もう取ってないよ『朝日』  烏賀陽弘道「『朝日』ともあろうものが。」 (徳間書店)

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40歳で朝日新聞社を辞めた男の朝日(ひょっとすると大手新聞社全ての)批判の書。

ハイヤーを乗り回し、高給を食み、インチキ経費処理で飲み食い、取材先へのたかり・・公私混同の乱脈な生活。

それにもまして最大の問題は「知る権利」の代理人としての公的責任を果たしていないこと。記者クラブという特殊な制度に安住するから「記事を持ってきてくれる人」の「書かせたい記事・テーマ」を書き続けることしかしない。そりゃそうだよな、場所・データ・・その他もろもろの便宜を提供する官庁・警察・・だれが自分たちに不都合な記事を提供するかってんだ。チョムスキーがいつも言う「テロ・不正・スキャンダル・悲惨な事件・・どんな事実もマスコミが取り上げる事件が事件であってマスコミが取り上げない限りその事実は存在していないことになる」。何をテーマ・事実として捕らえ報道するか(アジエンダ・セッテイング)がマスコミにとって一番大切な任務なのに”あてがいぶち”の記事しか書かないとしたらその新聞は機能不全だ。”質問をしないマスコミ”なんて!

夕刊の存在意義はほとんどない。どころか朝夕ふたつの紙面つくりのために新聞社は余計な人員を抱え、事件はずっと継続しているのに締切時間の都合で不自然な記事を読まされる。なぜ、夕刊は廃止されないか?言わずもがな。広告収入が減るからだ。

捏造も日常茶飯事、高校野球をはじめとする社主催行事に対する過剰な偏り報道、人材開発に消極的な社内(それだけ質の低い記事を読まされているのだ)、前例主義・セクショナリズムの横行、嫉妬社会、経済・社会部の人事を含めた”エリート”意識、オームにインタビュー記事の事前検閲を許す・・いろいろ事実を挙げて書いている。

驚きも半分だ。既視感が強い。そういうことだろうよ、と。

いい記事を書く、いい紙面をつくることに情熱を持ち、みんなで白熱した議論をしない。集まれば人事の噂・不平・同僚の陰口ばかり・・これもなあ、あるよなあ。どこにも。

要するに「職業的使命感」を捨て去り、高給などの既得権益にどっぷり浸り、自己研鑽など考えもしない、ましてや改革などをもっとも恐れているエセ”エリート集団”が朝日新聞にも大勢巣食っているということだ。官僚・大企業・・だけじゃないっていうこと。たとえ批判的文脈で言われようとも”エリート”と言われるのを喜んでいるんだと。

俺が今まで感じてきたマスコミの病理・病弊が「そら、言った通りじゃないか」と言う感じで報告されている。しかしちっとも”得意”な気持ちになれない。本当にそれでいいのか!

著者みたいな男もいると言うことにわずかな希望を感じる。でも辞めてしまわなきゃならないってことが・・やはり救いじゃないかも。

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「チャングムの誓い」の料理監修をしたハン・ボンニョがコンサルをしていると言う「チフアジャ」。正直なところ期待が大きかっただけに少々がっかり。せっかく買って持っていった説明の雑誌をホテルにおいてきた上にスタッフの説明もないし・・と言う面もあったのだが。
暖かい料理が少ない。宮廷だからエライサンのことを考えてわざとかな、と目黒のさんま的推測をしたり。写真は「神仙炉」(シンソルロ)。エビ、タラなどのジョン(季節の食材に卵の衣をつけ焼いたもの)、チヂミ、肉団子、くるみ、ギンナンなどをスープで煮たもの。上品な味。五味五色だ。
Commented by chaotzu at 2005-12-10 16:54
これまで実際に新聞記者に接してきた感想は、
とにかく横柄なひとが多かったということです。
悪く書かれちゃいかんと思って、ついへつらって
しまった自分が情けない(笑)。
Commented by saheizi-inokori at 2005-12-10 17:06
弱い人には横柄、いやCHAOTZUさんが弱いわけないか、謙虚な人には強く、少し押し強く出るとへこむと言う性癖がみられましたね。一部に。かなりの一部に。
Commented by waku59 at 2005-12-10 23:20
マスコミは大嫌いなんです。

正義面した無責任そのものですから。
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by saheizi-inokori | 2005-12-10 16:25 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(3)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori