STAP騒動の責任は野依良治にある? 小畑峰太郎「STAP細胞に群がった悪いたヤツら」

小保方騒動を、なにを大騒ぎするのかバカバカしい、と冷ややかに見ていたのは間違いだったようだ。
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原発が聖域として、政界・学界・企業の打出の小槌たりえなくなった今、再生医療がその役割を期待されている。

医療を産業化して経済規制(医療規制より甘い)の下に包み込む。
産業イノベーション、女性活用、安倍政権の目玉を象徴する広告塔になるはずだった小保方。

理研を「特定国立研究開発法人(仮称」に指定する政策がSTAP細胞論文と同時期に動いている。
億単位の年収を保証する法人、文科省の貴重な天下り先にもなるはずだった。

東京女子医大・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設(TWIns)なる寿限無的名前の施設長岡野光夫は、日本の再生医療を主導するボスであり、かたがた細胞シート再生医療・再生医療支援を事業内容とする会社・「セルシード」を創設、役員になっている。
岡野は再生医療の急速な事業化をもくろみ、日大にいた大和雅之・東京女子医大教授をスカウト、ともにTWInsを動かす。
細胞シートとは「人工的に細胞を培養することができる培地」、大和が作製に成功した。
大和が早大修士科時代の小保方を指導し、小保方のSTAP論文共著者であり、現在行方不明という。

「セルシード」は資金不足から「継続疑義」の状態だったのがUBS証券と新株予約権付き証券発行及び第三者割当増資引受契約を締結し、34億円余のファイナンスに成功、存続することができた。
この取引と小保方のSTAP論文発表の時期が微妙にクロスしているため、証券監視委員会が調査に動いていることが「エコノミスト」に報じられた。

『特許』と『科学研究』と『インサイダー』を三位一体とする経済犯罪はアメリカでは確立しているスキームであり、そのために研究公正局を創ったが、日本では規制も及ばず、これから増加する恐れがある。
科学・医療の産業化によって主管庁(経産省・文科省)が推進と規制の双方を行う図式は原発事業とよく似ている。
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俺もそうだが多くの人がなぜ理研・早大ともあろうものが、お粗末極まりない(その詳細は本書に明かされる)小保方論文さらにその後の笠井などの発言を許したのか、それが不思議だった。

本書のさいごに武田靖・北大名誉教授、チューリヒ工科大学特別研究員が、著者の問いに答えて、理研は野依良治なるノーベル賞学者、すなわち
科学を忘れた化学者のリードの下、科学を知らない若いエンジニア系の研究者が、ふんだんな資金と自由さを以って、生命科学の大きなテーマに取り組んだ。
しかも在職中に成果を挙げさせようとする官僚主義的な理事会の圧力の下で。
こうして騒動は起こるべくして起きた。しかもその騒動の中味たるや、科学そのものではなく、マネジメントの問題だった。特許や特定法人化などの管理運営面の要請の方が強い。したがって、当然、その全責任は野依理事長にあるだろう。おそらく早期の収拾を図りたいという強い指示が出されていることは想像に難くない。
と語っている。
武田が云う「科学を忘れた化学者」とは、「なぜ?」という問いかけすらしなくなった、単なる[技術者]になってしまった化学工業に携わる多くの学者のこと。
「なぜ格差が出来るのか、どうしたら格差をなくせるのか」という問いを忘れた竹中流経済学者と相通じるなあ。

指示、それは下村文科相など政権側からもあったと、俺は推測するのだが、、。

巨額な国家予算をどうしたら獲得し続けることができるか、そういうノウハウにたけていたのが自殺した笠井教授だった。
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エンタテインメント化してしまったメデイアの報道はいつものことながらがっかりだ。
こういう事件の背景をえぐることがアメリカのような退廃を少しでも防ぐよすがになるはずだ。

新潮社
Commented by tona at 2015-01-04 19:21 x
この問題は不思議がいっぱいでしたが、さらに奥深い問題が絡み合っていたのですね。政治とも絡まって問題が大きい科学・化学の世界です。
Commented by sora at 2015-01-04 20:26 x
あけましておめでとうございます

