年の始めに読みたい本 クレア・キップス「ある小さなスズメの記録」
2011年 01月 04日
誰しもそんな経験があるのではなかろうか。
この実話(副題は「人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯」)を書いたキップス夫人は50歳の時に瀕死のスズメの雛を拾って、途方もない忍耐と繊細な手際で蘇生させる。
それだけでも奇跡的なのに彼女(”一人暮らしの寡婦”)は、先天的に羽と肢に障害があるそのスズメを家族のようにして育てること12年余、老衰で死ぬのを見届けるのだ。
著者を親と思いこんだスズメ、クラレンスと名づけるが「BOY」と呼ばないと反応しない、は次から次へと奇跡を演じる。
ダンスをしたり、ヘアピンで著者と綱引きをしたり、トランプカードを一枚ぬきとり咥えてグルグルまわしたりしてドイツ軍の空襲に対する市民防衛隊を慰め喜ばせる。
歌を歌うスズメなんて聞いたことがあるかい?
著者がピアニストだったからかもしれない。
著者のベッドを巣と思いこみ巣籠りの至福感を見せてくれる。
深い愛情と知性、優しいユーモアにあふれる文章が素晴らしい。
感情を抑制して淡々とスズメの行動や感情を描くからかえって感動を誘う。
とくにスズメが自分の老化と戦うところは胸を打つ。
万策尽きたとき獣医はシャンパンを飲ましてみようと提案する。
この小さな同志は、ティースプーンからその不快な薬を、少しも嫌がらずに全部飲んだのだ。彼は明らかに生きる意志を持っており、そして聡明だった。私たちがなんとか彼を助けようとしていることが分かっていた。いつもはティースプーンにビタミン剤や薬が入っているのを嫌い、
ティースプーンが目に入ると、彼はがっくりと小さな頭を落とし、視線をそらすのだったーやんちゃ坊主そっくりに。のに。
小鳥がこれほど老衰と闘う姿は初めて見たと獣医は驚く。
(不屈の意志を持つスズメは)屈する代わりに、ますます自由が利かなくなっていく状況に自分を適応させ、愚痴をこぼすことも(明らかに)なく、何か違うという思いをもつことも(おそらく)なく、味わえる限りの生の歓びを享受し、精一杯の活動を楽しんだ。1952年、スズメの亡くなる少し前に著者は思い立って写真を取ってもらう。
神経質になって見知らぬ人やものに怯えて逃げていたスズメが写真を取るに際し堂々とそれに応じ、何年も前にやって忘れていたと思われた芸の数々もやってみせたのは”驚くべきことだった!”
スズメは二羽まとめて一銭で売っているほどのものである。しかしそういうスズメの一羽ですら、主の許しなしでは、地に落ちることもかなわないではないかマタイ伝の言葉だ。
写真を撮るので適当なサイズの本(「日々の光」)をつかみ取って無造作に開いたのに。
この箇所は、聖書のページの中で、それぞれ個性をもった被造物が、創造主にとってどんな価値を持っているかを、驚くほど具体的に明らかにしている啓示の部分である。この写真は、このように無知で取るに足りない一羽のスズメの肖像であるが、意識せずにカール・マルクスよりも偉大な教師となっているのである。これはいわば、彼の短い説教であり、懐疑と不安に満ちた人類への別れのメッセージとも思われる。そういうものとして、私はこれを記そう。みいさんのブログで読んで(みいさん、ありがとう)子供向きの本かと思った。
「しかるに怖るるな!汝らは多くのスズメにもまして価値があるものである。」
クリスマスに名古屋に住む本好きの孫娘(10歳)と電話で話して、スズメのことを書いた面白そうな本があるから送ってあげるね、と云った。
そのあとアマゾンで送られてきた本を見たらレベルの高い文章で子供には分からない言葉が多い。
でも正月に電話したときに、難しい本だけれど読んでみる?と訊いたら、うん!と嬉しそうな返事。
ママ泣かせかもしれないが送ってやろう。
訳は梨木果歩。
彼女のあとがきも好い(もちろん訳も)。
文藝春秋
おめでとう御座います、本年も宜しくお願いします。
雀の寿命ってそんなに長いのですか?
文鳥やカナリアを飼っていましたが、
気付きませんでした。
大晦日から、棚積みしていた文庫本に
ふと目が行って元日にかけて、読書しま
した。(珍しく)
門田隆将著 「なぜ君は絶望と闘えたのか」
本村洋の3300日 あの光市母子殺害事件
でした。 主人公の厳しいながらも、変遷し
ていく心の葛藤をズシント胸に受けました。
少し、重かったけれど!
我がゲン(十兵衛の先代)も動けぬ身体になってゆくとき、それでも前足で必死に後ろ足を引きずり廊下を進み、表で用を足そうとしました。歩けないのに、、、最後の食事もベビーベッドに寝たきりで、スプーンで私がお手製の栄養タップリの食事を嫌がらず、食べました。スプーンに入れた栄養ドリンクも。
生きたい!!意欲を最後まで失わず、、頑張り、私たち家族4人にお別れを行ってから逝きました。
動物好きな姉が弱ったスズメを拾い、蘇生させ、元気に手から餌を食べるようになりました。スズメは珍しいのです。人から餌を食べるのは。その子は元気に巣立っていきました。私が小学生の頃でした。思い出し、読んでみたくなりました。
野生のままだと寿命をまっとうすることは少ないようですね。
人が飼っても12年を超える例はあまりないのではないでしょうか。奇跡と云っても過言ではなさそう。
その本も読みたいリストにはあるのですが、、。
たしかに著者の愛情の深さには感動します。
ウワ、読んでみたい
不二ちゃんが、具合があるくてよれよれの時に、それでも雀を取って食べたと言うのも彼女の生きることへの欲望の表れであると思ったけど、動物から学ぶことは多いですね
梨木果歩さん大好きな作家です
不二ちゃんの先祖だったかも^^。
リンクとTBありがとうございます!
この本は、ほんとたくさんの人に読でもらいたいですね!
最期、老いに立ち向かう雀(そんな雀がいるとは)に感動ですよね。わたしももう一度読んでみたくなりました^^。
サンチ君のお洋服かわいい^^。
西洋では鯨だけでなく、スズメからもバイブルに至りますか。勝てませんねぇ。
私も書評を読んでkaoriseさんを思い出しました。ぜひ読んでみたいです。実家から送ってもらう荷物があるので、この本と、佐平次ベスト20の1位になった蕨野行をネットで購入して荷物に入れてもらいます~。
窓のトコロにインコの餌を置いておくと、沢山、集まって来るのですが、一羽づつ個性があります。
特に、親子は見ていて飽きないぐらい、感情が伝わってきます。この本のスズメは幸せな一生ですね。
彼は殆ど無視したようです。気ぐらいの高いスズメです。
それより何より、何かと接点が多い、saheiziさんと私の読書傾向ですが、この辺りまで共通すると、怖いくらいです(笑)
今まで、「活字中毒、乱読ですよ」 と人には謙遜?していたのですが、振り返ると大きな流れ、好みがあることを今更ながら感じます。
読書日記などを書く余裕があれば良いのですが・・・当分無理ですね。
ところで、俳優の山崎努の読書日記は、面白いですよ。
(既に御存じかもしれませんが・・・)
山崎務の読書日記、どこかの雑誌に連載してましたね。いまも続いているのかな。
新劇の俳優の読みは深い、そうでなくては役作りなどできないでしょうからね。