アルカイダの指導者・アル・アラウキはどのようにして殺されたか T・マーク・マッカーリー中佐他「ハンター・キラー」

暑くなると日中のサンチ散歩は危ない。
だんだん早い時間、舗装が熱くなる前に出かける。
俺自身が歩き足りない分は夕方取り戻す。
日中は引きこもり、ミミズのような日々を暮らすのだ。
夜は早く寝るし、「梟通信」は「ミミズのたわごと」とでも改名しなくてはいけないかな。
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「アメリカ空軍・遠隔操縦航空機パイロットの証言」が副題。
米空軍が初めてプレデター(捕食者の意・軍用無人機)を飛ばしたのは1994年7月。アフガニスタン紛争開戦までに空軍はプレデターを60機保有し、そのうち何機かは既にボスニアに派遣されていた。2001年2月、プレデターは初めてヘルファイア・ミサイルを発射し、偵察機からの変貌を開始した。一年後にプレデターはタリバン・リーダーのムッラー・オマルが乗っているトラックを破壊した。さらに、オサマ・ビン・ラディン似の金属スクラップ業者のアフガニスタン人を殺害。
筆者は2003年、プレデターへの異動願を出した。
そうしなければ非戦闘部隊へ転属しなければならず、「戦争に参加したい」一心で、出世をあきらめることも厭わなかった。
2011年、プレデターの年間飛行時間は50万時間を超えた。一方、戦闘機と爆撃機の年間飛行時間は非戦闘を含め合計4万8000時間だった。プレデターの方がはるかに長いが、年間消失機数の平均はわずか13機、ここ10年で飛行時間は急増したのに平均年間消失数は横ばいか、むしろ下がっている。実績を積めば積むほど事故は減り、今や空軍で一番低い事故率を誇る。
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本書は筆者が米軍隊にあって一人前の扱いを受けていなかったRPA(遠隔操縦機)を主役の位置に育て上げるまでのリアルでスリルあふれる物語だ。
プレデターによる索敵・監視・戦闘場面も満載。

ドローンとか無人戦闘機などと言うと、あたかもパソコン画面を見ながらロボットを制御または自律制御を思い浮かべるかもしれないが、実際は本物のパイロットがコックピットで普通の飛行機を操縦するのと同じように映像を見ながら操縦桿を押したりしながら機体を操っている。
ただ、そのコックピットが機体と物理的にくっついていないこと、アフガニスタン、イラク、ジブチ、、世界中のどこにでも同じ場所から操縦していること、乗務員がシフト勤務だということなどが違う。
最大の違いは機体とともに戦死しないことだ。

しかし現場から1万キロ距離をおけるから、殺傷行為に精神的にも距離がおけるかといえば、そうではない。
距離が近すぎる、何日にも及ぶ長い索敵・監視行動で相手(友人や家族の様子、癖、生活習慣、、)を知りすぎる、敵を撃つときにはズームインするから相手の様子をモニターで大きく映し出す。
自分は安全なところに居ながら相手の生存チャンスはゼロ。
冷酷な殺し方、相手を「悪者」と思い込んでも、重いものが残る。
テロリストが、アメリカ本土ではなくイラクで米軍を攻撃しているのがせめてもの救いだ。
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戦争に参加したがる人がたくさんいる(動機はなんにせよ)こと。
日本の若者もそうなるのだろうか。
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(新しく出来たTシャツ屋、全品4500円、特別な生地だというがちょっと高いな)

可笑しかったのは、統合参謀本部議長・大将がとつぜん飛行隊現場に臨場した(意地悪な直接管理部門の官僚の差し金)ときの挿話。
飛行隊指揮官の筆者は、今まで訓練されて来たとおり次々と社交辞令を並べる、何もかも素晴らしい、基地の支援体制も非の打ち所がない、不満はない、大将も自分も出鱈目だと分かっている。
そこにプロペラのない壊れた機体があった。
軍隊では、四つ星階級の将官に直接問題をもちかけるなという暗黙知がある。命令指揮系統を無視して、偉い人に汚れた洗濯物を押しつけるような真似をしてはいけない。大将レベルであれば、問題を聞いたところで部下に対応を任せる。そうなると巡り巡って自分の直属の上官に話が行き、自分の首を絞めることになる。部下が幹部に部隊内の問題を暴露すれば、上官は不愉快になるに決まっている。
急にアメリカが近しく思えた。
我が現役時代にもよくあった話だ。
本社の担当部長が自分ではこれ以上何もできないというからトップに直談判したら、結局担当部長に話が降りてきて泣きべそをかきながら「トップに言わないで欲しかった」。
本書の場合はうまく問題が解決したのだが。
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(平貝の磯辺焼き)

