それで勘定は合ったのかい 桃太郎vs寿輔「犬猿二人会」
2011年 11月 06日
「ごしたい」(疲れた)のような明らかな長野方言を使うのではなく、噺方のイントネーションとか間の取り方、妙に理屈っぽいような説得調、または訳知り調とでもいうような話法。
自分でなにかを断定しておいて「うん」と納得しているようなところもある。
帰って調べてみたら、ピンポン、小諸出身だとあった。
先代の小さんも長野市出身だったような気がするが小さんのテープでそれを感じたことはない。
桃太郎で長野話法を感じるのはマクラとも漫談とすらいえない放談、雑談のときだ。
小さんはそういう雑談はしなかったものなあ。
先日、久しぶりに桃太郎を、その後やはり久しぶりに寿輔を聴いて、どちらも面白かったのでちょっと期待して来たのだが、桃太郎には外れた。
あの時はポンポンと機関銃のようにダジャレや地口みたいなのが連発されてそれは芸になっていて面白かったのだが今回は単なるつぶやきみたいなものだ。
それでもコアな客なのだろう、ひと言一言に受けていた、ファンは有難い。
桃太郎が大島を粋に?着ていたのに対して寿輔はトレードマークのチンドン屋風の着物、池袋のときと同じ黄緑ペンキ色。
この人に末広亭でいびられた噺を書いたっけ。
ずいぶん前のこと、末広亭の桟敷席で寿輔を聴いていたら「旦那、ずいぶん勇気がありますね」と言うセリフ、実はそれまでうつ向いて携帯メールを見ながら聴いていたのだ、足を投げ出して。
どっと笑う客席に何事かと顔をあげたらみんな俺の方を見ている。
反対側の桟敷にはかなり座っていたのに、どうしてか右の桟敷には俺が一人きり、そのことを指しての言葉にも聞こえるが要は携帯をいじっていることに対するジャブだった。
振動もしないサイレントモードだったとはいえ携帯はご法度だもんな。
聴いていると寿輔は客席の誰かれに「奥様」とか「お嬢様」と話しかけるようにして話す癖がある。
先日の池袋で最前席にいて「毎日おいでいただくMさん、ありがたいけれど、やりにくくてしょうがない、なんでも知ってるんだから」と云われていたご婦人は今日も一番前に坐っている。
池袋、ここは特に噺家の唾が飛んで来そうに近い席だ。
やりにくいというのは本心じゃないかしら。
ちょっと真面目な口調で、最近子供がテレビの人気者になっていることについて
受けるからと言って子供を使うのはよくない文化傾向だという。
子供と動物は可愛いから受けるに決まっている。
それで済ましている文化はよくないし子供にもよくない、法外な収入とか学業阻害、親が悪い!
だいたい子役は大成しない、、。
賛成だ。もっとも大人のタレントもほとんど子供並みの発言しかしないクイズ番組とかバラエテイ番組じゃああまり変わらないとも思うが。
噺は「釣りの酒」
金語楼が作って師匠の円右に教え、円右から習ったのだそうだ。
長谷川町子の初期とか田河水泡などの昔の漫画を見ているような楽しさに満ちた高座だった。
寿輔が羽織を着ずにあがって、子供のころは古典落語が好きだったが落語家になった瞬間、新作で行こうと思ったという。
何万もあるという古典落語のうち今演じられるのは300くらい、面白いから古典になった噺のなかでも厳選された300、面白くないはずがない。そんなのをやってもしょうがない、と思ったといったかどうかは聞き洩らした。
グリム童話からオペラになって、それを円朝が落語にした「死神」、そういう経緯で出来たんだから子供でも分かりやすくやるべきだと思うと前置きをして
なにやってんだ~、ぼおっと突っ立って、、、あ、もう噺に入ってますよ、お嬢さん、、中に入ったらどうだい元気なカミサンがどうにもならない亭主を
豆腐の角で頭ぶつけて死んじまいな志ん生が「穴泥」に使うギャグを振って、ダメ亭主が死神にあう。
呪文を「アジャラカモロッコアルジエリア、、」と変えたり登場人物をひねったり、ちょっとしたギャグを挿入するが、そんなことをする必要がないとはさっき自分で云ったばかりじゃないか。
でも普通に面白かった。
桃太郎、上がると
「浮世床」をやろうと思って来たのに、来月の落語会でそれをネタ出ししちゃったから今日はやるなと言われた、4分前に云われたジョークかと思うと、来月の会場が日本橋劇場なのは広すぎる、お江戸日本橋亭くらいがいいのに、大きな会場で50人(今日の客数)しか入らなかったらどうしよう、、同じことをなんども繰り返す。そのたびに受けている、お愛想笑いみたいな笑い声も交えて。
三平の嫁がなんで三平と結婚したか、と聞かれて落語が素晴らしかったからと答えた、それはあり得ねえ~。
正蔵は小朝に教わらなきゃいいんだ。
天才は近づく者からみんな吸い取っちゃうんだから小朝に近づかない方がいい。
だいたい人情噺なんか教わったって、いちども笑わせる噺ができなかった人が人情噺をやってもしょうがない、、、。
しばらく無言で上を向いていると思うと
これからどうしようかと考えているんです。赤羽の喫茶店が10時半までやってるから、そこで本読んで帰ろうかと、、もう噺はやるつもりはなさそうだと思いかけたら、突然「勘定板」に入った。
茨城だか岩手だかハッキリ聞き覚えていないのだが方言でトイレのことを「かんじょう」(「閑所」?)といい、出す(大)ことを「かんじょう、ぶつ」という。
海や川の上にせり出したトイレの上に板を置いてそれにまたがる、その板を「カンジョウ板」という。
勘定板に出したものは波が洗うのだ。
そういう言葉を知らない(99%!)旅館に来た勘定文化の客が着くなり「カンジョウぶちたい」と云い宿の方は「お勘定」と思い(当然)、トンチンカンなやり取りになる。
最後は勘定場が混んでるから部屋でカンジョウしてくれ、勘定板=ソロバンはこれだ、といわれ「こげなちっこいモノの上にぶってこぼれやしねえか」「どんな大きな勘定でもここにはおさまるから心配しないで」と、、。
桃太郎はカンジョウをこらえる客のふりをたっぷりやって爆笑、最後はとうとう最後までバッチクやってしまった。
円生だったかのを前に聴いたのは最後まではやらずソロバンが"空で”階段を滑り落ちたのだった。
方言に始まり方言で終わる落ちるところまで落ちた長い記事はこれにておしまい。
そういえば、もともと桃太郎の登場人物には名前がありませんね。 どうしてなんでしょう? 最初の興味は、桃太郎が連れていた犬の名前はなんだったのか、 ということだったのですが、 考えても、考えても、名前は思い浮かびませんでした。 おじいさん、おばあさん、そして鬼はもちろんのこと、 猿や雉にも、名前はありませんよね。 それで勘定は合ったのかい 桃太郎vs寿輔「犬猿二人会」 人気blogランキングへ ... more
そんなに広いのですか。
一度くらい、見てみたいものです。
新聞記事を報道するテレビって不思議です。
長野はこれも別の親友の実家が篠ノ井にあり、高1の夏休みに2週間滞在しました。
家の玄関前に大きな樽が置いてあり、そこのお婆さんが立ったまま用足しをしているのに驚きました。家に風呂がなく、近くの温泉が共同浴場になっていたのですが、混浴でこれまたビックリ。高校生には少し刺激が強すぎましたね。
毎日のように千曲川に行って魚をとり、それが晩御飯のおかずです。
今振り返ると、楽しい思い出ばかりです。
篠ノ井から通っている連中もいました。