ジャングル娘! ザビーネ・キューグラー「ジャングルの子 幻のファユ族と育った日々」(早川書房)
2006年 07月 30日
1978年”発見”されたファユ族の言語研究などが目的だ。
人肉の習慣もあるという殆ど絶滅に近い種族は笑うことを忘れていた。
同種でありながら異なる支族との復讐の掟にガンジガラメになった憎しみ合い・殺し合い。
子供であってもいつ殺されるか分からない緊張の中で、かつ過酷な自然の中で生き残ることのみが人々のすべてだった。新生児の死亡率70パーセント、大人たちの平均年齢は30歳から35歳だった。
しかし、ザビーネとその姉・弟は明るくジャングルに飛び込んでいく。
怖がって近づかなかったファユ族の子供たちと次第に兄弟のようになる。
遊ぶ、ということを知らなかった子供たちと語らいふざけあい鬼ごっこをする。
裸足でターザンごっこをし、芋虫は大好物、ワニや蛇はご馳走だが油断すると危ない。
読んでいるこちらもワクワクドキドキ。驚きの連続だ。
盗む・復讐する・殺される。ファユ族の中にもこの悪循環を断ち切りたいと考える者はいた。
一家の行動が彼らを変えていく。
許し・愛することを知っていく。
戦争が目前で勃発しかかる。マラリアなどの病気に何度もかかる。イノシシに襲われる。
幾たびもの危機を子供たちは両親・やがてはファユ族の助けをえて乗り越えていく。
詩篇に表されている神の助けを信じて、勇敢になすべきことを成し遂げていく父、絶対の信頼と愛情でそれを支えるウイット・ユーモアにとんだ肝っ玉カアサン。
生死を分かつ危機も過ぎてみれば繰り返される冗談の種。
ママが留守の時パパは淋しくてしょうがない。
突然、外から奇妙なうなり声が聞こえてきた。何事かと見てみると、そこにはパパがたった一人で家の前に立ち、歌を歌っていたのだった。古くからの三つの音、ファユ族の言語で歌う悲しみの歌だった。鼻に骨を刺している、少し前までは食人の風習があった人たちのことだよ。
「オオオオ、ドリソ(ママの名前)、どこにいるんダ。オオオオ、ドリソ、僕はたった一人だ、(略)」こんな風に、パパはジャングルに向かって歌った。
わたしはほとんど笑いを抑えることができなかった。パパはときどき、本当におもしろいことをする。二番が始まろうとしたとき、ファユ族の人たちが小屋から出てきた。彼らはパパのところに駈けよって抱きしめるとみんなで慰め、それからそろって新しい悲しみの歌を歌いだした。
「オオオオ、ドリソ、早く来い、オオオオ、ドリソ、夫がお前を必要としている・・(略)」歌声は夜にこだました。絶対に忘れられない、美しい響きだった。
ザビーネはヨーロッパに帰らなければならない。ジャングルで育っても白人でブロンドで・・。
スイスのお嬢様学校で馴らし運転をする。愉快なエピソードの進行。
またわたしは一つ、理解できないことを学んだ。次に通行人とすれ違うときは、唇をしっかりと結んで何も言わなかった。しかし何か良心のとがめを感じ、自分が無礼で野蛮な人間のように思われた。ジャングルで誰かに会ったときは、互いに挨拶をかわすか、さもなければ殺し合う。それは彼女にとっては深刻なカルチャーショック・アイデンテイテイの危機だ。
彼女は悩み、実際に不幸にも遭遇し、自死の瀬戸際まで追い詰められる。
本の中では短い部分であるが「人間の本当の幸せ」とか「安全とはどういう状態をいうのか」とか思い当たることが述べられる。
彼女は自分のジャングル体験を家族の協力を得てまとめる。
そのことでもう一度自信を取り戻し”幸福を求めて闘いはじめたー常に、自分の人生を正しい方向に導くための決断を意識的にしていく、という目標を目の前に据えながら。”
この本がそれだ。
ジャングルはわたしに、日々の暮らしの何気ないできごとを喜ぶように言う。人生は消費によってではなく、行動によって決められていくことを理解するようにと。それから幸福は、自分が何を持っているかにあるのではなく、自分が持っているものに満足できる力のうちにあるのだと。これも又夏休みオススメの一冊だ。
写真が豊富で楽しく興味深い。
(訳・松永美穂・河野桃子)
繊細な感情を眼に宿した美しいドイツ人女性・ザビーネ・キュークラー(34)の『ジャングルの子』(早川書房)を読んだ。 世界で二番目に大きな島、ニューギニアのインドネシア領西パプア(イリアンジャヤ)で、1978年に発見された新しい部族『ファユ族』。 彼らの言語を研究するために密林に分け入った両親にくっついて、五歳のザビーネも二つ違いの姉と弟とともに奥地へと入って行く。 『ジャングルの子』は石器時代同様の生活を続ける『ファユ族』と過ごしたザビーネの十二年間をつづった半生記である。 「こいつは是非読まね...... more
で、全然違うお話なんだけど。。。聞いて聞いて!!!
あのね、梟さんが園長先生をご紹介くださったでしょ?で、遊びに行ったのよ。そしたら、私のとこにもよく遊びに来てくれている一陽ちゃんがそこにいたの!!!どうやら一人息子のポチ君は、面識もあるらしい!!!
彼女と息子さんは、宝塚関係でお知り合いになったのでは…と思うんだけど、もうびっくりびっくりびっくり!!!人のつながりの不思議を感じたのでしたo(^▽^)o
ジャングルの生活からすると今の自分のおかれた立場が1000倍以上も幸せに感じましたが、文明の国に戻ると、こういう体験をした人は必ずしも天国でないことがわかりました。「狼に育てられた子」を何となく思い出してしまいました。