不吉なオリンピック 内田樹&白井聡「日本戦後史論」

「タケちゃん!」手を振ったらにっこり笑って振り返した、あの坊主、「お母さんがいなくなっちゃったあ~」と泣きながら家に助けを求めて来た上の階の子だ。
けさはスキップするように保育園に向かって、お母さんが後ろから「あら!おはようございます」と小腰をかがめて追いかけて行った。
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きのうも今日もよい天気、洗濯・掃除と家事手伝いに励む。
午後は義母のお見舞いにも行ってきた。
思ったよりも元気で、帰るときには「がんばってね」「がんばる頑張る」、手を振ってくれた。
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旅をし、文楽を観て、身体を動かして、夜は日光を吸ったマットと洗いたてのシーツの上で寝るとすこぶる気持ちがいい。
問題は本を読む時間が無くなることと、安倍政治の暴走が止まらないこと。
きのうは「共謀罪反対」の日比谷集会をネグってしまったこともチクチク。
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安倍政治というより戦後日本のありように鋭い批判をぶつける二人の対談は小気味よく、比喩が巧み(とくに内田)なこともあって、内容の深刻さにもかかわらず、居酒屋談義のようで面白く感じられる。
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最近の日本は「右傾化」したと言われるが、むしろ「シンガポール化」と呼びたいという内田
シンガポールは国是が「経済成長」ですから。統治システムも、教育も、メデイアも、すべての社会制度が「経済成長に資するか否か」を基準に適否の判断がなされる。わかりやすい国です。民主主義は経済成長にプラスにならないと判断されたので、建国以来一党独裁が続いています。国内治安法という法律があって、反政府的な人物は令状なしで逮捕拘禁することができる。労働組合は政府公認のものしかない。大学生は入学に際して「反政府的な意見を持っていない」ことを示す公的な証明書の提出を義務づけられている。反政府的なメデイアは存在しない。(略)
彼らは別に戦前の大日本帝国のような日本を作りたいんじゃない。シンガポールみたいにしたいだけなんです。金儲けだけに特化した社会の仕組みにしてほしいので、民主主義は邪魔なだけなんです。
内容よりも「改憲」の実績つくりを急ぐ安倍とそれを支持する人々を見ていると頷ける。
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東京オリンピックのために共謀罪を施行し、オリンピックを記念?して改憲を成し遂げたいという安倍。
その東京オリンピックをめぐる白井の不吉な予感
(1940年の開催できなかった幻の東京オリンピックと2020年の中間の1980年に開かれた)モスクワ・オリンピックはケチがついたことで有名ですね。ソ連のアフガン侵攻に抗議してアメリカ・日本などがボイコットをした。そんなケチのついたオリンピックの10年後に国が潰れた。1940年の東京オリンピックの場合は、開催すらできなくて、その5年後には国が潰れた。となると、2020年の東京オリンピックって、もし何とか開催できればその後10年国はもつ。もし開催できないというところまで追い込まれると、もう5年しかもたない。そういう嫌な感じがするんです。日本の外の情勢を見渡しても、不安要因が複数ある。ウクライナ問題や中東などです。
と言っているのは2014年ごろらしい。
今ならさしづめ北朝鮮とアメリカ、いやロシアも中国もか。
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アベトモ学園問題ですっかり有名になった「忖度」、彼らはつとに忖度が日本の最大の問題であることを指摘している(ま、「空気を読む」とか、かねてから言われていたことだけれどね)。
(内田)「忖度する小物」たちが今では日本の統治機構を機能不全にしている。トップダウンでさえない。下僚たちが、勝手に「上はこういうことをしてほしがっているのではないか」と想像力をたくましくして、自分勝手な行動を始めている。自分の考えではないから、それに対して責任を取る気なんかない。(略)責任はあげて「上の人」にある。「上の人」はそんな指示を出した覚えがないわけですから、もとより責任を取ることなんかしない。つまり「忖度システム」が作動し始めると、機構の中のどこにも責任者がいなくなるのです。
「お上のご意向」が導く昔来た道、滅びへの道。
今朝の朝日↑が報じる加計学園に対する「総理の意向」、これも役人たちの「忖度」だったと片付けられるのだろう。
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財務省のエリート局長が厚顔無恥にも必死になって言いつくろうのを見ていると、忖度できない官僚は落第、忖度をどう隠蔽できるかでそのエリートの能力を判断されているようだ。
痩せても枯れても大蔵官僚、と言われた頃の気概とか誇りは微塵も感じられない。
恥ずかしくないのか!と机を叩いてみて、、ああ、コウガンムチって恥知らずっていう意味だった。



この歌、死刑囚の歌だ。
我々も夢から覚めたらどこに向かって歩いているのか。
Commented by sora at 2017-05-17 18:01 x
シンガポールが怖ろしいという声は、此方でよくききます 
日本が。。。に納得です。 喉が渇く社会ですね

内田氏は10年程前?に読んだ日本辺境論が忘れられないです
「値札のついてないものは無視すると教えられた子供が手持ち「貨幣」で最も「値の高いものを探しだすよう命じられてる」
先駆的に知る力のみが資本の日本は、これではもう未来無しと。
最後の歌は、死刑囚のだったんですか! 好きなうたです
Commented by at 2017-05-17 21:01 x
天気、羨ましい。今日はずっと大降りやったり小降りやったり、
雨が上がっても路は乾かず、それでもくらくなった今、蝉はジージー鳴く。

トム ジョーンズやないですか、懐かしい。まだ、名前、覚えてたわ
Commented by saheizi-inokori at 2017-05-17 23:41
> soraさん、そう思って聴くと涙がこみ上げます。
死刑囚の方がまっとうな時代の歌です。
Commented by saheizi-inokori at 2017-05-17 23:43
> 蛸さん、泣ける歌です。
セミの鳴き声も悲しいね。
Commented by j-garden-hirasato at 2017-05-18 05:56
シンガポールって、
そういう国だったのですか。
まあ、効率のイイ考え方ですが、
民主主義ではありませんね。
Commented by jarippe at 2017-05-18 05:57
想い出のグリーングリーン・・・・を聴きながら
心にしみこんできます 歌詞をしっかり見直したくなりました
我が国の行く末 それを思うから
毎日が憂鬱で不安でストレス増大・・・・
体に良くないからよそ見をして知らんぷりして見るけれど
日に日に大きくなる生きてく事への不安
自分が生きる先だけの事ならいいのだけれど
改憲の実績って? そんなところに名を残したいのでしょうか
そんな人たちに忖度して何かいいことあるのかしら
Commented by saheizi-inokori at 2017-05-18 08:53
> j-garden-hirasatoさん、フイリピン、中国、アメリカ、トルコ、シリア、ロシア、北朝鮮、、独裁の方が効率がいいのはそりゃあそうでしょうね。
民主主義は時間がかかる、かけなきゃいけないと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2017-05-18 08:56
> jarippeさん、忖度しないと出世できないのでしょうね。
公務員は国民に奉仕することが義務なのに。
Commented by ikuohasegawa at 2017-05-22 05:59
「日本戦後史論」
読みます。
Commented by saheizi-inokori at 2017-05-22 09:38
> ikuohasegawaさん、後半、ちょっと内田が繰り返しが多いのとエキセントリックになっているような感じもしますが。

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by saheizi-inokori | 2017-05-17 12:14 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(10)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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