「厄払い」「ふぐ鍋」「御慶」「弥次郎」、お正月セットは小満んの「羽団扇」で舞い上がる

満月を仰ぎながら国立小劇場へ。
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駒松改め馬久「厄払い」

二つ目になりたての初々しい高座を聴きながら、俺の正月の「逝きし世の影」を数えてみた。
初音、近所にやってくる餅つき、なまこもち、近所の人たちが道に集まってあいさつ(やかんから注ぐ茶碗酒とスルメ)、胸まで積もった雪をかきわけ小学校に登校して校長あいさつ(帰りにミカンのお土産)、書初め、どんと焼き、、。

馬久君、一生懸命「あらめ でたいな」をくりかえしていた。

小せん「ふぐ鍋」

「白菜が安くてうまくなったら冬だ」、いいセリフ。

こんどはわが人生のふぐ鍋のいろいろ回顧。
心斎橋で「学生さんか、じゃあ」と安くしてくれた屋台の鉄砲、うまかった、あれが原点かも。

大学卒業直前に別府の友人の留守宅を襲い、お父上にご馳走になったふぐの肝酒はうまかった。
社会人になって、先輩たちと大喧嘩して、お詫びのしるしにと連れていかれた新橋のフグや。
怒りまくる俺に頭を下げっぱなしの先輩、気が付いたら、出てくる皿出てくる皿を箸の先でさらうように食っていやがった。
板橋、浅草、程度の差こそあれ安い大衆フグや、今でもあるのか、いっしょに湯気を吹いた人達の顔が浮かぶ。
長男の結婚前に相手側の両親を博多でご接待したときのフグも忘れられない。

この噺、いつも食い意地の張った俺は、おこもさんに毒見させようと、よそってやるフグの量が気になる。
小せん、よくなったなあ。
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(帰途、「はじめ」で食ったカキフライ)

白酒「御慶」

千両富くじが当たる噺は多い。
世は移れども貧乏人たちの楽しみは”妄想”にあるのかも。
俺も貧乏学生時代に百万円当たったらどうするかとか、一晩に百万円を一文残らず使う方法とかを酒の肴にしたこともある。
南極から取り寄せた氷で作ったロックをウイーン・オーケストラの生を一人で聴きながら飲む、なんてね。
白酒は「10億も当たっても使い道がない。ぜんぶ宝くじ買って、3億当たったって喜んだりして」。

「ギョケーッ!」(御慶)「エイジツーっ!」(永日」の絶叫の連続がおかしかったが、今の人たちには御慶・永日の説明がもう少し必要なのかもしれない。

クリスマスの落語会に来るなんて典型的な負け組、だとか、ハローウインをNHKが報道するのは誰かがトップに命令したからか、もっとお酉さまなどを大事にしてデイズニーランドに見世物小屋をおいてミッキーマウスが蛇を呑んで見せたり、とか、相変わらずの白酒マクラ。

扇遊「弥次郎」

師匠・扇橋ゆずりの爆笑噺。
北海道の寒さに凍った火事の家、真っ赤な炎が花のように天を指し、そこに夜中に降った白雪がかぶり、朝日にきらきら輝くってのを見たいものだなあ。
猪の敵討ちで終わらず、さいごまでやる。
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小満ん「羽団扇」

いつものことだが、小満んがトリのときに席を立つ人がちらほら。
ああ、もったいなあ、と思う。
ことしも小満んにどれだけ慰められたか。

初夢を見ようと寝につくとすぐにカミさんに起こされ、今何の夢をみた?にやけた顔をして。
何も見やしない、と喧嘩になる。
「天狗さばき」に似た噺だが、クマさんや大家のちょっと煩わしいくりかえしの仲裁はなく、すぐに鞍馬山の天狗がおでましになる。
鞍馬山に連れていかれて、天狗と語り合うのが楽しい。
天狗が「俺はカラスとか小天狗なんかじゃない名人天狗、俺にかなう天狗はいない」、「ずいぶん自信があるんですね」、「それが天狗なのだ」みたいなとぼけたやり取りの末に、しょうがないから見た夢の噺をするといって、両国川開き風景を語りだす。
舟、花火、屋根舟、キレイどころが三味線で、チャラチャラスチャラカチャン、扇子の代わりに借りた天狗の羽団扇で拍子をとると、そ~ら、そらみろ、はっつあんは空高く飛んでいく。

