惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場

起き抜けにひんやり来たので、「こういうのを花寒(はなざむ)っていうんだよ」と言って朝風呂に入っていたら気がついた。
「花冷え」だ。
春寒、余寒、それぞれどう違うのか、亡母がいたら好い話題になったのに。
惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場_e0016828_10544415.jpg
昨日も薄曇りだった千鳥ヶ淵、今日は熱燗日和だろう。
惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場_e0016828_10555461.jpg
国立劇場前の「仙台屋」(奥の桜)、濃いピンクが目立つ。

今日はさるお方が都合が悪くなって譲っていただいた、「圓朝に挑む!」@国立演芸場。

前座、明楽「犬の目」
初めて聴く人だが、なかなか面白い。
目玉をくり抜く、それを犬が食っちまう、じゃあ犬の目をくり抜いて代わりにいれちゃう、、ゴゾンジ前座噺なのだが、だれに教わったのか珍しいクスグリが多く、喋り方・風貌が噺のブラックな興趣に合っていた。

家に帰って調べてみたら、柳家小蝠が自分のブログで「明楽君との会話」と題して面白いことを書いている。
落語は初心者だという柳亭明楽さんにご飯を食べながら色々お話しを伺いました。

Q:円朝師匠って知ってる?

A:うちの協会の方ですか?
最近寄席休んでますよね?
香盤は?意外と上の方ですね。亭号は?ちょっと待ってください。、、
東京かわら版の演芸家年鑑のフリーの所を一生懸命見ておりました、とさ。
2009年の投稿だから、ネ、今は圓朝の亭号くらい知ってるだろう。
惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場_e0016828_11122269.jpg
(カンサラサ、ボケの一種)
こみち「にゅう」
妊娠9か月、女性はすぐわかるけど、男性は分からないらしい、と言ったが、俺はすぐにわかった(9か月とはわからないけど)、落語は想像力で聴く芸能だから妊娠9か月の隠居さんなんて考えないで聴いてくださいという。

圓朝がたくさん残した噺のうち、今では演じられない噺というのは、他の噺と「つく」(=カブル)ような噺であるために敬遠されるか、噺そのものがつまらないからのどっちかだ。
「にゅう」はそのつまらない噺だから、そのつもりで、、。

たしかに、腹を抱えて笑うような噺ではないが、弥吉という与太郎みたいな男のとぼけた造型は味がある。
弥吉が旦那のお使いで行った先でハチャメチャ、スラップスティックなドタバタもバカバカしいと言えばバカバカしいが、やりようによっては笑える。
こみちは善戦したが、扇辰とか鯉昇などで聴いてみたい。
惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場_e0016828_11335465.jpg
米福「塩原多助一代記より戸田の屋敷」
横顔がちょっとアチャコに似ている。
熱演だったが、一本調子。

休憩後、龍玉「やんま久次」
旗本の次男坊がグレて兄から切腹を申し付けられる。
命だけは!
そんなに命が惜しいか、情けない奴だ。
って、そんなあ、だ。

ところどころ雲助を思わせるゆったりした語り口で、もともと大きな目玉をぎょろっと、ニヒルなヤクザをやらせるとニンだ。
大べらぼーめ!
片肌脱いで見栄を切って、チャンチャン拍子木が鳴って幕。
惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場_e0016828_11425489.jpg
圓太郎「因果塚の由来」
何度か聴いたことのある「お若伊之助」がこの噺の発端で、「お若伊之助」はその20分の一くらいなものだから、今日残りぜんぶやると夜が明ける、と言って始めたのは「お若伊之助」。
あらすじだけかと思ったら、みっちりやる。
狸が男に化けて女と契って子供が出来るという噺。
30分もやったろうか、出来がいいから引き込まれて聴いていたが、いつ残りの本番に入るのかと気になっていた。

結局、残りは早口に一筆書きみたいに筋だけ話す。
圓朝のあの込み入った因果はめぐる筋の運び、名前も似たふうなのが頻出する噺はゆっくり聴いても、手元に相関図でも置かないとなかなか頭に入らないのに。

雲助がこういう噺をやるときは相関図やあらすじを用意してロビーに貼りだしたりして理解を深めていた。
噺も長い後半のどこかに絞ってそこをきちんと話すべきではなかったか(ふだん聴く機会がある「お若伊之助」ではなく)。
せっかくの国立の特別企画なのだからもうちょっと考えて欲しかった。
惜しむらくは企画倒れ 「圓朝に挑む!」@国立演芸場_e0016828_11591986.jpg

まあ、圓朝を知らなかった落語家もいるような時代だから、「圓朝」の名を題するだけでも意味はあるとは思うが。
圓朝の魅力、の片りんでも見せて欲しかったのだ。
Commented by rokoyogini at 2013-03-24 14:18
落語とても好きで興味がありますが、札幌だとなかなか
本物に触れる機会が無くてTVでしか拝見出来ず残念です。
北海道はまだ、春が遠く・・・雪がどんどん降ってきます。
3月でこの積雪は流石に異常です。千鳥ヶ淵の桜、靖国神社の
桜も満開なんですね。桜を見る度、日本人で良かったと安堵
します。
Commented by saheizi-inokori at 2013-03-24 16:30
rokoyoginiさん、地方生活には魅力があるのですが、落語とか映画など東京の引力が強くて離れることができません。
ニューヨークなどアメリカも異常な天候のようですね。いつまた東京も?
Commented by 熊伍朗 at 2013-03-24 22:56 x
やはり、都心の方が桜の開花が早いですね。
西多摩の方は、場所によっては、まだ蕾の状態のところもあります。
千鳥ヶ淵の桜・・・若い頃に見て感動した覚えがあります。
Commented by at 2013-03-24 22:58 x
すげぇな、桜、
それにしても、桜もボケもユキヤナギも一緒にやって来たんかい、
変なの!
Commented by ほめ・く at 2013-03-25 08:41 x
この手の企画は国立ならではでしょうから、次回を期待しましょう。
Commented by LiberaJoy at 2013-03-25 09:35
立派な桜を、たくさん見せていただきありがとう。
ユキヤナギは、桜の季節に、桜の下の方で
いつも可憐にがんばって咲いているのがうれしくなります。
何か、自分の姿をみているような気がします。
Commented by wildrose53 at 2013-03-25 09:39
むせかえるような桜ですね。今年はなんという速さでしょうか。
我が家は昨日ようやく雪山を除雪してもらいましたが、今晩はまた雪ちらほらの予報です。
花冷え、花曇り、花の雨。この季節の言葉はうつくしいですね。
Commented by saheizi-inokori at 2013-03-25 09:45
熊伍朗さん、同じ場所にさく同じ桜でも、こちらの気持ちの在り方でずいぶん違って見えますね。
千鳥ヶ淵は一昨年が良かったなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2013-03-25 09:46
蛸さん、北国のようです。
変ですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2013-03-25 09:47
ほめ・くさん、噺家の演出は主催者側とどの程度打ち合わせするのでしょうか。
阿吽の呼吸かな。
Commented by saheizi-inokori at 2013-03-25 09:48
LJさん、雪柳LJ!
なかなかいいじゃないですか^^。
Commented by saheizi-inokori at 2013-03-25 09:54
ハルさん、花衣なんて言うのもきれいですね。
花屑だって捨て置かれない^^。
ハナカゼは困るけれど、それだって美女がクシュンとするのは色っぽい。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2013-03-24 12:03 | 落語・寄席 | Trackback | Comments(12)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori