イギリスもダメなんだな ジョー・ウォルトン「バッキンガムの光芒 ファージングⅢ」
2010年 12月 29日
第Ⅱ部から10年、ナチスによってソ連は消滅、イギリスにもファシスト政治が定着している。
イギリス版ゲシュタボ・監視隊の隊長・カーマイケルは可能な限りユダヤ人を救う裏組織を運営。
彼が引き取って育てた、殉職した部下の娘・エルヴィラはオックスフォード進学と女王に謁見する社交界デビューを目の前にしている。
カーマイケルの正体を暴こうとするかつてのヤード時代の上司とねじれた恨みをもつ今の上司である首相。
イギリス貴族の”奇習”ともいうべきデビューの細部が興味深くあほらしい。
貴族でなくて良かった。
第Ⅰ部、Ⅱ部を受けて一層スリルに富んで面白い。
ユダヤ人、同性愛、階級差別に対する批判と”ブッシュのプードル”となったブレアに対する痛烈な当てこすり批判が作品の底に流れているが生の形ではないエンタテインメントに仕上がっている。
なんしろ日本の陸軍大将がイギリスにアメリカ分割をテレビ番組で持ちかけるんだから。
日本もイギリスも原爆を所有しているのだ。
訳 茂木健
創元推理文庫
「逃亡」長英逃亡」
漂流」「戦艦武蔵」
ハラハラドキドキ。充実の4冊でした。ありがとうございました。
来年も楽しみに読みます。