雨のベルンから光と闇のリスボンへの旅 映画「リスボンに誘われて」

ル・シネマ、場所は銀座と錯覚、電車を待つ間に再確認をしたら渋谷・文化村、危ないところだった。
再確認なんて珍しいことをしたのは虫の知らせか。
家を出る前に投稿したブログに「めくら桟敷」と書いたのに気がついたが電車の中では手も足も出ない牢桟敷也。
指定券を買ってちょっと時間があるので東急や地下の本屋を冷やかす。
読みたい本を写真にとって図書館に予約するのだ。
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東急百貨店の入り口に昭和39年当時の渋谷駅東口、150分の一模型が。
ナツカシイッタラナイ!都電だぜ。

映画は「リスボンに誘われて」。



スイス・ベルンの橋の上から身投げしようとしたのを救った女(落語「文七元結」を想起する隠居也)が赤いコートのポケットに忍ばせた一冊の本。
それが、深夜一人二役でチェスをする、渋いけれど俺が授業を聴きたくなるような教師(「マルクス・アウレリウスが哲人であって皇帝でもありえたのは信条と行動が一致する時代だったから」みたいなことを言うのだ)の心に火をつけた。

最初から雨のシーン、その後もリスボンに降る雨のシーン、傘は女を助けるときに川にとんでしまったから濡れるばかり、それがこの映画の魅力の一つ。
飛んでいく傘は象徴。

先生はやりかけた授業もほったらかして、動き始めた汽車(ほんとは電車?)に一人飛び乗る。
本の著者を訪ねて手には赤いコートと本だけ。
美しいリスボンの町並みを背景に著者の過去の秘密を探るセンセ、出会う人々の造型がいい。
革命と恋愛、危機一髪・一触即発のドラマだ。
赤軍派の連中のことなどもちょっと考える。
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(渋谷駅西口あたり)

燃え盛る青春の火・ドラマが明らかになるに従い先生は彼らの物語を追体験しているように目に力が宿り自然な笑みが湧いてくる。

彼らが輝けば輝くほど、自らの半生の平凡・退屈さが痛切に感じられる。
俺は又ベルンに戻るのか。
信条と行動の乖離をそのままにしてボアな余生を過ごすのか。
傘を買うのか。

ラストシーンで問いが投げかけられる。
エレベーターの中で「あれから彼はどうするんだろうね」「それを考えるのが楽しいね」とオバサンたち。
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帰りのバスを三軒茶屋で降りて「駒の湯」に入る。
貸しタオル、シャンプーがフリーだから手ぶらOK。
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(渋谷・百軒店、ラーメンを食う行列)

又身につまされる映画だった。
見るもの読むもの身につまされる隠居、多感なのだ。
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20日開店のピザ屋、食いたいなあ、多感なジジは思うのだ。
Commented by pallet-sorairo at 2014-10-17 12:04
「多感なジジ」って素敵!
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 12:28
pallet-sorairo さん、要するに食いしんぼの泣き虫ってこってす^^。
Commented by m-rica at 2014-10-17 12:51
多感なジジ イイな☆
それに見えるは ピザで有名な明石のチーロ?
東京に出店するのかな?
望郷の友達しろくまに教えてあげよう
Commented by unburro at 2014-10-17 15:42
saheiziさんは、銭湯でリセットでしたか・・・

私は、この映画を見た後、赤ワインでも飲みたい気分だったけれど、
ワインを飲んで酔っ払ったら、
ホントに何処かに行ってしまいそうだったので、蕎麦屋に入りました。
生山葵をのせた熱い蕎麦と、冷や酒を一杯、飲んで帰りました。

