トルコ観光ガイド、というほどでもないか 恩田陸「ブラック・ベルベット」

なんでこの本を借りたのか、「夜のピクニック」が面白かったことを思い出したのかもしれない。
アメリカの製薬会社所属のウイルスハンター(なんてのがいるんだね)、腕利きらしい男。
バイセクシャルで女言葉をしゃべるのだ。
男性の格好をした人が「あら、そうじゃないわ」なんて言いながら男友達二人と酒を飲んだりするのを、現実に見ても驚きゃしないが、活字で読むと、そのたびに、ああ、ここにいるのは男が三人なのだ、と確認する。
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T共和国のイスタンブールで尾行していた美女(アメリカ人)が刺されて倒れるところから始まる。
その女を見つけてくれと日本の友人から頼まれていたのだ。
謎の人物の指示に従ってトルコ観光をしていると、なんとかいう新種のウイルスの噂だとか、謎の男や美人刑事だとか、いろんな遭遇があって、ハードボイルドっぽいようなネタがたくさん出てくるのだが、ストーリーはいつまで経っても導入部の連続みたいで、ちっとも起承転結の「転」どころか「承」にも至らない。

そして突然バタバタと「結」。
むりやり、すべて(でもないか)が謎解きされてしまう。
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俺は行ったことがないが、トルコ旅行をしたことがある人にとっては、懐かしい場所が出てくるのだろう。

政経分離が徹底していたT共和国がムスリムへの回帰が強まっていることをめぐって、

「ムスリムってのは合理的だよ。人間が弱いものだというのが大前提で、変な幻想がない。
幽霊もいなければ、妙な精神主義もない」


というセリフがでてきた。
そうなのか。
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ムスリムが主役のミステリって、何か読んだことがあるだろうか。
ムスリムが書いたミステリはあるのだろうか。

シリーズの三作目だって、でも前作を読みたい気持ちにはならなかった。

双葉社
Tracked from 粋な提案 at 2017-03-03 12:00
タイトル : 「ブラック・ベルベット」恩田陸
外資製薬会社に身を置く凄腕ウイルスハンター・神原恵弥。 ある博士の捜索を依頼されてT共和国にやってきたが、博士は殺されてしまう。 一方、この国では全身を黒い苔で覆われて死んだ人間がいるらしい。 ビジネスで滞在中のかつての恋人・橘は不穏な行動を見せる。 恵弥が想像だにしない、これらの背景に存在するものとは――? 製薬会社のプラントハンターである主人公が、海外住まいの長い友人を訪ね...... more
Commented by fusk-en25 at 2015-11-12 19:42
恩田陸は学園ものは色々読んで。。
ピクニックや図書室の海。6番目。三月は。。。
それなりに面白いとは思いましたが。
佐平次さんの解説を読んで
この本は垣根涼介の午前3時に似てるなあと思いましたが。。。。
文庫にならないかもしれませんね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-11-12 21:55
> fusk-en25さん、恩田陸を読んだのは二つ目でした。
垣根涼介は名前しかしりません。
文庫にはなるのじゃないかな。
固定ファンがいると思いますよ。
Commented by reikogogogo at 2015-11-12 22:48
本の内容はわかりませんが、ブラック・ベルベットと聞くと、カカオ豆の香りがする、ボディオイルを思います。
以前我が家にスティしていた黒人すごい乾燥肌で、彼が使用した寝具、お風呂場、家中が甘い香り。本の内容はお酒?イスラム教、ムスリムお酒を飲みますから。
Commented by unburro at 2015-11-12 23:38
トルコといえば、オルハン・パムク『雪』おススメですよ。
『わたしの名は紅』も面白いらしいのですが、未読です。
Commented by sweetmitsuki at 2015-11-13 05:43
幽霊や妖怪がいないと、面白くないんじゃないでしょうか。
落語にしても「悋気の火の玉」とか「三年目」とか。
変な幻想がない世界は合理的だとは思いますけど、つまらないと思います。
ムスリムが本当にそうなのかは別として。
Commented by saheizi-inokori at 2015-11-13 09:13
> reikogogogoさん、ギネスのシャンパン割、じゃなくてなんだか得体のしれないカビみたいなものらしいです(小説では)。
ある微生物が、ある重金属の毒性を中和した結果できるカビのようなもの。
わかんない、よね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-11-13 09:19
> unburroさん、ノーベル賞作家でしたよね。
読もうと思いつつ未読です。
そういえばイランの作家の小説、マーシャ・メヘラーン「柘榴のスープ」思い出しました。
料理がテーマになってるの、面白かった。
これはミステリぽかったような気がします。
Commented by saheizi-inokori at 2015-11-13 09:21
> sweetmitsukiさん、能なんて幽霊なしではなりたちませんよ。
仏教は無常がすべて、霊魂を認めないのがほんとだという話もあります。
Commented by at 2015-11-13 11:56 x
トルコねぇ、
12,3年前に行ったっきり、友には「また来るな!」で、行ってないわ、
てか、子供等が他所の国に住むこと、考えてなかったし、
行くとこいっぱいあり過ぎて・・・・;;
Commented by saheizi-inokori at 2015-11-13 21:32
> 蛸さん、そうやね、蛸さんのバヤイはね。
私はできたら行ってみたい、そんなこと言ってるだけじゃ行かないで終わるね。
Commented by 藍色 at 2017-03-03 12:06 x
最近のこの作者の小説では、おもしろかったです。
すこし物語の厚みが足りない気もしましたが、
キャラの立っている主人公がいるからこそのおもしろさがあります。
トラックバックさせていただきました。
トラックバックお待ちしていますね。
Commented by saheizi-inokori at 2017-03-03 12:23
> 藍色さん、この作家はいろいろ変化のある作風なのですね。
「蜜蜂と遠雷」は面白かったですよ。
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by saheizi-inokori | 2015-11-12 10:46 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback(1) | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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