これぞ存立危機状態の年金問題 河野多恵子「幼児狩り」「不意の声」
2015年 06月 03日
政府としての責任を問われた菅官房長官が「やるべきことをやってなかった部分まで責任は取れない」と開き直る。
それを言っちゃあオシマイよ。
役人が「やるべきことをやってなかった」、それが政府の責任でなくて誰の責任だというのか。
これこそ存立危機事態、それとも重要影響事態?なんだかややこしくてわかんない(政府の連中もわかんないみたいだが)。
わけのわかんない「危機」に備えて戦争準備を進めるよりも、今ここにある危機に「早く対処しろよ」安倍君。
吁希子(うきこ)は時折、亡父に対面する。彼女が請う時には必ず、そして時には自分の方からも訪れてくれる亡父と、不思議な、親しい体面をする。
という書き出しで、吁希子(ああ!稀なる子、それとも希の子?不思議な命名だ)の夫婦生活が憂鬱に壊れていく様を記し、やがてそれが突然変調して殺しの連続、しかも亡父の導き・承引のもとに。
前半の憂鬱夫婦生活と後半の殺人の連続をこまごまと叙述するかっきりした男性的な文章には変化がない。
それで殺人は突然変異と言ったものではなくてもともと吁希子にしっかり内在していたものであったことがわかる。
亡父から引き継いだものだったこと。
それが着々と実行に移される準備段階が壊れていく夫婦、理不尽な存在としての夫が必要だった。
マゾヒストの女性が男児嗜愛をも併せ持つ。
少女は嫌いだという。
ごく普通の日々を過ごしつつも、男児の食べかけの西瓜の「どろどろになった」「なまぬるい」「汗と垢と唾液にまみれた」ものを舌を絞るようにして味わう。
どちらも人間の内面にひそむ異常を虫眼鏡でみるように描き出す。
あまり俺には馴染みのない(あったら大変)心理・行動だが、文章に力があるので最後まで読まされる。
作家とはしんどい職業だ。
角川書店
月遅れで楽しむことにしよう。
多岐にわたって読まれていつも感心しています。
それを吸収しておられるのですものね。
然り。
俺じゃない、悪いのはやったやつらだ!俺は知らない。