お世話になったよ、上がり症の友 「四季の味」夏号

前にも(2月20日)書いたが俺は若い頃「上がり症」で、かなり深刻だった。会議や接客はもとより団体交渉とかセレモニーの仕切りとかいろいろ大勢の人前で話をするのが仕事の大事な部分だったから上がってしまうことには悩みましたね。宴席で「乾杯」の手が震えて杯がこぼれてしまう。気にするとだんだんひどくなる。モーニングコーヒーを飲みながらの部長ミーテイングが怖い。コーヒーカップを持ち上げられない。今思うと笑っちゃうくらいだが当時は自殺すらちらっと考えた。責任が果たせないと思った。

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余計な自尊心が邪魔をしているからだ。自分を徹底的に汚してどん底に沈めてしまえ!といったところで深酒をするくらいで、たいしたことはできないし、そんなことで”治る”わけも無かった。

学生時代の友人に偶然あって「森田療法」を教えてもらったことが救いだった。要するに「震えようが、どもろうが、眼がクラクラしようが、、それは君が完璧に成し遂げようとしている証拠だから、ちっとも気にしないでいい。むしろ美質と考えろ。治そうとしたって治らない。それよりもより完璧に成し遂げる努力をする方にエネルギーを使え。」ということ。

「震えもドモリもトチリも自分が気にしているほど周りの人は気にしていない。」とも。
ほっとしたね。

休みが取れるとそれまでは不安を紛らわす為に外に出てフラフラしていたのを料理や部屋の掃除をすることにした。家庭が明るくなった。
そのときの先生がこの「四季の味」「暮しの手帖」(同社から出ているいろんな単行本も)「檀流クッキング」(名著だ!)など。

「四季の味」では一皿の料理のアイデアがたくさん投稿されていて、それを見ながら料理を作った。平野レミさんも常連だった。最初は書いてあるとおりの材料や調味料を揃えないと気がすまなかったけれど、次第に何も考えないでマーケットに行って並んでいるものを適当に買いながら一家5人の”かなりな”休日の食卓を演出できるようになった。今だったら、メインはカツオのタタキ、筍と若布を炊いて、冷奴は欠かせない。薬味を山のように用意、ちょっとさびしいから酢の物はキュウリかな、もひとつ油揚げを軽く焼け目をつけて山芋の千切りと一緒に、紫蘇の葉も乗っけるときれいだぞ、もみ海苔も忘れないように。子供たちには肉と野菜の炒め物、それにサラダは定番、みたいに(まあ、あまり手の込んだ料理ではないね、でも本格的なフレンチとかもやったんだよ)。ほとんど材料を余らせなかったし、料理を終わった瞬間には台所はキレイになっている、という模範的なゴキブリ亭主だったね。

そうして「上がり症」のことはあまり気にならなくなった。決して治ったわけじゃないけれど。

久しぶりに「夏」号を買いました。知人が薬膳中華のメニューを6ページも書いている(詳しくはこの記事にTBしてくれた 「薬膳調理師の美味しい毎日」)。当該記事もなかなか素晴らしかったがカツオの料理法とかインド料理など楽しい記事が多く、随筆も結構読ませる。当時と比べて遜色が無い美しい・楽しい雑誌になっていたのは嬉しいことだ。
俺の料理はすっかりだめになったけれど。
Tracked from 薬膳調理師の美味しい毎日 at 2006-06-14 00:06
タイトル : 四季の味 [夏]
6月7日に発売した「四季の味 夏」に僕が勝手にお師匠様と拝んでいる、とっても厳し〜い料理研究家の「小山恵子」先生が沢山の料理を載せています。この小山先生、僕達の若手中華料理人仲間を「ツバメ軍団」と呼んで、相当こき使ってかわいがってくれています。テーマは...... more
Commented by YABU at 2006-06-14 00:14 x
saheiji-inokoriさんが「上がり症」だったとは。
今のsaheiji-inokoriさんしか知らない僕には想像もできません。
それに、料理にお詳しいのは本格的な料理をご家庭でなさっていたからなんですね。
「四季の味」、僕は今回初めて買いました。歴史がある料理雑誌のようで、いろいろと勉強になりました。
もちろん「あの方」の料理も大変参考になりました。
Commented by ANOKATA at 2006-06-14 01:31 x
「四季の味」取り上げて頂き有難うございました。
つたない私の料理はともかくとして、そのインド料理の先生も、中村屋での食事会にいらっさいますよ。編集長曰くとっても良い方だそうです。

先日、古い知人の和食の料理長がお店をオープンされたの顔を出してきました。で、「四季の味」をお持ちしたところ・・・・・若い時分の憧れの雑誌だったそうで、自分の料理を載せてほしくって写真に撮って送ったそうです。でも、、なんの音沙汰もなかったそうで、遠い思い出だそうです。
私も、学生時代の愛読書、憧れでした。
初代編集長・森須次郎さんの独特の食に関する、感性と文章が好きでした。今思うとませたと言うか、渋いガキですね。
その憧れの本に、特集を組んでいただき、著名な方々とご一緒に扱っていただけたなんて、感慨無量です。 夢はかなうものですね。
Commented by 夢八 at 2006-06-14 07:42 x
佐平次さんもそうですか。
僕も上がり症で、困った時代がありました。

