あなたがいるから私がいる なぜか泣けてくる 金子みすゞの世界

金子みすゞを発掘(?)した児童文学者・金子みすゞ記念館館長の矢崎節夫さんの講演を聞きました。90分間何度も涙が出そうになりました。75年も前に26歳でなくなった詩人が、今、こうして俺を感動させる。凄いことだと思う。いい話がいっぱいですが今日はその導入部のひとつを紹介します。

あなたがいるから私がいる なぜか泣けてくる 金子みすゞの世界_e0016828_7583922.jpg

金子みすゞは「私と貴方」を「貴方と私」へ変えた人だ。多くの人はまず「私」があって「貴方」がある。でも本当は「貴方」があるから「私」があるのだ。「親」があって「子」があるんじゃなくて「子」がいて初めて「親」になる。だから「子」と「親」。子供の方からみたら「親」があって「子」がいる。「親」と「子」だ。そこが全てのスタートだ。

自分が「人間」だという認識は周りに人間がいて初めて成立しうる。無人島に育てば「あなた」も「わたし」もない。自分が人間だという意識もない。

理解ということは「貴方」のところまで目を下げて行って初めて可能になる。人はそれぞれ理解の”融点”が違うのに自分の考えで「これだけ話したから分かるはずだ」と決め付ける。でも相手にとっては融点まであと1度足りなくても理解できない。理解してもらおうと思ったらもう1度分、頑張って話さなければ駄目だ。その努力をしない方が悪いのに多くの人は相手を悪く言う。そこで理解が止まってしまう。

貴方と私は同じ・等しい。ふたつでひとつ。一人と全員でも同じ・等しい。みすずコスモスでは全てはふたつでひとつ。例えば生死一如。

なんと言うことだ!さっき聞いていたときは活き活きと俺の心や体中にしみこんで来た言葉がこうやって書き写していると干からびた言葉になってしまう。”喜び飛ばし”(矢崎さんが教えてくれた言葉)は思いのほか難しい。詩を引こう。

つもった雪

   上の雪
   さむかろな。
   つめたい月がさしていて。

   下の雪
   重かろな。
   何百人ものせていて。

   中の雪
   さみしかろな。
   空も地面(じべた)もみえないで。


この詩を読んである年配の男がハラハラと泣いたといいます。「俺は今まで”中の雪”のことなんて考えてみたこともなかった。なんと、何も考えないで生きてきたのだろう!」と。あなたがいるから私がいる なぜか泣けてくる 金子みすゞの世界_e0016828_23134716.jpg







矢崎さんの話を聞いたホテルから見える宇品の海

Commented by みい at 2005-10-14 11:47 x
みすゞさんの詩は大好きです。子供の頃には確かに持っていたはずの世界、大人になるにつれ忘れてしまっている。そんな真っ白いココロを思い出させてくれます。
    見えぬけれどもあるんだよ
    見えぬものでもあるんだよ
       「星とたんぽぽ」より
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-14 12:24
みいさん、知ってますか?ネパールの学校を矢崎さんたちが「みすず資金」という運動で創ったんだって。ネパールの子が日本語で「見えぬけれどもあるんだよー」って、とてもきれいな声で合唱しているテープを聞かせてくれました。みんなが大好きな学校を作ってくれた「見えぬもの」に感謝して合掌して歌うんですって。
Commented by sakuraasako at 2005-10-14 17:31
saheizi-inokoriさん、宇品の海からすてきな話と詩を持って帰ってくださってありがとう。干からびた言葉なんかじゃなくて、確かなぬくもりが伝わってきました。
Commented by ひろちゃん at 2005-10-14 21:38 x
「みんなちがって みんないい」、これはみすずさんの「わたしと小鳥と鈴と」の最後のフレーズですが、これの意味するところを、サラリーマンの世界に当てはめると、社員それぞれの個性を十分に生かしてあげられることだと思います。しかしながら、現在の会社とか社会では、なかなかそうもいかず、このままでは将来が心配です。東京でも、みすずさんの講演会があったら、聞きたいものです。
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-14 23:23
私が聞いた講演会の演題が「みんなちがって みんないい」でした。これは自分に言う言葉ではなく相手に言う言葉なのですね。それができないのです。なかなか。
Commented by そら at 2005-10-15 14:09 x
saheizi-inokoriさんの魚になった梟の記事を読んで、
金子みすずの詩を思い出していました。

そして今日、こんなに一連の金子みすずの記事があって、
何だかとてもうれしかったです。


Commented by saheizi-inokori at 2005-10-15 14:13
そらさん、ありがとう。みすず現象というのがあるんだそうですね。人に感動を伝えたくてたまらなくなるのだそうです。あっ、そうか、そらさんは既に。私の場合は会う前から影響を受けてしまったのかな。梟たちは予知能力もあるのかもね。
Commented by みい at 2005-10-15 15:09 x
ネパールの子供達の歌声聞きたくなりました。校舎の壁には日本語とネパール語とで「みんなを好きに」が銅版に刻まれて飾られているそうですね。みすゞコスモス改めて浸ってしまいました。
Commented by saheizi-inokori at 2005-10-15 19:20
ネパールの澄み切った空に、その空に負けないくらい澄んだ子供たちの「見えぬけれどもあるんだよー」の歌声でした。75年前に先崎と下関しか知らないで亡くなった26歳のみすずさんが遠いネパールで甦っているのですね。
名前
URL
削除用パスワード

※このブログはコメント承認制を適用しています。ブログの持ち主が承認するまでコメントは表示されません。

by saheizi-inokori | 2005-10-13 23:25 | よしなしごと | Trackback | Comments(9)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori