これも懐かしいけど、ここでそういうことは止めよう。

ブリ大根が蘭堂漬けが 渋谷・「三漁洞」も健在だった_e0016828_21283386.jpgあっちの席でおかみらしき人が説明している声が聞こえる。
「これは愛知のナントカノ銀杏で8月に取れる・・」
こちらに呼んで聞いてみる。
「ナントカって?」
「トークローです」
「唐九郎?」
板場で聞いてきて
「藤九郎です」
きいろくなる前、翡翠銀杏というそうだ。
銀杏を焼く香ばしい匂いが店に漂う。
ひとりなのになんでこんなに楊枝をつけてくるんだろう。

おじさんたちの笑い声も弾ける。
15人ほどの内タバコを吸っている人が2人しかいない。

隣りのオヤジ二人は「シャチョウ」の「シャ」にアクセントの関西の人と関東の人
人事の話とかしていたがどうやら関西訛りの人が関東人の会社にトレードして欲しい
そういう下心をお互いに承知の助で、遠まわしにいろいろ話しているのがじれったい。

ブリ大根が蘭堂漬けが 渋谷・「三漁洞」も健在だった_e0016828_21573632.jpg頼んでから気がついたら全てのテーブルがオーダーしていたブリ大根
お好みでという一味がからりとしたいい味だ

菊水の燗を三合、喉の渇きを生ビールで癒して
ああ、いい気持ち。
帰るさ、かなりの雨、おかみが「駅で捨ててください」といって傘を貸してくれた。
Tracked from 墓の中からコンニチワ at 2006-10-03 11:24
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Commented by みい at 2006-10-02 22:23 x
ぶり大根、美味しそう~  大根の色がいいですね~
ああ、食べたいなあ。焼きなすのゴマ風味、大好きです(笑
やっぱり私は食欲の秋です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-02 22:29
みいさん、こんばんは、ちょっとしょっぱいデッカイ大根、酒の肴に最高ですね。ここはブリは出汁をとる程度、大根に重きがあるようです。
白いご飯もいいのでしょうが今日はご飯の汁でした。
ナスは毎日でも食べたいトキですね。
Commented by きとら at 2006-10-02 23:28 x
 懐かしいなぁ。
 
 笛吹童子、紅孔雀、三日月童子、霧の小次郎。
 
 場末の、土間のままの、木のベンチの映画館。
 
 夕暮れ時に真空管式ラジオから流れる、ヒャラ~リ ヒャラリコ。
 
 板の間の、60ワットの下のちゃぶ台。
 
 釜で炊いた焦げの多いご飯、七輪で焼く鰯の一夜干しに味噌汁。
 
 同じ場所に住んでいますが、時間だけではなく、はるか遠い空間の出来事のように思えます。
Commented by ふく at 2006-10-02 23:34 x
ワーッ、なつかしいです。あの時間のラヂオは、一所懸命に、
子供に娯楽を与えようとしていたような。
だから、大人も聞くのを許してくれたような。
テーマソングも何もかも、一所懸命でした。

今は、ただの娯楽?
コナン君もドラちゃんもシンちゃんも、まあね、いいけどね。
時代が違うといえば違うのか。
マスメディアの一所懸命さがほしいです。
Commented by molamola-manbow at 2006-10-03 01:08
こりゃあ行かざるを得ませんね。
話の経緯からして小滝橋のご隠居にも声を掛け、勘定こっち持ちで行かざあなるめ~状態に陥りました。
ウ~ン、参った参った。
『魚』から『漁』に変えたのかな?それとも私の記憶違い・・・・・?

Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 08:25
きとらさん、吉田ナントカって悪役覚えてますか?ワンパターンの悪役。昔は”いい”悪役”がいたと思います。
今はいい人の顔をした悪役がはびこっている。
Commented by tona at 2006-10-03 08:26 x
笛吹童子・紅孔雀、私も懐かしい!!
貧しい夕餉の時間帯だったと思いますが、唯一の娯楽であって絶対に忘れられません。
とここで上を見ましたら、きとらさんが情景を書いておられました。
そのずっとあとテレビの最初が月光仮面でした。
お酒が本当に美味しい小料理ですね。和食の傑作の1つぶり大根だけはいつも美味しく作りたい。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 08:27
ふくさん、餓えたようにラヂオを聴きました。
映画になるのも楽しみでした。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 08:29
manbowさん、ひょっとしてひょっとするかと入り口に注意してました。まあ、顔みて分るかどうか?
いい店ですね。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 08:32
tonaさん、漬物や煮物と同じでぶり大根も家庭の数だけ味が違いますね。そういう料理こそスローフード、手作り料理のあり難さ、お袋の味です。
過当競争の飲食業界はおふくろの味を制する店が生き残ります。
Commented by gakis-room at 2006-10-03 10:15
>吉田ナントカって悪役覚えてますか?
確か,吉田義夫だったと思います。悪役と言うよりも敵役で,大物の敵役は水戸黄門以前の月形竜之介,小物の敵役が吉田義夫などでした。東映時代劇には欠かせない1人でした。みなさん懐かしそう,私にも懐かしいセピア色の遠い時間。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 13:42
gakisさん、そうです。義夫、安心して観ていられる切られ役憎まれ役でしたね。
切られてもだえるときに映画館から拍手が沸いたことも覚えています。切ったのは中村錦之介、東千代之介。
Commented by Count_Basie_Band at 2006-10-03 16:33
>今は奥様がやっているのかな。

そうです。
こちらが捻ったつもりの冗談を言うと更に捻った返事が返ってきます。
先日悪友共と行ったとき、悪友の一人が「こないだ羽田へ潮干狩りに行ってアサリを獲ってきたけど油臭くて食えなかった」というので皆でコケにして笑っていたら、女将さん、ニコリともせず「はい、羽田のアサリです」!
本当は浜名湖産のはず。

そんな店です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 16:44
Count_Basie_Bandさん、どうも只者じゃない〈美人だし)と思いました。ちょっと足が悪いような?
又行きたくなりました。
Commented by 散歩好き at 2006-10-03 22:14 x
銀座美松に桜井センリが入る前のクレージーキャッツを見に聞きに行った。アルミの洗面器で頭を叩いたり蝿叩きでスティク変わりにドラムを叩き挙句の果てには蝿を追うしぐさ、後は「大人の漫画」は「笛吹き童子」と同じ世代。クレイジーのピアノは石橋エイタローだった。
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-03 23:19
散歩好きさん、いい思い出ですね。羨ましい。
Commented by 髭彦 at 2006-10-04 00:07 x
ラジオからヒャラーリヒャラリコ笛の音が流れて身体(からだ)虚空に舞ひし(050324)


Commented by saheizi-inokori at 2006-10-04 07:58
髭彦 さん、アア、そんな歌を。
共通の思い出があるということの幸せですね。
Commented by きとら at 2006-10-04 09:36 x
 「笛吹童子」の次は「少年探偵団」
 
 いつまでも 心は少年 探偵団
 
 我々はセンチメンタル世代かもしれません。
 
 我々のあとの世代は我々のような情緒纏綿たる郷愁を持つのだろうか?
Commented by saheizi-inokori at 2006-10-04 09:50
きとらさん、中学の運動会で私は「紫組」、少年探偵団の替え歌の応援歌を作ってみんなに歌ってもらいました。
「ボ、ボ、ボクラハ紫応援団!」
空はあくまでも青く私たちの歌声を吸い込んでいきましたよ。
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by saheizi-inokori | 2006-10-02 22:05 | 気になる店・ひと皿 | Trackback(3) | Comments(20)

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