コイル状の渦巻を昇ろう 上野玲「うつは薬では治らない」

隠居したらいくらでも時間があると思ったけれど一日にやれることが減ってしまったのはがっかりだ。
ジムは全然行けないから休会員にしたし毎朝のテレビニュースの前でやるストレッチもほとんど出来てない。
体力気力の衰えも大きいが生活にメリハリがなくなったから逆にやらなければいけないと思う瑣事に追われて気持ちにゆとりがなくなっているのかもしれない。
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(昨夜の晩飯、インスタントカレーに野菜を切っただけ)

早い話がランチだって前は会社の近所で食べればよかったのに今はサンチの散歩(これだって暑くなる前に出かけなくちゃと焦る毎朝だ)が終わるとすぐに何か考えなければならない。
散歩の途中で茄子と豚肉を買って、玉ネギとピーマン、ネギ、ゴーヤも残っていたから炒めるかァ、キムチはあったっけ、生姜と味噌をちょっと足して、味噌汁はキューリに豚肉の脂をちょっと浮かして茗荷の吸い口で、なんてね。
サンチと散歩しているとベランダいっぱいに洗濯ものが翻っていたりして家族の懐かしさを感じる。
三人の子どもが小さくて妻も俺も忙しかったのに毎朝井の頭公園で一時間も気功のマネごとが出来たのが不思議な気がする。
家庭の力、ってのがあったのだろう。
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前に鬱病のことを書いた「NHKスペシャル うつ病治療 常識が変わる」を紹介した。
不適切な投薬とかいい加減な診断について問題提起した本だ。
コメントを頂いた中で「病気で苦しんでいる人が読んでいることを考えて不用意な発言やコメントを控えて欲しい」というようなお叱り?があったように記憶している(今確かめると俺の返信だけ残っていて本文は削除されているが)。
ほんとに苦しんで藁にもすがりたい思いの方などは、簡単に薬は効かないだの医者は頼りにならないなどと言われると心細くもなるだろうし、そういう方を励ましている家族の方にしてみれば余計なことを無責任に言うなと腹も立つだろう。
ご同情申し上げる次第だ。

と言いながら本書も又題名の示す通り薬の効き目に否定的だ。
著者は自身がうつ病という診断を受けて12年抗うつ薬を飲み続け自殺願望に今も襲われるそうだ。
うつ病が脳内のセロトニンの不足によって起きるということ自体が仮説に過ぎないからそれを前提にした薬はすべての人に効くとは限らない。
それどころかSSRIなどの新薬には衝動性・暴力性が亢進するとか依存性があるなどの副作用が指摘されている。
例によって売らんかなの製薬会社が不都合なデータを隠蔽して不勉強な医師を抱えこんで患者を増やし薬を飲ませ続けている側面がある。
、、、NHK本に負けず、医師と製薬会社の不愉快な関係を書いているから真面目なお医者さんはお怒りになるかもしれない。

大変でも、足を使って、好い(目を見て話す、ちゃんと説明をする、相性がよい、、)医者を探して、よく話をして、訊いてじっくり治すことが必要だ。
やはり治すのは自分だ、甘えてはならない。
と言われても、それがなかなか大変だろうな。
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著者が信頼している沖縄協同病院の蟻塚亮二先生はご自身もうつを体験した方だが「完治」=「元の自分に戻る」ということはありえないという。
元の自分に戻る、ということはうつを発症させた悪い環境に戻ることを意味する。
だから再発するのだと。
円を描くような治療プランではなく、軌道をずらして、三次元的にコイル状のような渦巻を描く生き方を推奨する、とおっしゃる。
今までとは違った生き方を模索する、違った生活習慣、価値観、人生観を探しながら医師と相談して治療を進めるべきだと。

話は飛ぶが、この「コイル状のような渦巻を描く生き方」という言葉は俺には懐かしい。
かつて社員たちに同じことをなんども言ったことがある。
何かをやろうと頑張るときに直線的に上昇していくことをイメージすると息切れがする。
頑張っているつもりでも以前より悪くなったかのように思うこともきっとある。
その時に自分は直線上を歩いているのではなくてコイル状の渦巻の上を歩いていると考えるといい。
軟らかいコイルの真中をつまんでぶら下げてみると渦巻の一つ一つはときには下がっていることもある。
しかし、そこを歩き続けるとやがて昇って行きまた下がるかもしれないが最後には天辺に辿りつくのだ。
志を喪わずに歩き続けることが大事だよ、と。

そんなことがあるから蟻塚先生ってなんだか信頼できそうな気がする。

文春新書
Commented by junko at 2010-07-08 15:28 x
Ciao saheiziさん
私は鬱病になったことないけど、鬱病で悩んでた(過去形。私の知ってる何人かは克服したんだよ)人は何人も知ってる
その克服した人の治癒は、すべて、すべてだよ、私の知ってる限り
歯を食いしばって薬を止めることから始まった
私もね、薬会社の裏事情を聞いたり、読んだり、そしてちょっと気をつけてみてると、簡単にわかる
そんなモノを知ってるせいか、奴らの作るものが信用できない
だから私はもう26年以上薬というものは、一切飲んでない
症状によって、薬の助けが必要な時もあるかもしれないが
習慣性があるから一度始めてしまったら、止めるほうが苦しい気がする

