人類がマラリアに勝つ唯一の方法とは ソニア・シャー「人類五〇万年の闘い マラリア全史」
2015年 05月 10日
喜びに舞い踊る現地の人々の映像を見ると、よかったね、と思う、と同時に、さてさていつまで喜んでおられるのだろうかという猜疑心も湧いてくる。
マラリアは50万年もにわたる人間との戦いで撲滅とは程遠く、今も年間2億5000万人から5億人が感染し、100万人の死者が出ている。
日本・アメリカ・ヨーロッパ先進国にだっていつ上陸するか、予断は許さないという。
HIVとマラリアは相性がいいらしいし。
合衆国東北部とインドの間を行き来しているうちに両国間およびそれぞれの国の内に存在する不平等に強い関心を持ったという。
いかなる暴力をも禁じているジャイナ教信者である筆者は、カメルーン、マラウイ、パナマなどの”マラリア現地”を5年間にわたり取材した。
蚊がとまってもピシャリとはやらずそっと追いやり、絶対に効くという保証のない予防薬を飲みつづけながら。
痒くなるようなイライラするような恐ろしいエピソードがいっぱいの本書。
その声が一瞬にして世界や宇宙を駆け巡り、その視力は天を貫く人間たちが、連戦連敗、戦死者が死屍累々のマラリア戦争の敗因。
その一は、敵=マラリア原虫が強かったこと。
抗マラリア剤をたちまち無力化し、人間の免疫機能をすり抜け、グローバルな人間の動きを逆に利用して世界中に同盟軍を結成する。
今、世界に見つかるマラリア原虫の70パーセントは致死性の熱帯熱マラリア原虫、サハラ以南から生まれたものだ。
マラリア原虫が狡猾に有効な戦うのに対して人類が愚かであり続けたことが敗因の二番目。
せっかく優れた薬剤を開発しても、それはすぐに商品化されて本当に必要とする患者には手に入らなかったり、中途半端な量の投与しかなされないとか、二剤を併用しなければならないのに単独投与するから原虫の耐性を強める、いわば敵塩。
そして何といっても、戦争と貧困が最大のマラリアの友だちだった。
各地から集まった兵隊たちがマラリアに感染し、そこで死に(戦闘よりも被害が大きかった)、生きのこって帰っても故郷に原虫を持ち帰る。
アフリカで生まれ育った人たちには免疫があっても、マラリア処女地の人々にはそれがないから瞬く間に大量虐殺が起きる。
資源獲得を目的とする開発もマラリアを世界に解き放った。
私たちには殺虫剤処理した蚊帳とACTをアフリカで作る力が必要なのです。それが、私たちがマラリア問題を解く唯一の方法なのです。あの人たちは技術を移譲したがらないのです。製薬会社の代理人を指さしながら
私たちには買え、買え、買えと言うだけなのです。WHOがエボラ終息宣言をしても安心できない所以だ。
夏野徹也 訳
太田出版
この前の、エボラ出血熱騒ぎの時にも、唖然としました。
自国に飛び火した途端、大騒ぎで新薬を開発する不思議。
どうして、もっと以前から本気でやらないのか!
だって、アフリカの人の為に薬を作っても儲からないから。
ひどい場合は、巨大な人体実験場としか見ていない。
その後を必死になってついて行く日本の企業・政治家たちが哀しい。
製薬会社だけでなく、トウモロコシの種のこともあります。
欧米の先進国と言われる国々は、善意の衣を着ていても実は汚い。
日本は「二の字二の字の下駄の跡」みたいにアメリカについていくのです。雪じゃなくて、泥の跡です。
それほど先進国はひどいです。
現地人は免疫があるって言うことなんでしょうね?
彼のお兄さんはどんな奥地へも行く感染症の有望な研究者でしたが、こともあろうに、ある日感染症にかかってあっという間に亡くなってしまいました。
ガーナはエボラが蔓延した西アフリカなので、流行し始めたときから関心を持って推移を追っていました。
マラリアも他人事ではありません。
この本、読んでみたいと思います。
世界の大手製薬会社については、ジャーナリズムが追求すべき悪事がたくさんあるはずなのに、なかなか表面には出てきません。
落語なら、やかんを舐めたり、唐辛子水を飲んで治る病もありますが、現実はなかなかそうはいきませんね。
お気の毒なことでした。