懐かしい”人生の雑誌” 「暮しの手帖 11号12号20号47号」

ときどき寄る古本屋で懐かしい雑誌を見つけた。「暮しの手帖(古いものは“美しい暮しの手帖”)」のバックナンバーが山になっている。20冊近くいろんな年のを買った。一番古いのは11号、昭和26年2月発行、定価140円。全て500円で売っている。
懐かしい”人生の雑誌” 「暮しの手帖 11号12号20号47号」_e0016828_2242166.jpg極のつく貧乏暮しなのに、なぜか母はこの雑誌をよく買ってきた。だから中学から高校にかけて俺も繰り返し読んだ。いわば愛読書だった。いろんなことをこの雑誌から学んだ。

 半世紀以上も前に出版された雑誌、そこで取り上げられているのも半世紀前の日本人の暮しだ。表紙に始まり、レイアウト、コピー、写真、カット、など意外にというか当然というか(なんせその後のこの種雑誌の原点みたいなもんだから)見た目に古くないばかりか記事の内容も新しい感動を与える。何よりも今生きている喜びと明日への健やかな希望と確信に満ちている。

 11号を例にとると「部屋に草花の鉢を飾る」というグラビアはモノカラーなのにシクラメンのピンクが感じられるようだ。「春とコドモたちと」というグラビアは花森安治のデザインした可愛い子供服(別頁に裁ち方の図解つき)。
懐かしい”人生の雑誌” 「暮しの手帖 11号12号20号47号」_e0016828_225847.jpg「日本の花」という特集はカラーで春から夏にかけて身近に見られる花を64種、なんと画と文は牧野富太郎!モクレンについて「これの支那名は辛夷である。日本の学者は此辛夷をコブシだと思っている。それは大変な誤りであることを知っていなければ学者の資格はない、」ですって。
恐れ入谷の、だ。
坂口安吾、佐藤春夫、山本嘉次郎、、名も無き市民まで各界各層の書き手による随筆がズラーっと並んでいる。セレナーデ集(ドリゴなど8曲楽譜と詞)、戸板康二の歌舞伎解説、「大学の学資調べ」では家庭教師の報酬まで書いてある。

 12号のあとがきに
(雑誌を作りはじめて3年になるが)どの日もどの日も、お金やら紙やらの心配で明け暮れでした。・・(でも)出来るだけのこと、出来る以上のことをしてでも、この雑誌は作りつづけていくつもり・・やりたくないことでも、売るためにはしなければならない、そういった編集は、これまでも、この号でも、ただの一頁も一行も作らなかった、これからも、決して作ることはするまい、この大きな誇りが、きっと私たちを支えとおしてくれるにちがいないと、信じております。
まことにその言葉が、心が、今でも古びた頁を繰るたびに立ち上がってくるような雑誌だ。
懐かしい”人生の雑誌” 「暮しの手帖 11号12号20号47号」_e0016828_2271855.jpg20号・昭和28年 「子と仕事と暮らしと」というルポ。32歳のお母さん、11,9,6歳の三人の子供を夫が倒れてひとりで支える。日本で始めて女性として税理士試験に合格した。月収10万円経費を引くと手取り3万円くらいになるという。俺の母もこの頃親父が死んで俺たち兄弟を育てた。そう、到底1万円の手取りはなかったと思う。俺が新聞配達で500円くらいだった。もちろんひと月、毎朝5時起きして4キロ離れたところまで逓送してそこで100部ほど配ってだよ。小学生があの寒い中(自転車に乗っていくと髪の毛が凍ってしまう)よくやったよ。でも、惨めだなどと考えなかった。先に希望を持って楽しい毎日だった。母はこの記事を読んだろうか?読んだとしたらどんな想いで読んだのかなあ。
懐かしい”人生の雑誌” 「暮しの手帖 11号12号20号47号」_e0016828_228865.jpg
47号・昭和33年 まさに「三丁目の夕日」の頃だ。ナイロンについでテトロンが登場してきた。そこで暮らしの手帖名物・商品テストだ。「シワにならないか」「ズボン(パンツじゃないよ)の折り目は消えないか」「アイロンはいらないか」「センタクはらくか」「仕立ては入念か」についてテイジンと東レの宣伝文句は正しいかをテスト。結論は「テトロンはなかなかよいものだ」「生地は混紡がおすすめ」「染色には研究の余地あり」「売り方、特に広告にはウソやハッタリもある」。
Tracked from 花言葉事典:モクレン at 2006-03-29 23:29
タイトル : モクレンの花言葉
花言葉は「自然の愛」「持続性」。メルマガも発行しています。ご訪問ください。... more
Commented by フラミンゴ at 2006-03-08 15:01 x
こんにちわ。
おひさしぶりでっす、フラミンゴです。
今日は、とてもいい天気ですね!
4月上旬の陽気だそうです。
朝から始めたばかりのヨガに、行ってきました。
体のバランス、感覚を集中させるのがとても気持ちがいいものです。
早くヨガの先生のように、美しい心と体のバランスを、保ちたいと思います。