コイル状っていうの、いいたとえだねえー
さすがsaheiziさん
私もそう思う
それは、鬱とかそうでないとかに関わらず
みんな人って日々変わっていくものなのだと思うから
決して元には戻れないんだよね
そしてさ物事がよくなったり成長していく過程で、一直線に上向きってのはあり得ない
波を描くんだよね
だから、上がったらちょっと落ちるんだ
それを知ってると、ちょっと落ちてもがっかりしない
なんかさ、そこがポイントのような気がする
むやみやたらに一喜一憂しないこと ^^
Commented by junko at 2010-07-08 15:33 x
追伸
今うつ病で苦しんでいる人たちが、今日の午後には心の闇の中に、一筋の光を 
明日には、ふた筋の光を 見出して
そしてその光が彼らを彼らのトンネルから導き出してくれますように
心から心からお祈りする
少しでも、明日気持ちよく時を過ごせる人が、増えますように

彼らの闇は、他人には決して理解できないものだから
祈るしかできないから、祈る
Commented by takoome at 2010-07-08 16:18
サワディ〜カ〜
コイル状の渦巻きを歩きながら転けてしまって泣いて遠方から電話がかかって来た。
そんな事もあるさ、って言って話を1時間以上聞いた。
今朝はまた、歩き出していたよ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-08 19:54
junko さん、私はよく薬を飲むのですよ。毎日尿酸と神経痛の薬、眠れないと自律神経の薬、今日は皮膚科でかゆみ止めの薬を処方してもらいました。
我ながら困ったものです。
コイル状、私は螺旋状と言ってましたが、ぐるぐる回りながら上がったり下がったりしながら少しづつ昇って行くのっていいでしょう?
そう思っていないと自信がなくなっちゃうのですよ。
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-08 19:55
takoome さんが後押ししてあげたんですね^^。
よかったなあ。
Commented by kaorise at 2010-07-08 23:58
心と体調との関係は大きいなと思います。
私の友は重い病気で鬱っぽくて大変だったんです、、でも西洋医学の治療と漢方ですごく元気になりました。
今も病気ですが、外出も出来るようになって、身体が元気になると考え方もかわるんですね、、びっくりしました!
医者の言うことは参考にして、自分の体質に合った治療を探すのが一番大切だと思いますが、重い鬱になってしまうと判断力も低下するので、周囲の人の理解と協力は重要ですよね。
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-09 07:54
kaorise さん、その通り、一緒に治してあげないと。
心の風邪何ていう言い方は正確ではないそうです。
Commented by 旭のキューです。 at 2010-07-09 08:43 x
コイル状の渦巻きを歩くですか、勉強になります。人生余裕をもたんといけませんね!(^^)!
Commented by tona at 2010-07-09 09:06 x
>コイル状のような渦巻を描く生き方
関係ないのに、登山のような感じがしました。苦しくても粘れば、最後に頂上に到達できました。
しかし体が元気でないとそれも敵わないわけで。

職場に行かなくなったらもっとたくさんのことができそうなのに、その反対にという事態は全く同感です。私の場合、緊張感はもう遥か彼方に置いてきてしまった感があります。
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-09 09:58
旭のキューです。 さん、ゴルフの腕前はそうはいかないですか?
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-09 09:59
tona さんは今でも物凄い活動量じゃないですか!
以前はもっとすごかったんですか?
Commented by tona at 2010-07-09 15:36 x
子どもが十歳ころまではちょっと大変、最後の十年間は週6日仕事、あと家事全部で往復するだけの人生でした。やはり今より活動していたのかしら。
Commented by naou7 at 2010-07-09 20:18
なるほどコイルですね(^O^)
なんだか楽になりました…
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-09 20:41
naou7 さん、続けること、ですね。きっといつかびっくりするくらい上にあがってます。
でもちょっと揺れるとぐっと沈み込むのです。
Commented by kaorise at 2010-07-09 22:43
そういえば、書き忘れました、、
saheiさんのランチョンとお皿、しゃれてる〜女の子みたい!
そうそう、あつあつのカレーに、生ピーマンを千切りか輪切りにして混ぜる(煮ないんです、混ぜるだけ)と美味しいです。
夏の味、って感じです。
Commented by saheizi-inokori at 2010-07-10 09:35
kaorise さん、ありがとう。
彩りですね。味もいいけれど緑が加わると食欲が一段と刺激されますね。
RF1という総菜やは赤・黄・緑を鮮やかに盛り付けることで大躍進しました。
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by saheizi-inokori | 2010-07-08 15:06 | 今週の1冊、又は2・3冊 | Trackback | Comments(16)

ホン、よしなしごと、食べ物、散歩・・


by saheizi-inokori