バラと演劇と、酒は抜きにして 彩の国シェイクスピア・シリーズ「アントニーとクレオパトラ」
2011年 10月 08日
わが”シェイクスピアに魅せられて”シリーズは第3弾というわけだ。
会社の流れに逆らったとして窓際におかれた末、この地に新しい仕事を与えられた。
賃金は減り、三人の子供のこともあり、仕事も右も左も分からない不安な毎日だったがそのうちに面白くなって夢中になった。
知ったかぶりをする部下の意見を鵜呑みにせず、他社の事例を実地に学び専門家の意見を訊いたり、、適当に日々を送ろうとする部下からは嫌われた(お客様には喜ばれたけど)。
若かったなあ、あんなにムキになって、ばかみたい。
ムキになることで自分を支えていた。
途中の円乗院には多宝塔がある。
与野七福神のひとつ大黒天にもお参りする。
バラ園がある。
とても親切に教えてくれる。
もっとも「こっちをまっすぐに行って二つ目の角を左に曲がれば劇場が見えてくる」ということなんだが。
ほれ、昨日書いた↓狂言の「萩大名」状態だからね、この俺も。
坂道を自転車を押して後ろから来たらしい。
劇場施設の中のカフエでカレーを食ったら想定外にいけた。
開演時間を気にする人たちが行列を作っているのにいつまでもくっちゃべっているオバサマ方の多いこと。
蜷川幸雄演出、松岡和子翻訳、原作はあのシェイクスピア、そして彼のアントニーとクレオパトラにオクテヴィアス・シーザーなど世界史に燦たるヒーロー、ヒロインが登場する、面白くないわけがあろうか。
スフインクス、狼の乳を飲む双子、大英博物館に飾ってありそうな像が立ち並ぶなかに出演者が勢ぞろいしてお辞儀をして、さあ始まりだ。
場面転換のたびにスフインクスの像が引き出されるとエジプト、狼と双子ならローマというしかけだ。
舞台の三方の壁に出入口がいくつかしかけてあってそこを役者たちが出たり入ったりすると時は2000年以上も遡り英雄と絶世の美女・女王の恋が燃え上がり陰謀と戦争が世界を滅ぼそうとし、人が笑い、愛し、裏切り、怒り、苦しみ、死ぬ。
いつの世も人間は愚かで、それが可愛い。
妖婦クレオパトラというイメージをもっていたが、むしろ気の毒な薄倖の人だったのか。
クレオパトラは安蘭けい、アントニーが吉田鋼太郎、オクテヴィアスが池内博之、、新劇ビギナーの俺には未知の人ばかりだが熱演である。
休憩をはさみ3時間を堪能した。
あのシェイクスピアのみっちり中身の濃いセリフを日本語の口語会話として話すのは至難の技だろう。
そのうえに俺の聴覚がかなり衰退しているからだ。
能では謡を聴きとるのがとても難しい、そのうえ意味も分からないことが多い。
しかし能だと分からなくても舞う姿に見とれ謡やお囃子の心地よさに身を委ねていればそれでいいような気がする。
シェイクスピアはそれではつまらない。
やはり前もって翻訳を読んで行こうと思った。
図書館で借りていては間に合わないので清水の舞台から飛び降りるつもりで会場で売っていた松岡さんの文庫を三冊買ったわけです。
夕方には帰宅したのだがずいぶん疲れた。
毎日武蔵浦和まで通っていた頃からは考えられない。
こうしてみると行ける内が華だな。
当時、「別所中里自治会」の会長にてKさんという鋼の老女史がいたことを、新幹線で通過するたびに思い起こします。
かつて開渠のドブ川だった別所排水路も舗装されて暗渠となり、すっかり大樹となった桜並木が素敵ですネ。
当時、工事の都合で、K女史の猛反対を押し切って、八重桜の老木を伐採して苗木を泣く泣く植えた頃にたどり着きます。
そんな一日を送ってみたいなぁ,
三県跨りは遠いですね。時間もともかく距離が。
演劇が古代ローマとエジプトですから、想像の翼は駆け巡りました。
それを思うと今盛りの並木道でしょうね。
あとは記事に書いたようにシアターの中にあるカフエのカレーがまずまずです。
バラ園も。