金波銀波の大海原で、持った団扇を取り落とし、墜落したところは七福神の宝船。
弁天様のお酌で、「恵比壽さんは、あ、ビールしか飲まない」、「大黒様は色が黒いけれど、、ア、ダイコクの方」、「布袋様は大きな袋になにを、、フテイ野郎だ」、「福禄寿様はいくつ?フクロクジュウだあ?」、愉快でならない。

初昔、元旦に大晦日を一年前の昔と思うこと、去年今年と同じ。
いつものように蘊蓄も一杯。
粋で楽しい小満ん聴き納め。
小満んをよしとする自分に天狗也。


Commented by 喜洛庵上々 at 2015-12-26 12:18 x
年の暮れを実感させてくれる噺が並びましたね。
佐平次さんのblogを拝読して昨夜の反芻をしながらも、何ですかこう一段と気忙しい雰囲気になって参りました。
帰りしなにご挨拶が出来ませんでしたが、どうぞ佳いお年をお迎えください!^^
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-26 12:19
喜洛庵上々さん、気ぜわしくなったら小満んの噺を聴きましょう、また来年!^^。
Commented by ikuohasegawa at 2015-12-26 13:51
七福神の駄洒落覚えようかなあ。
覚えても使い道が・・・女房酔わせてやってみるかな。
Commented by sweetmitsuki at 2015-12-26 19:06
もしも10億円あったら、ISで高座を開く、なんてのはどうでしょうか。
隣の国に垣根が出来たってねい。
ああ、どこの国も、垣根を作っちゃうんだ。イメージしてごらんよ。垣根のない世界を。
こんな小噺を演れば、もしかしたら笑ってくれるかもしれないです。
もちろんですが、演るのも必死ですけど。
Commented by hanamomo08 at 2015-12-26 20:32
こんばんは。
好物の牡蠣フライ食べられてよかったですね。

下の記事で知ったsaheiziさんのクリスマスの思い出、いいですね~。
昔のほうが暮らしを楽しもうとする気持ちが旺盛だった様に思いました。
本当にいい思い出ですね。
大学生だったsaheiziさんの楽しい企画も、その思いでがったからこそ。
Commented by ほめ・く at 2015-12-26 22:02 x
初めてフグを食べたのは入社して間もなく山口へ出張した時で、地元の居酒屋で女将さんが一人で店をやってたんですが、とにかく美味かった。以後、山口へ出張する度に事前に連絡をしておくと、浜で獲りたてのフグを用意してくれるんです。フグ刺しなんて東京の様な紙みたいな薄っぺらいんじゃなくて厚く切ってあるので、味が全然違うんです。それでコースで6千円位で格安。冬場に山口へ出張に行くのが楽しみでした。今考えると、あの女将さん、調理免許を持っていたのかどうか疑わしいのですが。
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-26 22:10
> ikuohasegawaさん、あの小満ん独特の間でやったら奥さん抱腹絶倒ですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-26 22:12
> sweetmitsukiさん、何語でしゃべるか、それが問題。
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-26 22:15
> hanamomo08さん、たしかに、情報も乏しく経済的にも貧しい方がたとえわずかなことにでも喜びや楽しみを見出そうとしたような気がします。
テレビ、映画、スマホ、なんでも向こうからこうやって楽しめと言われて受け身でいるのはあまり楽しくないですね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-26 22:18
> ほめ・くさん、そりゃあ素晴らしいフグ経験ですね。
フグ刺しは厚く切って塩とライムの汁で食うのがうまいと思います。
チリも全部ごっちゃに入れず、最初はフグだけをしゃぶしゃぶ食って、その後に野菜を食うのがいけます。
Commented by j-garden-hirasato at 2015-12-27 07:19
落語を聞いて、
カキフライを頂いて、
軽く一杯ですか。
いやいや、
羨ましいです。
Commented by saheizi-inokori at 2015-12-27 07:58
> j-garden-hirasatoさん、ささやかな、隠居の楽しみです。
いつまでできるか、、。
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by saheizi-inokori | 2015-12-26 11:57 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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