息が苦しくなる本ですね!
医学について「医は算術なり~」と
揶揄した時代など かわいらしいものだったと思い出します
今年もファンです  どうぞよろしくお願い致します
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-04 21:18
tona さん、本書を読み終わっても明快に分かったわけではないです。
何だか悪臭のする深い闇を覗いたような気分です。
小保方や笠井の云ったことがいかに前後、論理矛盾しているかは分かりましたが。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-04 21:21
sora さん、おめでとうございます。
息苦しくなる、それが今という時代なのかとも思います。
医療、農業、教育が”成長産業”になるってオソロシイ時代です。
Commented by noreizoko at 2015-01-04 23:25
明けましておめでとうございます。ご挨拶したつもりが、不出来で、未完だった模様。今年もどうぞ宜しくお願いします。日々、月々、毎年、と、息苦しくなる。どうぞ今年もスカッとした記事お願いします。楽しみに拝読しています。
Commented by kaorise at 2015-01-04 23:36
あけましておめでとうございます。思えば不可解としかいいようのない騒動でした。スタイリストの視点からすると、ヘアメイクや衣装や小道具など小保方さんの演出は玄人です。私は小道具の亀と飼育ケースをみたときに、本当にこのひと科学者なのだろうかと思いました、、、亀ケースは素人、まじめに亀を育てていない状態、だった。誰もそこを指摘しなかったのが、亀という動物が軽視される悲しいところ・・・なにもかもが演出で彼女は女優だったのかもしれません。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-05 08:10
noreizoko さん、おめでとうございます。
コメント欄を閉じるときに非公開コメントを押して消してしまうのかも、わたしもときどき書いたつもりの記事がないことがあります。
スカッとした記事を書きたいけれど世の中はスカッとしませんね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-05 08:15
kaorise さん、本書でも、白衣より動きにくい割烹着、精密機械にムーミンシールをベタベタ貼る幼児性、20年前の今は入手できないライカの顕微鏡、ガラガラの棚と試験管、「弱酸性」をオレンジジュースくらいという不可解(オレンジジュースは歯を溶かす)、たどたどしいピペットのつかい方、、当初からプロの研究者は”不思議ちゃん”と揶揄していたと書かれています。メデイアは盲目・不感症かな。
Commented by sheri-sheri at 2015-01-05 09:54
おはようございます。なんとも不自然な印象を受ける今回の騒動でした。やはり、化学に全く縁のない普通の一般人である私なども、不可解な印象を禁じ得ませんでした。人間は、墜ちるところまで墜ちても我が手に巨額の金銀財宝を握りたい・・たとえそれが不正な方法でもね。真摯に化学者を目指す子供達もいることでしょうが、世の中は不正に満ちていたり、悪用されたりと・・・いう側面もいなめないですね。しかし、やはり所詮、どう生きるかは本人の心が決めるのでしょうが、今回の事件は空恐ろしい結末となりましたね。まだ白日のもとには完全に明らかにはなりませんが。著者の頑張りに敬意を払いたいと思います。メディアとは一体なんでしょうね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-05 10:04
sheri-sheri さん、今朝の朝日「ニュースの扉」には「養老孟司さんと訪ねる理研」という記事が載っています。そこで、養老さんは、基礎科学から実用的な技術へと「研究の世界が俗っぽくなり」「再生医療のような先端科学への予算が巨額になり、上に立つ研究者にガバッとおりる。裁量する額や権限が大きくなった研究者には成果が求められる」ことが騒動の背景にあったとみています。
Commented by kanafr at 2015-01-05 10:47
化学や科学の研究もはじめは、この研究が成功したらいくら儲かるかじゃなくて、純粋に人類に役に立つようにっていう志から始まるんじゃないかって思うんですよね。
それがいつの間にか、違う方向になってしまうって悲しいですね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-05 11:17
kanafrさん、政治だって本来は国民のためのものだったのにね。教育も産業化して競争市場または権力の論理に支配されてしまいそうです。文科は国立大学には不要とまで言ってるらしい!
Commented by 小言幸兵衛 at 2015-01-05 12:07 x
師走の22日の私のブログで、STAP細胞騒動を落語の「文違い」にたとえました。
新宿の貸座敷のお杉をオボちゃんとすると、彼女を騙す男芳次郎は、理研の責任者ではないかと思い、その背後に霞が関や永田町がいるように書いたのですが、実際そのような背景があったようですね。
特殊法人狙いだったのは明白でしょう。
理研は利権に字を替えるべきかな^^
Commented by maru33340 at 2015-01-05 12:21
犯罪捜査の要は、その行為によって誰が得をするのか、を探ることだとある本で読みました。
STAP細胞の問題には国家ぐるみの利権の臭いがすると感じていましたが、ここまで複雑化しているとは...
この本読んでみたいと思います。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-05 16:03
小言幸兵衛さん、竹中などもそこらへんでうろうろしていそうですね。
Commented by saheizi-inokori at 2015-01-05 16:04
maru33340 さん、すべてがカネカネカネ、それがすべてなのかもしれません。
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by saheizi-inokori | 2015-01-04 12:45 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


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