小三治の番外延長戦 芸術祭寄席@国立演芸場
2014年 10月 27日
小南治「写真の仇討」
「一応断っときますが、前座ではございません」。
独特の間で「私は冒頭部分で同じ話をしゃべりますよ」を繰り返し「マクラが変わると眠れないから(居眠り客のことを考えている)」、とか「木を切ると地球はダメになる。ヤマイは気から」などと笑わせていたが、ネタに入ると叔父さんと甥の不思議なテンポと甥の誇張したしゃべくりが、いつ面白くなるのかと思って聴いていたがさいごまでつまらなかった。
北見マキ・奇術
華やかな肩衣と袴、着物姿の女性を従えて扇子で舞うがごとくに手妻。
両手の指を客に縛らせてワッカや棒を両腕の中にすいすい通してしまう。
やっぱり不思議。
小柳枝「抜け雀」
客を見る目が無いからいつも一文ナシを引っ張りこんでしまう旅籠・相模屋のおやじ。
「まみえの下にあるのは何だ、見えないならくりぬいて銀紙はっとけ」、客にいわれ女房に云われ。
ふてくされて起きてこようとしないカミさん
うちは働けば働くほどビンボーんなっちゃうワーキングプア―の元祖かもしれない。
でも起こそうとすると「朝から、いやだよ、、ったく好きなんだからだ」といわれるってのは実は仲の良い夫婦だ。
でなくっちゃやってらんない。
そんな感じもしてくる小柳枝の柔らかい噺ぶり。
喜多八「五人回し」
悪いってわけじゃないけれど、、なんか力が入ってるような。
三人で切り上げる。
正楽・紙切り
「相合傘」、「勧進帳」、「紅葉狩り」、「宝くじ」、お札を翳して大黒様に祈願している、「淡海節」、楽屋の涼やかな歌声、太鼓を誰が打ってるのか本調子。
小三治「長短」
どこから話しましょうか、、今日は話すことがいっぱいある、、もののついでにこの羽織の話を、、今日は芸術祭だっていうのに私は参加する気になれない、そのわけは、、羽織を脱ぎながら、「これは黒門町のものを喜多八がもらったのだ」と、、手際よくたたみながら、
袖たたみというんです、ほら、うまいもんでしょう、前座で覚えたから今でも、、例によって、なかなか話は進まない。
教わった通りにやってればいいという世の中になった、、そこで突然「ルール」とかなんとか云ったがはっきりしたことを俺が忘れた。
「けさ朝ごはんを食べたのは高田の馬場駅前のカフエ・ド・クリエで」と言いかけると前列の客が「マニュアル!」と叫ぶ。
そうです!マニュアル、、マニュアル通りにやるという言葉が出ないから今朝のカフエのことから話そうとしていた、年を取ってマネージャーが全部やってくれて、何もしないとどんどん忘れてしまう、、だから回りくどいことを言っても自分で思いださなきゃならないのに、さっきの客がしゃべっちゃうとちくんと一刺し、すぐに「ありがとうございました」とあの笑顔で頭をさげる。
俺だってカフエで何があったか聴きたかったのに。
小三治のマクラを再現してたら日が暮れる。
要するにいつもすべてやってくれるマネージャーが体調を壊したため自分で用意をして出かけるときにあわてて着物を入れたバッグを忘れてきたということ。
それで前座の小ハゼの着物と喜多八の羽織を借りて済ませた。
寸法が合わないから早く羽織を脱いだんです。
十人いれば気は十色、気の長い人もいれば短い人もいる長さんの「ふ、ふっ、ふ」という含み笑いと小三治のあの笑顔が楽しい。
けれどもなんかスカスカしている。
あれよあれよで、「だからオセエたくなかった」で打ち出しの太鼓が3時50分、予定よりも10分も早い。
何だァ、と席を立とうとしたら、小三治が楽屋にむかって手をあげて制している。
もうちょっとつきあって客席は大喜びだ。
俺は談志が2008年1月の一門会(練馬文化センター)でどうにももたなくなって下がった幕をあげさせて謝ったときのこと、2009年8月国立演芸場での一人会で客席の坊やを舞台に上げて雑談して見せたり七転八倒の高座のことなどが脳裏をかすめ不吉な感じもした。
何も教えてくれなかった小さんの思い出、圓生のやっていた若手の勉強会(東宝劇場)で前座なのにトリをやらされた時に「うどん屋」という身分不相応な噺をやったこと、それで小さんに「いってえこれは誰に教わったんだ!」とどやしつけられたこと、初めて小さんの前でやったのが「長短」(自分では大得意だった)、黙ってうつむいて聴いていた師匠が、一言「お前の噺は面白くねえな」といって立ってしまった。
トイレにでもいったのかと待っていたけれど結局戻ってこなかった。
小三治ファンには有名なエピソードだ。
「気の長短」はかつて私の大得意な噺でしたが、黒門町の羽織をきてやっている今は不得意な噺です。深々と頭をさげて、ホントのオシマイ。
今日もお気づきの方もいると思いますがあっちこっち抜かしてしまいました、やってる自分も分かってましたから。
わあわあ爆笑させる、それが落語だと思っていました。
だけど違うんです。
気の長い人と短い人が仲良くなれる。
それはなぜなのか、それがわかるようにならないとこの噺はできないのです。
(拍手を制して)今度はちゃんとやります!
ありがとうございました。
さて、俺はトクをしたのかな。
言えることは同じことを小三治以外の誰がやっても頭にくるだろうってこと。
てことは、、やっぱりずいぶんトクな一幕を観たんだ。
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パソコンお助けマン
そこにコメントを記入して↓の「送信」というところをクリックしても送信できないのです。
不吉な予感が外れることを望みます。
saheiziさんのブログを読むと、本を読みたくなるだけでなく、寄席にも行きたくなる。お酒も飲みに行きたくなる。これを、一種「三文の徳」というのでしょう。ちょびっとお金がかかりますが……。