人前で、さらさら話す人を見ると、うらやましくて仕方が無かったでしたね。
治ったきっかけ『正確には治ったと言うより、慣れた』は、27歳くらいに
講座を1年、どうしても引き受けざるを得なくなったことでした。

話す醍醐味を、自分で前もって作り上げると、一種上がり症の防御に
なることを発見しました。
それと、自分の中のものをいつも整理しておく事など、
上がり症の克服は、結構大変でしたけど、勉強せざるを得なくなりますから、自分には良かったかなと思いました。

僕も一時料理に打ち込んだ時期があり、四季の味、
愛読書でしたよ。
Commented by シーサイド at 2006-06-14 07:50 x
「四季の味」、昔は時々買っていました。今でも本棚にあるはず。。。
そう言えば、最近本屋さんでも見かけないような。(あるんだと思いますが)
最近、料理に熱が入らない。気持ちが落ち着いていないのです。
旬の材料で、工夫しておいしいものを作らなくちゃ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-14 10:36
yabu先生、これから改めて「四季の味」購読しようかな。みていて楽しいですね。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-14 10:39
ANOKATAさん、いらっしゃいませ。どうせ徹夜だったのでしょうね。私が好きだったのはモリスさんもですが神吉さんという人もしゃれたエッセイを書いてましたね。八巻編集長の狙いは当たりました。少なくとも購読者を今後に向かってひとりは増やしました。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-14 10:41
夢八さんもそうなのですか?マジメ人間同士ですなあ。最近あまりあがらなくなったのは不真面目になってきたからですかねえ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-14 10:43
シーサイドさんのブログはいつも垂涎ものですよ。今月の「四季の味」にゴーヤ料理の工夫が福岡在住の方から提案されていたのでついシーサイドさんかと思ってしまいました。福岡じゃないですね。でも料理のセンスがそう思わせてしまったのですよ。
Commented by もっちゃん at 2006-06-14 21:19 x
HNを夢作の土方から変更しました。
saheiziさんはじめ、皆さん料理に造詣の深い方ばかりですね。私は単身赴任が通算10年で料理もするのですが、時々発作的に手元にある食材や調味料を結果をあまり考えずに、いためたり煮たりしてしまうことがあります。ストレス解消には役立ちますが、優雅な味とは程遠い代物ができることが多いです。しかし食べられなかったことは少ないです。誰かの作ったレシピ通りに作るのもいいですがこういうのも面白いですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-14 22:50
もっちゃん、こんばんは。>食べられなかったことは少ない
正直でよろしい。食べられなかったこともあると白状しているんだから。どんな失敗があったのかな。発作的にどんな料理を作るのか面白いですね。
Commented by nao at 2006-06-15 00:58 x
母も「四季の味」購読してました。懐かしいです。佐平次さんお料理もやられるんですね?それから、上がり症とは、これ又2度ビックリです。10月から講座をやることになったのですが、私も複数の人の前だと緊張して何を話しているのか解らなくなるので心配です。カッコつけたがりなのや〜めた!
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-15 08:20
naoさん、おはよう。どれだけ上がるか自分の新記録作る位に上がってみようと震え方を増やそうとしたり・・案外上がらなくなっちゃうのが不思議です。どんなに上がっても殺されるわけじゃないし逆に上がっている人見ても嫌な感じしませんよね。むしろ好感を感じることさえ。講座はどこでやるのですか?
Commented by nao at 2006-06-15 13:59 x
佐平次さんおはようございます。そうですね、逆に自分がどんなに上がるのか楽しみにしてしまえば良いですね!画期的な発想です。ちょっと勇気が湧いてきました。講座は自由が丘で月2回ほど人形を教えます。よ〜っし!上がれ〜上がれ〜上がってしまえ〜
Commented by saheizi-inokori at 2006-06-15 15:51
naoさん、天まで昇れ~こいのぼり?シャボン玉?こわれて散っちゃあ困るね。頑張らないで頑張って!
Commented by oscar_pittarison at 2006-09-24 14:12
トラバ、ありがとうございました。私はピアノを弾きますが、人前で弾くのが苦手なんです。「ステージ・フライト」というやつ。足が震えてくるんだからどうにもしょうがない。だから「酒かっ喰らって」ってなことになる。今ではだいぶ落ち着いてきましたが。
Commented by saheizi-inokori at 2006-09-24 14:18
oscarさん、長男が子供の頃バイオリンの発表会、見ていたら足が細かく震えていました。ガキ大将だったんですがね。
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by saheizi-inokori | 2006-06-13 22:54 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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