頼るべき父性喪失の時代なのか 映画「少年と自転車」



「ある子供」のジャン=ピーエル&リュック・ダルデンヌ兄弟が、2011年カンヌ国際映画祭でグランプリ(審査員特別賞)を受賞した作品。

12歳になろうとする少年が父親に捨てられて施設に預けっぱなしにされている。
町で見かけたあの自転車!あれは僕のだ。誰かに盗まれたに違いない。
周りの大人は父が売ったんだろうというが、信じない。

父を探すために施設を抜け出した少年を捕まえようとする施設の男から逃げるために飛び込んだ診療所でしがみついた女性、サマンサが少年の自転車を買戻してくれる。
週末だけ里親になってくれない?
サマンサと一緒に父を見つけるが、父は「もうくるな」という。
貧しいのだ。
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父を探し、探し当て、「いつ帰ってくるの」「電話くれる?」、、泣くわけでもなく、口数少なく、父を責めることもなく、ひたすらに父をみつめて、たった一言を求める少年のうなじ、張った肩、その眼は喩は悪いがサンチが外出する俺を見る目だ。

理解しがたい、納得できない、悲しい、、
でも受け入れるのだ。
これが世界なのだ。
でも、でも、、どうやって、、?

父は辛かろうなあ。
辛いなら、、なぜ一緒に生きてやれない?!
父の眼も濡れそぼった負け犬の眼だ。

サマンサは少年の説明のない抵抗・反抗に戸惑い、恋人をも失い、自信を無くすかに見えるが、、、。
サマンサは少年によって救われたのだ。
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赤いシャツの少年が自転車で街をひたすら走る。
まっすぐに口を結んで思いつめた顔で走る。
サマンサと一緒に走るときの幸せな少年。
そうだ、少年には未来がある。

セリフは少なく説明的な描写も控え目だ。
しかしずんずんと少年の心の動きが音を立てるように響いてくる。

「ヒューゴの不思議な発明」「ものすごくうるさくてありえないほど近い」、父をなくして健気に生きる少年の映画ばかり、いずれも秀作だ。
父性を喪失した時代なのだろうか。
Commented by kuukau at 2012-05-03 10:00
「シベールの日曜日」と設定が似てるね。
父性の喪失は昔から、かも。
父性は子供と共に暮らすことでしか生まれないのでわ・・・
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-03 10:06
kuukauさん、江戸時代の父子に代表されるように父はもっと父らしかった。
たとえ実の父が亡くなっても(私のように)、信頼できる先輩、私淑するに足る人がいたような気がします。
Commented by at 2012-05-03 12:46 x
今、dlしています。 日本語ではないけれど・・・・・、
それがネックか、;;
Commented by rinrin at 2012-05-03 13:23 x
ヒューゴ・・・は見たいと思っています・・が
農作業が終わるかなぁ~
Commented by maru33340 at 2012-05-03 16:19
これも観たい映画です。今日は『ル・アーブルの靴みがき』を観てきました。至福の人間賛歌でした。
Commented by poirier_AAA at 2012-05-03 18:44
しばらく前に観ました。自分が女だからかもしれませんが、わたしはサマンサに脱帽しました。彼女はすごい。女って細かいところまで口を出し過ぎて鬱陶しがられたりするものですが、彼女はどーんと子どもを信じて待つんです。(実際は動じているんだけれど、どこか腹が据わってます。役者のせいかも。)そこが凄い。ある意味、男親の役を果たしているのではと思いました。

父性は、別に生物学的父だけの専売特許ではありませんよね。
Commented by mama at 2012-05-03 19:38 x
この作品、監督が2003年(?)に来日したときに、施設で親を待ち続ける少年のエピソードを聞き、着想を得たと、どこかで読みました。まだ出掛けられそうにないのですけれど、下高井戸あたりで観られるかなあ。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-03 20:10
蛸さん、フランス語ですか。
でもあまりセリフがないから、、。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-03 20:10
rinrin さん、隠居のようにはいかないですね^^。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-03 20:15
maru33340さん、そちらも見たい中には入ってるのですがね、、。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-03 20:17
poirier_AAAさん、そうだと思いますよ。
今や男性がなよなよと、泣き虫だったりして。
サマンサは恋人と別れて少年を守ることで自分も大きく成長したのだと思いました。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-03 20:18
mama さん、同じような子供が大勢いるのでしょうね。
この子はサマンサに巡り合えてとてもラッキーです。
下高井戸はどのくらいたつと来るのでしょうね。
Commented by HOOP at 2012-05-03 23:05
mamaさんがおっしゃっていますが、
石井小夜子弁護士がかかわった日本のエピソードが発想の原点だそうです。
すごいですね。
Commented by tona at 2012-05-04 08:59 x
サンチ君の目は単純な喜怒哀楽以外の訴えるものがありますね。
それがすごく魅力的です。ある種の人間より心があるような。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-04 09:43
HOOPさん、日本の実話はどういう展開になったのでしょうか。
サマンサがいてくれたらよかったですが。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-04 09:58
tona さん、今朝もちょっと具合が悪くて横になっていたら心配そうに寄ってきて手を優しく舐めてくれました^^。
Commented by みい at 2012-05-04 11:47 x
いい映画ですね。
観たいです。
でも上映(近くでは)してないのいね~
サンチ君大事な大事な家族ですものね。
気持ちは通じあいますよね^^。
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-04 11:51
みいさん、都会住まいにもいい事はあるのです^^。
いつも讃岐の自然を羨ましがっているんですから。
Commented by junko at 2012-05-04 19:59 x
CIao saheiziさん
父性と言うか、母性もやばいことになってません??
人間であると言うことの根本の問題を問われてると思うのですよ
人間としての自己がしっかり確率されていなければ、所詮それが自分の子供であっても誰かの面倒など見切れないのではないか??と
Commented by saheizi-inokori at 2012-05-04 21:47
junko さん、そうかもしれない。
サマンサが少年を支えたのですから。
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by saheizi-inokori | 2012-05-03 09:37 | 映画 | Trackback | Comments(20)

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