月食前夜青ひげの城に行く
2011年 12月 10日
やっぱり子供の頃の思い出があるからだ。
今から思えば保温効果なんてしれた洋服を重ね着して、「ハッハッ、さびーなぁ、ちめてーなあ」白い息を蒸気機関車のように吐き出して両手を温めながら友達と登校する。
霜柱を踏んで水たまりに張った氷をいちいち割りながら駆けだす。
学校につくとオシクラ饅頭、相撲、馬跳び、、授業が始まるときは汗びっしょりだった。
皮膚科の先生に、抗生物質はもうやめましょう、歯医者に行ってもいいですよ、と言われる。
歯医者の技術進歩って凄い。
あっという間に割れた歯の欠片を取って後をプラステイックで成型してくれた。
エントロピーに対するささやかな抵抗だ。
渋谷NHKホール、はじめてだ。
こうして見るとNHKの施設って広くて立派なもんだ。
料金で作ったと思うといささか複雑な気分。
ホールの中で食べた稲荷ずし弁当600円、お茶200円を高いと思う今日この頃だ。
指揮はシャルル・デュトワ、ヴァイオリンはグルジア出身のリサ・バティアシュヴィリ。
紫のドレスを着た美人、繊細にして迫力もある演奏。
弦楽器と管楽器、それにヴァイオリンが押したり引いたり、囁きかけ、高らかに歌いあげ、グルグル回りながら大空高く舞い上がっていく飛翔感に酔っていた。
前の方の好い席だったからなおのこと、見ていてもうっとりするコンサート、ほんとに久しぶりだ。
指揮は同じくシャルル・デュトワ。
ハープが2台のほか舞台後方は打楽器がズラー、総勢100人もいるかというような大編成だ。
登場人物は青ひげにバリント・ザボ、ルーマニア出身とユディットにアンドレア・メラース、真っ赤なドレス、ハンガリー出身の二人だけ。
窓がなく真っ暗で湿っぽい城、すすり泣くような音はハープなのか、そこにある閉じられた部屋をユディットは開けていく。
拷問の部屋、武器庫、宝物庫、どの部屋にも血が流れ血痕がある。
第4の部屋を開けると美しい庭園が広がっているが、そこの花や土も血で汚れている。
第5の部屋を開くときに、ホール右手のバルコニーに登場した8人のトランペットが響き渡り、炸裂するオーケストラが広大な領土に案内する。
「あなたの国は美しく大きい」、その国はお前のものだと言われて、ユディットは讃嘆の言葉を繰り返すが表情は暗くなにかを探し求めているようだ。
雲から血が、、。
青ひげは、もうなにも言わずに俺を愛してくれというがユディットは残りの部屋も開けろと言ってきかない。
第6の部屋を開けると、そこには真っ白な湖、静かな波一つない純白の湖。
俺はマグリットの絵を連想した。
それは「涙の湖」だと青ひげは繰り返す。
第7の部屋を開けると美しい女が3人、生きたまま歩み出てくる。
彼女たちはそれぞれ「夜明け」「真昼」「夕暮れ」に青ひげと会い、ともに領土を広げ花に水をやった、永遠に生きる(青ひげにかしずく)女たちだ。
そしてユディットはもっとも美しく、夜を支配する女として3人の女ととともに去っていく。
青ひげは
あとは永遠の闇だけが残るとつぶやく。
愛は血の凍る恐怖を侵しても相手のことを知りたい、そして光溢れる城にしてあげたい。
嫉妬は恐怖を克服する。
いろいろ考えられる。
オーケストラの劇的な楽しさも満喫した。
こういう楽しみも人生にはあったのだ。
若いときにチケットを頂いて行ってみても途中で退屈して帰ったこともある。
隠居して初めて解った楽しみかもしれない。
皆既月食前夜の月は真ん丸だった。
リサ・バティアシュヴィリのその録画をビデオでようやっと観た。maruさんの絶賛と、Saheiziさんの年末の繊細にして迫力もあるしたそのひとのものだ。ビデオは12/9の演奏、Saheiziさんはその翌日の公演のようだ。 ブラームスのヴァイオリン協奏曲は、ぼくは学生時代から浪速の漫才のような曲だと信じて疑わなかったのだけれども、リサの演奏はそれを底辺から覆した。凛とした跳躍の曲だった。厳しい姿勢と柔軟なる優しさの混合。 彼女は、しとやかで控えめさのなかから精神を滲みださせるような身のこなし(...... more
青ひげは無理やけど....
あ、そうか!夜とは限らないんだね。
今日はコバケン指揮の第九を聞きに行ったそうです。
うちは夫があまり音楽に興味が無く、私はお金と暇が無く、
なかなか行けませんが、
隠居したら楽しむクラシック、なかなかよさそうです。
現役時代はお金も暇も作れても楽しむ気持ちが少なかったような気がします。他に楽しいことが(自分にとっては)たくさんあったから。
NHKホールはコンサートで何度も行きました。冬場は風がひゅるひゅる吹いて、駅までの道がとても寒かった記憶があります。これで600円、お茶200円は絶対に高いですよ!
渋谷駅まで割と広い坂道、風が吹き抜けますね。