能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」

風邪気味なので薬を飲んで早寝、7時過ぎに目が覚めてまだ寝ていたいけれど、今日は晴れる予報だ、起きてシーツやホーフの洗濯、ベッドパッドも干す。
ストレッチもしてサンチと散歩して来たら、あっらま、ちっとも晴れてこない。
それにしても、現役時代は毎年、いちどは高熱を出して二三日休んだのに、隠居になったら休んだことがない。
というより一年中休んでいるようなものだね。
能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」_e0016828_10401364.jpg
昨日はカミさんを誘って山種美術館に「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造ー」を見にいった。

春風駘蕩たる南画風の「紙すき場」、細長い画面にパッチワークのように田畑が天まで届くように描かれる、そのまんなかに一見韓国の家かと思われる(じつは東京赤羽だったか)-家に庭に紙が何枚も干されていて、家の中で朝鮮人のような女性が紙をすいている。

ピカソのように御舟にも「群青の時代」があった。
「洛北修学院村」は、一面群青のなかに沈み込んだような家が俯瞰される。
群青の前には「黄土」に入れ込んだ由、「色では真実を捉えられない」というようなことを言っていた。
能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」_e0016828_10392772.jpg
(美術館の帰り、少し熱っぽかったけれど、駒沢公園の「いつもの木」を観に途中下車、夕方になって紅の鮮やかさがなくなったが、日一日と、、そうかあ、死にむかっているのだ)

「破壊と創造」、副題にあるように、常にこれで良しと満足することなく、日本画の伝統とは型ではなく精神にありと、南画に遊び、爪先ではじいたらピンと音がしそうな皿のような写実を極めた(「鍋島の皿に柘榴」)かと思うと、その作風を捨てて再び日本画に戻り、さればとてそれはすでに全く新しい古典ともいうべき見事な世界、「炎舞」をはじめとして「名樹散椿」「翠苔緑芝」「蛤」「紅梅・白梅」「夜桜」、、俺は能の幽玄に通うものを感じた。

35歳の時に渡欧して人物画に興味をもち、花鳥についても画境を新たにしようとする矢先、1935年40歳にして早世する。
「日蓮上人像(模写)」「秋茄子」
能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」_e0016828_11254213.jpg
「晩香」「牡丹花(墨牡丹)」
能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」_e0016828_11244276.jpg
「あけぼの・春の宵」
能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」_e0016828_11252235.jpg
、、大観の言う通り、もっと長生きをしたらどれだけの画境を開いたことだろう。
12月4日まで。
能の幽玄に通じる世界 「速水御舟の全貌―日本画の破壊と創造」_e0016828_10395153.jpg

Commented by sora at 2016-11-16 19:20 x
「群青の時代」「画境を開く」の言葉と共に、心おきなく
美術館を楽しみました。感謝。日蓮上人模写も見たかったです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-11-16 21:48
> soraさん、日蓮上人、画法まで解説がありました。
どうやって古いひびを描くかというのです。
Commented by たま at 2016-11-17 00:09 x
 済州島は、「三無」のみならず、「三多」(風が強く、石(石仏)が多く、女が多い?)もあって、「三多三無」ともいわれるようなことを聞いたような・・・。
 かつては、かの国の新婚旅行のメッカといわれたらしいですが、そんな過酷な歴史があったとは驚きです。
 近い将来(生きておれば)に隣国との絆が築かれた折は一度訪れてみたい地かと・・・。
Commented by j-garden-hirasato at 2016-11-17 06:30
この画家は知りませんでした。
これまで、
あまり見てきませんでしたが、
日本画もイイですね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-11-17 09:14
> たまさん、この小説にも三多のこともありましたよ。
私は数年前に済州島に行きました。
新婚旅行ではなく若者たちと一緒に、とても美しい島でした。
Commented by saheizi-inokori at 2016-11-17 09:16
> j-garden-hirasatoさん、私も日本画にはあまり(洋画も)知識がなかったのですが、
こうして一人の作家の一生を追いかけるようにして作品をみるとひとしお興味深かったです。
Commented by みい at 2016-11-17 10:01 x
おはようございます

 わたしも初めてみましたが、なんだか惹きこまれる絵ですね。
みてみたいです。
Commented by saheizi-inokori at 2016-11-17 10:24
> みいさん、絵葉書を写したものでも、いいでしょう。
実物はもっともっと深いです。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2016-11-16 11:34 | こんなところがあったよ | Trackback | Comments(8)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori