雲助は浅草見番によく似合う 「強情灸」&「あくび指南」&「中村仲蔵」
2014年 07月 06日
浅草見番、開場30分前に並んで楽な席を確保してから昼飯、少し散歩。
前座・緑太「たらちね」の途中まで。
末息子に似ている、応援したくなる。
志ん吉「夏泥」
間抜けな泥棒がすっからかんの男の家に入って、「殺せ~!」と大きな声を武器に逆にゆすられる。
質に入っている大工道具の受けだし、利息、着物(素っ裸なのだ)、当座の食い物代、、「いのちを粗末にするんじゃねえ」「真面目に働け」、説教しながらありったけの金を吐き出してしまう。
泥棒も男も明るい、漫才のようだ。
落語に出てくる泥棒はみんないい奴ばかり、俺んとこにも来いよ、いっぱい呑もうや。
雲助「強情灸」
熱い朝湯を舞台にした志ん生のマクラも楽しいが先代馬楽譲りの艶笑ネタが面白い。
昨日居残り会では酔いに任せてブログに公開すると宣言したが今朝になると二日酔いのせいかその勇気はなくなった。
雲助も「これは寄席ではできない噺、これがやりたくて出てきました」といってた。
「石川や浜の真砂は尽きるとも我泣きぬれて蟹とたわむる」
これを「石川や浜の真砂は尽きるとも溶けて流れりゃみな同じ」とやるのが雲助流。
なぜそうするのか?たまたまお座敷小唄がはやっていたから。
なのに弟子の龍玉が同じようにやる、自分流のを工夫しろ、といったけど相変わらず「とけて流れりゃ」とやっている。
弟子の話をする雲助の風情は親バカのようでとてもいい。
「あ」の字に点々を振ったような悲鳴を上げてもだえる強情灸に大笑い。
「やってるあたしが暑かった!」と汗を拭きながらもう一席続けたのは、「あくび指南」。
「釣り指南」「喧嘩指南」などを一筆書きで笑わせて、あくび指南。
女がホレるようなあくびを習いたいあくびにもいろいろあって、月見のあくび、雪見のあくび、寄席のあくびはご法度、あくびの奥伝は茶席のあくび。
あくびをしているのにしているように見えず、分かる人には分かるあくび。
お道具拝見しながらそのあくびをしてみせる。
湯屋のあくび、遅い春の昼下がり,朝湯と違って熱くない、洗い場には2・3人、ときどき桶の音がコーンと響く、そのあくびは唸りから入ってヘタウマな都々逸、さいごは念仏で終わる。
実演を見ている俺も誘われあくび。
夏の舟遊びのあくびが本課だ。
ゆったりさっぱり、をたっぷり。
真似する熊があくびにならず「わあ!」と絶叫、お師匠さん「どこかの県議じゃないんだから」
中入り後、雲助「中村仲蔵」
妙見様の帰りの蕎麦屋で逢った貧乏旗本は仲蔵の顔を知っていた。
俺のナリを見て工夫するのは好いけど、変なふうにしやがったら承知しない。
しっかりやれよ!
激励して去っていく、妙見様のお使いか。
斧定九郎の旧来の形をやってみせてから、初日前夜の仲蔵の失敗したら上方へ落ちる発言。
本番を桟敷の客の様子と仲蔵の演技を丁寧に交互にやって俺たちの興奮も盛り上げていく。
この芝居を見たことのない朴念仁でも定九郎の見栄が目に浮かぶ。
失敗したと思い込んで上方に向かう途中の魚河岸で耳に入った絶賛の言葉。
それを女房に聞かせてから上方へと向きを変えたところに団十郎の手の者が迎えにくる。
叱責を覚悟して平謝りの仲蔵に
仲蔵、でかしやがった!団十郎は説明抜きで定九郎の役を振ったことを詫び、あれは五段目をなんとかましな舞台にしたかったからお前に任せたのだという。
となりの部屋に女房が待っていて、めでたし大団円。
さあ、酒だ、食べ物は?
仕出しの弁当が届いています。
弁当はいけねえ、又五段目が弁当幕になっちまう。
新しいサゲか。
なかなかいいじゃない。
せんじつ聴いた一朝の「中村仲蔵」は淡彩の味わい、雲助は天然色。
軽い噺二つに大きな噺、いずれもまことに結構な噺っぷり。
雲助もこの会には特に肩の力が抜けて楽しそうにやるのがこちらも嬉しい。
プロボウラーの斉藤恵美子さんが一人で切り盛りしている。
4人の話題は縦横無尽、さてどのくらい呑んだか見当もつかない。
さすがに駅からはタクシ―に乗って帰った。
とはいえ家の近く、メーターが上がる直前で降りた(ワンメーター)、しっかり者の隠居であった。
もう中身を忘れてる。
辺りの空気がぐっとなまめいて得も言われない^^。
雲助の「溶けて流れりゃ・・・」もいいなぁ。
志ん生は「むべ山風を嵐といふらむ」とやっていました。
ウケを狙うなら「七月六日はサラダ記念日」なんていうのも・・・
ちょっとハイレベルかな。女性フアンも多いから受けるかな。
まあ、居残り会はしゃべって飲んでればいいのですが^^。