しかし、まあ産業と軍隊の複合国家にとっては何ともありがたい展開になってきたのではなかろうか。
宣戦布告も何もなしに世界中の至るところに無人の戦闘機を送り込み、監視し索敵し殲滅する。
兵隊、人的資源の損耗を減らしながらも武器弾薬は作り続けることができるのだ。
国民も我が子が戦地に行かないのなら安心できようもの。
それが世界平和につながればいいのだが、、。

深澤誉子 訳
角川書店

Commented by sora at 2016-06-18 23:43 x
「部下が幹部に部隊内の問題を暴露すれば、上官は不愉快になる に決まっている。」 部門最適、全体不適が横行するのも
人間の組織の常でなんでしょうね。
平貝の磯辺焼きの画像に、しんみりしました。 
こういうIdeaは、日本料理のあたたかな、素敵な感性だわと
(私一人か?)思います。
Commented by tocotoco-o3po at 2016-06-19 04:57
暑くなってくるとサンちゃんの散歩大変ですよね。うちの柴犬のケンタも大変そうです〜。
アルカイダや軍隊の花はよくわかりませんが、職場で現場のものが良い意見を出しても途中でストップして上まで伝わらず…ということは残念ながら感じます。
あと自分たちにとって都合の良い事だけが採用されていたり…(あっ仕事の愚痴になってしまいました(汗
良い意見はトップまで伝わってない事は多々ありますね(T_T)

毎年1回社長と話せる機会があるのでそういう時にお話すると意見を取り入れてもらえたりします。
今年は表彰式で社長以外の方とも話せる機会があるので、意見を伝えられるよう頑張りたいですが…
全然仕事する時間がないのでせっかくの機会が活かせるか心配です(汗

体調崩しやすい季節なので、気をつけてお過ごしくださいね〜(^-^)/
Commented by j-garden-hirasato at 2016-06-19 08:04
戦争をしないで
物事が解決できたらいいんでしょうけど、
人類というのは、
実に愚かな生き物です。
でも、
どんな動物でも、
縄張りに侵入者が入ってきたら、
小競り合いはするからなあ。
生き物としての本能か。
Commented by saheizi-inokori at 2016-06-19 09:48
> soraさん、「部門最適」になっていれば文句はないのでしょうが、部門のなかに不備故障があるのに、部門責任者が保身のために全体=トップまたは他部門の長に言うべきことを言わないのです。
またしばしば無能なトップは自ら宰領せず、部下の言いなりになって、すなわち有力は部門長の言いなりになって「全体最適」という名分を振りかざして弱小部門(しばしば現場)を抑え込むのです。
平貝の磯辺、香ばしくてうまいですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2016-06-19 09:51
> tocotoco-o3poさん、まだ朝晩は涼しいのが救いですが、もう少しすると夜のうちに舗装や建物が冷え切らないから朝でも熱い、これはきついです。
ちゃんと話を聞いてくれる社長がいるといいですね。
お互いに大事にしましょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2016-06-19 09:53
> j-garden-hirasatoさん、その本能を自分たちの利益のために煽りそそのかし、罪なき人びとをひどい目に遭わせるのが産軍国家の本質。
話し合いをぶっ壊してでも戦争にもちこみたい、継続したい連中です。
彼らにとっては無人爆撃機は願ってもない物でしょうね。
Commented at 2016-06-19 22:55
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Commented at 2016-06-19 23:00
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Commented at 2016-06-19 23:03
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Commented by saheizi-inokori at 2016-06-20 09:50
鍵コメさん、それぞれの企業が熾烈な競争にさらされているから社長がそうしようとしてもなかなか難しい側面はあると思います。
でもどっちを向いて仕事をしているかで大きく変わってくると思います。
やはり社員第一=お客様第一がけっきょく会社の競争力を高めるのですから。
短期的に自分の成績、とくに数字をよくしようとする人はダメですね。
Commented at 2016-06-21 11:15
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by saheizi-inokori | 2016-06-18 13:18 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(11)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori