司馬遼の明治物よりも面白い 山田風太郎「幻燈辻馬車」(上下)
2014年 09月 25日
二日間やらなかった体操をゆっくりやる。
横になった俺の顔をサンチが今朝も舐めまくる。
なるほど、こりゃおもしれえヤ!
会津藩の腕っこき同心をしていた干潟干兵衛、孫のお雛と辻馬車稼業、人呼んで親子馬車。
行く先々で自由民権運動の闘士たちが起こす事件にかかわる。
危険が迫るとお雛が「父(とと)!」と叫ぶと現れるのが息子蔵太郎の幽霊。
干兵衛と蔵太郎は薩摩憎し!自害した妻(母)の仇討と西南戦争に警視庁の一員として参加したが蔵太郎は戦死。
その時の姿で幽霊は現れ、その幽霊が呼ぶと母(妻)の幽霊が現れてお雛を救うのだ。
圓朝とその弟子・圓太郎(高座で吹き鳴らすラッパが圓太郎馬車の名の起り)が冒頭に登場、その後も三島通庸、大山巌、捨松、山川健次郎、嘉納治五郎、姿三四郎、川上音二郎、貞奴、河野広中、伊藤博文、森鴎外、田山花袋などなど、歴史上の人物が重要な役割で登場するってんだから豪華キャストだ。
自由党の壮士たちがこのミステリ(でもあるのだ)の準主役。
これも実在した人物が多い。
干兵衛は彼らが好きなのだ。
おそらく慶応義塾へいっていた蔵太郎が生きていたら、その仲間にはいったかも知れないという気がする。彼自身としては、自由民権より、同じ敗残者としての共鳴感があった。しかしまた、彼らの前途に待つ悲劇を予感してもいた。
敗残者。--
干兵衛は、彼らを新時代の鼓吹者として見てはいなかった。言葉は知らなかったが、固められつつある体制に乗りそこねた、あるいは排除された連中の、政府への苦しまぎれの反抗と見ていた。
このあたりが渡辺京二が、その歴史観と明治時代の政治社会に対する深く正確な知識・洞察とを褒めたところだ。
渡辺の洞察と相通じるところでもある。
幕末の志士たちが尊王攘夷を唱えたのに代わって、彼らは自由民権をうたった。ただ幕末の志士は成功したから志士となり、明治十年代の壮士は挫折したからただの壮士となる。干兵衛は風太郎の分身でもあるようだ。
大義のためと称して無辜の車夫を殺した壮士をふんじばる干兵衛、
彼の心境は、まあ「赤軍派」の若者を見る「戦中派」に気持であったといおうか。しかも、かつて全力をあげたいくさに敗れ、すべてに挫折した男は、十数年後に、いま別のいくさに赴こうとしている若者を縛ろうとしているのであった。渡辺さん、好い本を教えてくださった、ありがとう。
角川文庫
コレドの目の前の百貨店で只今働いているので、今度遊びに来て下さい*\(^o^)/*
こんどは^^。
いったい何を読んでいたか、忘れてしまうのですよ。