アベノミクスは正しい? ポール・クルーグマン「さっさと不況を終わらせろ」
2013年 03月 05日
私たちが暮らす経済社会の突出した失敗とは、完全雇用を提供できないことであり、そして富と所得の分配が恣意的で不平等であることですジョン・メイナード・ケインズが1936年「雇用、利子、お金の一般理論」で述べたセリフは、今日でも当てはまる。
2008年のノーベル経済学賞を受賞した筆者・ポール・クルーグマンは本書でケインズの言葉を繰り返し、反ケインズで凝り固まった新自由主義、シカゴ派、オ―ストリア派など、現在の政策を主導する学者たちの誤り、または故意にする曲学阿世ぶりを難詰する。
不況脱出の見込みがないから、ますます貯めこむ。
悪循環だ。
あまつさえ、増税なんて首つりの足を引っ張るようなものだ。
必要なことは
赤字国債の発行、大量の公共事業、なんといっても政府が金を使うしかないのだ。
中央銀行は金融緩和で支援すべきだ。
オバマの第一期でやろうとしたこと、遺憾ながらその規模が小さすぎた。
もっともっと大規模に、長期にわたって財政出動が必要なのだ。
赤字財政を続けることは将来に負債を遺す、という指摘が間違っていることなどを丁寧に説明する。
ギリシャやスペインととアメリカ(日本も)は、経済の規模が巨大(アメリカ)なことや借金を自国通貨で賄う(日米)ことなど、同日には論じられないことも。
どうやら、アベノミクスとか黒田の「デフレ脱却のためにできることはなんでもやる」は、上に書いた限りでは正しいようなのだ(社会保障など弱者保護の切り下げや増税などは間違いだが)。
共和党やら1パーセントの富裕層は既得権益を大事にして、公務員の首が斬られたり、弱者救済・保護が滞っても痛くもかゆくもない。
リーマンショック(銀行規制を緩めたことが一番の原因)以来、これだけの不況になったときに1パーセントの富裕層(銀行トップたちなど)ばかりは所得を増やしつづけていたのだ。
経済学者たちも1パーセント富裕層と相性は好い、彼らの気に障ることはいいたくないし、学者社会での保身もある。
何かを理解しないことで給料をもらっている人に、それを理解させるのは難しいアプトン・シンクレアの言う通りなのだった。
問題はヨーロッパ、世界民主主義の理想は良かったが、独自の予算をもち、独自の労働市場を持つ(労働力の移動が難しい)国の集まりでしかないのに、ユーロという統一通貨をもったことが本質的な問題だ。
一般的に言われるように、ギリシャ、ポルトガル、アイルランド、スペイン、イタリアなどの諸国の放漫財政が危機の原因ではない。
スペインが大量の資金流入を受け入れ、巨大な住宅バブルの資金源となって(ドイツなどを潤したのだが)、その結果スペインの賃金はドイツ賃金に比べて上昇した
バブルがはじけたらその賃金相場は引き下げられていずれは再び競争力を回復するはずだった。
しかし、労働者は賃金の引き下げには応じたくない。
もしスペインが独自通貨を持っていれば通貨切り下げによって賃金引き下げと同じ効果を得られたはずなのだ。
EUの勝ち組諸国がスペインやギリシャにお説教を垂れてより厳しい緊縮財政を求めている。
ほんとうは黒字国が財布の紐を緩めて赤字国の輸出を増やすようなことをしなくてはならないのに、自らも緊縮財政に走っている(キャメロンの間違い)。
これではいつまでたっても赤字国が競争力を回復する見込みはない。
欧州中央銀行(ECB)、ドイツも、は金利を引き下げて赤字国の救済をすべきだ。
経済学を倫理や道徳で論じ、”社会的不公正や明らかな残酷さを、進歩における不可欠な出来事として説明してしまう”(ケインズ)ことの間違い。
雇用創出よりは財政赤字に注目し、インフレのかけらですら偏執的に抑えようとし、大量失業に直面しても金利引き上げを求める、それは債権者、つまり貸し手に有利なもので、借りたり自分で生活費を稼いだりする人々には不利という側面も見逃せない。
読みやすい文章(翻訳も良い)、小気味よい論理展開。
勉強になりました。
なんでも安倍のやることが間違っているというわけではなさそう。
憲法から立憲精神を亡くそうとする自民党改憲案などには賛成しかねるけれど。
早川書房
これで失敗したらもう日本は沈没する。
こんなことに税金を使うんだったら、もっと困窮者のために使えばいいと思うのですが、私自身も困窮者ですから、仕事がなくなったら生活してけないので何も言えません。
世の中、きれいごとじゃやってけないです。
病んでいるとしか思えません。
病み続けているのが資本主義なのでしょうね。
最適解ってあるのでしょうか。
フクシマの賠償などの費用を考えるとどれだけ赤字国債を発行しても足りないのではないかと思います。
早く死んでしまいたいような世界です。
ぜひぜひ、よろしく。