で、そんなぽかぽか陽気に誘われて、近くのインターネットカフェにきています。
この前は、お会いできなくて残念でした。
久しぶりに、ブログ見させていただきました。

すごい!!!
写真もきれいになってるし、いろいろ変わってる。
梟さんも、進化し続けているのですね・・・・・

では、また遠くないうちに、お会いしましょう・・・

あっ、そういえば、 「ミュンヘン」見ましたか?
私は、歴史に詳しくないので、あまり理解できない部分がいっぱいでした。(反省)
もっと、バックグラウンドを理解してから、見る映画でした。

ではでは。
Commented by hanabi_cyu at 2006-03-08 18:04
暮らしの手帳って名前は、聞いたことあります。
一冊の雑誌からなんでも知る事ができるなんて すごい雑誌があったんですね~
なんか・・・家の光っていうのは、保育園の頃に見た記憶があります。
ここは、田舎なので 三丁目の夕日を見たときに 自分の子供の頃に似てると思いました。
Commented by takibi-library at 2006-03-08 20:44
トラックバック、ありがとうございました。
「美しい暮しの手帖」というタイトル、いいですよね。美しい暮しは人に見せるためでも、お金の使い道でもなく、日々のささやかな工夫の積み重ねの結果だと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2006-03-08 23:17
フラミンゴさん、久しぶりにいらっしゃいませ。ミュンヘンは私はまだ見ていません。何となく重そうですね。とはいえ時間が合えば重いのも見ちゃうのですが。力道山、クラッシュ、シリアナ、最近見た映画みんな重かったです。ただでさえ重たい人生を送ってきたのだから映画くらい軽いのを見ればいいのですがね。又お会いする日を楽しみにしています。
Commented by saheizi-inokori at 2006-03-08 23:19
hanabi_cyuさん、ほんとにそういわれれば総合雑誌より欲張りな雑誌でした。今の暮らしの手帖はちょっと昔とは違うような気がします。欲張っていないからかなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2006-03-08 23:22
クヌギーさん、こんばんは。美しい自分てまさに人に見せるためじゃないですね。日々の積み重ね、そのとおりだと思います。
Commented by 園長 at 2006-03-10 21:06 x
忙しい母の本棚にもありましたね。
今思うと、あの頃は土曜日も仕事があって当たり前。
そんな忙しい中、家計簿もつけ、家事もこなし、
趣味もこなし、仕事もこなし、すごい母です。
今もじっとしていないので、かえって心配です。
Commented by saheizi-inokori at 2006-03-10 22:31
園長さん、私の母の時代は掃除機も洗濯機も冷蔵庫もお金もなし・・。
Commented by 園長 at 2006-03-11 21:44 x
そうですねぇ~、私の母の時代でやっと掃除機・洗濯機・冷蔵庫、
三種の神器と呼ばれたものがふきゅうしたころですね。
昔は洗濯機には脱水漕はなくて、横のローラーで絞ってた。
あっ!年がバレる・・・・、何しろテレビも色黒だしね。
Commented by 園長 at 2006-03-11 21:45 x
ごめんなさい・・・色黒テレビってなによぉ~!笑
白黒でした・・・・(^^ゞ
Commented by saheizi-inokori at 2006-03-12 22:20
園長さん、傑作!確かに調整がよくないと顔色が真っ黒になったりしましたね。
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by saheizi-inokori | 2006-03-07 22:41 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(11)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori