ぼくも仲間にいれてくれよ アン・ウォームズリー「プリズン・ブック・クラブ コリンズ・ベイ刑務所読書会の一年」
2017年 04月 11日
枝が下まで伸ばしてあるから桜の森・オブジエみたい、それが一時間歩いてもどこでも見られる。
ソメイヨシノ、山桜、シラタエ、太白、、桜の種類が多い。
カナダの刑務所で受刑者との読書会を組織・運営したボランテイア作家の実話だ。
著者は強盗に襲われた経験があって、そのトラウマを克服するだけでやっとだったのに、刑務所に行って殺人犯やギャングたちと読書会!すごいよ、この作家。
それは、彼女が読書会の一年で取り上げた22冊の本についての会員(受刑者、、やがて希望者が行列待ちになる)の感想がエキサイティングなうえに、受刑者たちの塀の中の暮しぶり、行動の変化や心理なども書いているから、「事実は小説よりも」奇だし、彼女の気持ちの変化や驚き、亡き父親の教え「人の善を信じれば、相手は必ず応えてくれるものだよ」を自分のものにしていくプロセスが感動的だからだ。
彼女を誘った刑務所読書会プロジエクトのリーダー・キャロルなる人物もまことに痛快、誠実な女傑だ、アブナイ犯罪者たちを毅然と仕切ってしかもみんなから敬愛されている。
読書の楽しみの半分は、ひとりですること、つまり本を読むこと。あとの半分は、みんなで集まって話し合うこと。それによって内容を深く理解できるようになる。本が友達になるの。キャロル名言の一。
さまざまな事情で刑務所に入れられた人たちの「読み」は鋭く深い。
刑務所は受刑者同士が孤立している場所なのに、読書会では人種や民族ギャング団の派閥の壁をやすやすと越えられるのは、人間の真実を本音で語りあえるからだろう。
自分は自慢のロレックスを売りはしないだろう、愛には限界があるという男は「怒りの葡萄」で、主人公の娘が父親に言われて餓死寸前の男に母乳を飲ませる場面に人間のやさしさを見てとった故殺犯。
コンビニ強盗が
作者が言いたかったのは、ほんとのところモノに価値はないってことだと思うな。価値があるのは、気持ちと愛情なんだ。という。
この男はダイアン・アッカーマン「ユダヤ人を救った動物園」(ノンフィクション)を読んで、
作者が言おうとしているのは、動物園自体がもともと善良な場所だってことじゃないかな。生命や自然を体現する場だからといい、自分と周囲の安全を犠牲にしてまでユダヤ人たちを救った夫妻の行動について
危険にさらされてる周囲の人も、夫婦の行動をみならうようになったんだと思う。善は悪より伝染しやすい。といい、作者にだけ見せるノートには
作者が言いたかったのは、他人を断罪する権利はだれにもないし、どんな人間にでも、思いやりや愛情を人に与えるだけでなく、人から与えられる権利がある、ということではないだろうか。と書く。
「サラエボのチェリスト」「スモールアイランド」「ありふれた嵐」「ユダヤ人を救った動物園」「ガーンジー島の読書会」、、。
向井和美 訳
紀伊國屋書店
母乳は乳児を持つ母親にしか出ませんが、あの娘は直前にその乳児を亡くしているのです。子を失くしてもまだあふれ出る母乳をめぐるシーンはなんと哀しくまた愛にみちていることか、と。
私もまた、その読書会に出たかったなぁと思います。
さっそく図書館に予約しなくちゃ。
「サラエボのチェリスト」も「ガーンジー島の読書会」も、とにかく登場した本を全部読んでみたい・・・。
特に著者が女性で刑務所で、塀の中の人を読書によって観察していく様子が、映画を観ているように伝わってきました。
桜と春の花々がとても綺麗に撮影されて感動です。
花たちは今日は震えているでしょうね。それは人間だけかな。
本書を読むとつくづくもったいないことをしたなあと思います。
カッコウつけようなんて思わない人たちの本の読みこみ、その感想、わたしは自分がバカに思えてしょうがなかったです。
キャロルはほんとの貴族、心の貴族ですね。
昨日『プリズン・ブック・クラブ』読み終わりました。
キャロルがとっても魅力的でした。
性善説を信じたくなるような受刑者たちの人生も興味深かったです。
ご紹介ありがとうございました。
この本の前に、津島佑子の遺作『狩りの時代』を読みましたが
こちらもなかなかに良い作品だったと思います。
お時間がありましたら、ぜひ。
「プリズン、、」は私もブログで教えられた本です。
隠居になるとブログから教えられることはとても多いなあ。
「狩りの時代」、読みます。