山葵の香りが、私を日本の日常に連れ戻してくれました(笑)
Commented by antsuan at 2014-10-17 16:41
渋谷駅、懐かしいですね。
でも、一瞬、パソコンのIC基盤かと思っちゃいました。(^^ゞ
Commented by maru33340 at 2014-10-17 18:23
この映画は見たかった映画です。
行かなくては。
Commented by k_hankichi at 2014-10-17 18:25
saheiziさん、これ、とても観たい映画なのです。しかしとても混雑していると聞きます。
Commented by chaiyachaiya at 2014-10-17 19:11
予告編の最後まで、主演の方が、ジェレミー アイアンズ だとは気づきませんでした。渋く枯れてて、いいな。
マストロヤンニが主役の、「供述によるとペレイラは」(アントニオ タブッキ著 須賀敦子訳 映画はYouTubeで見られます)を、思い出しちゃったりです。泣けてくるです。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 19:40
m-rica さん、明石の店なんですか。
桜新町のサザエさん通りに開店です。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 19:49
unburro さん、じつは私も銭湯のあといつもの一で、タコさし、サンマの炒め煮、栃尾の油揚げなどで一杯やって帰りました。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 19:53
antsuan,PCの基盤!私には思いつかないなあ。
プラネタリユームや映画館、東横線のホーム、大盛堂ももっとちゃんとした本屋でしたね。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 19:54
maru33340 さん、 k_hankichi さん、昨日はそれほど混雑してなかったですよ。
少し早めに行くとイイのですが、現役の方には無理かな。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 19:56
chaiyachaiyaさん、そうです、こんなふうな男になりたかったのですよ。
Commented by at 2014-10-17 20:12 x
多感なばばぁ、復活致しました! 
最近ラーメン屋さん、あぶないらしいなぁ、
亡くなってる方多いとか・・・・
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-17 20:18
蛸さん、こういう店には入ったことがないです。
しつこそう。
Commented by poirier_AAA at 2014-10-17 21:28
なんだかどこかで聞いた話だなぁと思って調べたら、やっぱり!
「リスボン行きの夜行列車」が原作ですね。

読みかけて途中で止めてしまったので最後は知らないのです。ちょっと文章が読み難くて。。。。いつか最後まで読めたらいいなと思っているのですが、最近そんな本ばっかり増えていきます。
Commented by sheri-sheri at 2014-10-17 22:04
今晩は。魅力的な映画のようですね。…見たあと胸に残るのですね。余韻が。・・・・スイスベルンに旅してからそろそろ20年経とうとしています。息子と二人きりの旅でした。母が突然逝ってしまって傷心の旅でした。晩秋で、ベルンのバラ公園に行くため大きな川にかかった橋をわたりました。その橋のたもとで二人でウィンナ珈琲のようなものとあちらの大きめのケーキをいただきました。思い出が甦りました。・・・ベルンは鐘の音が美しい中世の面影を残す素敵なところでした。
Commented by at 2014-10-17 23:15 x
しつこいからとちゃうで、スープの骨からセシウムって話が聞こえて来てるで!
Commented by reikogogogo at 2014-10-17 23:39
ポルトガルの旅が終わった後で原作を読みました。
映画は良かったのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-18 10:15
poirierさん、好い映画でしたが、肝心のその本の文章がわかりにくて先生がどうしてそんなに惚れてしまったのかがイマイチでした。
詩的な文章、映画だとゆっくり玩味してる間がないんですね。
そこが原文も晦渋だったのかな。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-18 10:17
sheri-sheri さん、お母さんの死を送るのにいい旅をしたのですね。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-18 10:23
蛸さん、並んできかせるセシウムのお話ですね。ずるずるっ。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-18 10:23
reikogogogo さん、原作は面白かったですか。
それほどでもないかな。
Commented by wawa38 at 2014-10-18 23:54
その後を考えたオバサンたちの一人です(^0_0^)
仕事も生活も放り出して、とてもあのようなことはできないと私の友人たち。ということは、願望があるということかと^^
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-19 09:28
wawa38 さん、映画とか小説で着替えのこととかトイレのことなど日常生活のことを考えると鑑賞の妨げになりますね。
でもこの映画はそこがポイントなんですからやっぱり気になります^^。
Commented by k_hankichi at 2014-10-26 21:21
渋谷駅前のジオラマを観てきました。すごく精巧で感銘しました。
Commented by saheizi-inokori at 2014-10-26 21:46
k_hankichi さん、青年の私も歩いていたでしょう^^。
Commented by k_hankichi at 2014-10-26 22:00
saheiziさんが、五島プラネタリウム横の地下鉄線路沿いの横丁を歩いていました。
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by saheizi-inokori | 2014-10-17 11:49 | 映画 | Trackback | Comments(28)

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