眠れない夜は夜明けまでハードボイルドを 高城 高「夜明け遠き街よ」
2012年 12月 24日
夜中に目が覚めるのはいつものことだがイラつくこと、気になることがあるとそのあとが大変。
ゆうべは2時過ぎに目が覚めて落語のテープを聴いたが一向に眠くならず、そういうときは落語も面白くない。
いっそ、起きて年賀状作成をやろうと思ったがパソコンとプリンターの操作を一年たつと忘れているのであきらめて、しょうがないから読みだしたのが本書だ。
最初から読み始めてとうとう最後まで読んでしまったら朝になっていたので資源ゴミを出して新聞を読み顔を洗い、、さすがにストレッチはだるくて続けられず、、ノロは高齢者で体力の弱った人を襲うそうだからヤバイ成り行きだ。
1980年代の札幌ススキノのクラブ・キャバレーが舞台。
ママやホステスが華やかな主役とすれば黒服とよばれる男たちは黒子。
一流キャバレーの敏腕副支配人(サブマネ)・黒頭(くろず)悠介の仕事は多岐にわたる。
店内の状況チエック、ホステスの採用、引き抜き(これが重要)。
ホステスの身上チエック、相談相手にもなる、ライバル店からの引き抜き阻止も。
社長の懐刀としてもろもろのトラブル解決。
店の客のトラブルの解決も頭と体を張って人脈を駆使する。
ヤクザがらみの案件も多い。
ボクシングの達人でありながら、ときには無抵抗で用心棒の”可愛がる”のに任せる。
機転と推理力、判断力に胆力、もとより口が堅くなければダメ。
泥をかぶる決断が必要だが、その泥は最小必要限でなければならない。
なによりも相手のことを思う優しさと誠があった上で危ない橋も敢えて渡る。
正義感もなくっちゃ。
金、女、誘惑には負けない、ストイックだからますますモテルんだけど。
こう書いているとスーパーマンだね。
しかし荒唐無稽なハードボイルドではない。
クラブ、キャバレーなどの経営、ホステスの賃金体系、賭場、”業界の風雲児”たる飲食店チエーン経営者、開発プランナー、ラブホ経営、暴力団のフロント企業、、などの精細な知識・情報の上に巧みな構成がある。
かつて栄えた札幌ススキノという歓楽街とそこに生きた男や女が生き生きと目の前に姿を現す。
バブル絶頂期、こんなバカなことが長続きするはずがないと薄薄感じながらも、バカ騒ぎに狂奔していた。
地上げ、ノンバンクの跳梁跋扈、銀行の悪辣・無責任、汚職、交際費天国(官も民も)、、。
俺もそのトバ口くらいは覗いたことのある世界。
あたかも狐に騙されて田圃の中の肥溜めを温泉と思いこんでいたような世界。
遠いようでちょっと前の世界、誰も口をぬぐって忘れてしまおうとしている醜悪な世界。
筆者には「忘れさせないぞ」という思いがあるのだろうか。
重厚にして抒情あふれる、骨格のちゃんとした連作短編小説だ。
東京創元社
こんばんは
寝れないのは年のせいか?
なんて思ってたけど、皆さんそんな悩みがあったら
私は普通かな?
世紀末の感ありでした。泡が弾けてやっと地に足がついたって感じ。