政治家が民意をくみ上げなかったら? 新潟日報報道部「原発を拒んだ町」
2011年 05月 09日
有効投票率88・92%
原発反対 12,478票(61%)
原発賛成 7,904票(39%)
住民投票を推進した町長が「町民の総意を受けて炉心予定地にある町有地は東北電力に売らない」としたことで事実上建設は中止された。
巻町史に「8・4」として刻まれたこの日は日本の、世界の原発と住民の闘いにおける記念日なのかもしれない。
推進派が多数を占める議会、国は「住民投票は意識調査に過ぎない。町としてそれまでに東北電力と合意してきた内容は生きている」と言い、その後も町の「町電源立地対策課」の廃止に抵抗、電力負担で建設する予定の道路財源に県が非協力態度をとるなど、町は反対派対推進派の対立もあり多難な、ポスト「8・4」ではあった。
観光リゾートにするからと不動産業者に土地を買占めさせた前史の後、1971年に正式に公表されてから半世紀、小さな町、巻町は原発のもたらす富という幻想と、現実のカネ、そして原発を政争の具にする自民党内の二大勢力(中選挙区時代)にもみくちゃにされたかのようだ。
この間に東北電力から巻原発建設に支出された金は289億円。
そのうち内容が明らかにされたのは漁業補償費47億円のみ、巻町と岩室町に支払われた協力費39億円がこの中に入っているかどうかについてもノーコメントだという。
高値売却を当て込んだ土地バブル(買い占め)もあった。
ひところと比べれば町の地盤沈下があったことは、ここもご同様ではあるが、自主財源の比率が高く税収の占める割合も大きい。
新潟市に隣接(ベッドタウン)、角田山と日本海に挟まれた穀倉地帯、ホタルの里、県内最古の山谷古墳、、。
厳しくても住民の知恵と努力で生き生きとして生活を築くことは決して不可能ではない町だった。
原発に「慎重」と云って町長や議員になったあとは推進派に変身する政治家。
町の行政は役所に(県・国の意を受けた)握られて、議会はほとんど機能していないし議員たちにも無力感をもちながら任期を過ごす人も多かった。
そういう町がどのようにして世界が注目した「原発住民投票」をやり遂げたか。
その運動の中で“普通の奥さん””普通の若者”たちがどのように目覚めていったか。
自分たちの町の将来は、国や県、電力会社、一部の有力者が決めるのではなく、自分たち自身で決めたい中央から町までを通しての政治に対する不信。
その中で半ばあきらめていた人たちが、自分たち、子供たちの安全を脅かす原発というモンスターの出現に対して立ち上がったのだ。
原発をひっこめさせることはできたがこれからの巻町をどう活性化していくのかには多くの課題がある。
しかし住民投票を完遂、原発を撤回させる運動の中で芽生え育った人々の「自分たちの町は自分たちが守り育てる」という強い意識と自信が、課題を克服していくと思う。
「8・4」以降に何度かに分けて新潟日報に連載された記事をまとめた本。
地方紙の記者の土地への愛情と義憤が感じられる。
湯布院、池子など住民による政策実現活動で知られる自治体のルポなどもある。
直接民主主義=俺たちの意見を聞け!への要求は、あちこちに見られる。
郵政民営化を争点にして解散・総選挙をした小泉などはそういう動きに敏感だった。
菅だって今、原発の是非を国民投票にしたら?人気回復、一発逆転、総解散をやってみようか、くらいな夢想をしているかもしれない(東北の実態を見たら解散総選挙など夢想でしかないが)。
政治家が民意をきちんと把握せずに永田町や○○村の論理で動いていると怖いことになる。
岩波書店
なすびさんのアドバイスに従ってこの本から図書館で借りてくることにした。
子どもの頃から本に飢えていたので大人になって「本を買う」という行為自体に淫していた。
読んだ本は転勤するたびに職場に寄贈して来た(このブログもそもそも寄贈するホンについて社員にメモをつけるような意味があった)。
隠居になったら貧乏になったし寄贈するところもなくなった。
図書館で本を頼んで帰り道に安い酒屋によって一升瓶をぶら下げて青い風になぶられながら帰ってくる。
好いなあ。
日本ではこれが現実だという。 しかし、成功した自治体はある。 saheizi-inokoriさんの記事 「政治家が民意をくみ上げなかったら? 新潟日報報道部「原発を拒んだ町」」にあるように 新潟県の巻町(現在は新潟市に編入)がそれだ。 しかし、今回の福島での事故をみればわかるように、 今後、原発を新設する際には。最低でも80km圏内、普通に考えれば200km圏内の すべての自治体で住民投票を実施し、受け入れの可否を問うべきだろう。 もちろん、現行の交...... more
でもあんまり見ないですね。
原発と町の活性化・発展を結びつけたことで、多くの原発地域が第二の福島の運命を背負うことになったのだと思います。
行ってみたいですね。