もう少し聴かせてくれないか 立川談志「談志の最後の根多帳」
2010年 05月 23日
彼の落語に三通りあると。
ひとつは名作と呼ばれ、演者と深く結びつき、「十八番」などと称されるもの。
文楽の「寝床」「明烏」、三木助「へっつい幽霊」「蛇含草」「味噌蔵」「宿屋の仇討」等々。
それらは昔のままに忠実にやってきた。
ふたつ目は、よくできた古典落語ではあるけれど、内容、落げ(さげ)等々に疑問を感じるものがあり、改作を重ねてきた。
たとえば「大工調べ」や「三方一両損」。
最後に短い小噺等々から談志が作り上げた自作といっていい「金玉医者」「二人旅」「やかん」等々。
ネタの数は百を超えるあたりがちょうどいい、そうだ。
そして基本的には”おんなじものは演らない”という良心、いろいろな形で不満を感じて直していくのが“芸術家の態度“と照れながらいう。
まず「直した落語、作った落語」として50ばかりのネタを紹介してひとことづつコメントする。
たとえば「居残り佐平次」、なんども作り替えているうちにどんどん変わって佐平次が肺病であることなんかどうでもよくなって「行き当たりばったりの人生」こそ、この落語の面白さだと思うようになり、ついにはイリュージョンが入ってきて”エヘラポー””ニシツラー“なんて変な言葉を佐平次に言わせている。
そのせいかなあ、俺は最近夢うつつの人生だぜ。
志ん生の「黄金餅」は死体を担いで寺までの道中の言い立てを完全なものに直した。
本書に書いてあるところを俺の「志ん生集」と比較して見ると「上野広小路へ出まして、御成街道から五軒町へ出て、そのころ堀様と鳥居様のお屋敷の前をまっすぐに、筋違御門から大通りへ出まして、神田の須田町へ出まして、新石町から鍛冶町へ出まして、今川橋から本白銀町へ出まして、、」と志ん生が言うのに対して「上野の広小路、新黒門町から御成街道をまっつぐに五軒町へ出る。鳥居丹波様のお屋敷の前を通って旅籠町へ出る。仲町、花房町、筋違御門から大通りへ出る。神田へ出てまいりまして、新石町、須田町、鍋町、鍛冶町、乗物町。今川橋を渡って十軒店、本銀町へ出る」とする。
直す談志もくたびれた、、写すあたしもくたびれた。
第三章は「“演らない”にも訳がある」として108ならぬ109のネタをあげる。
談志が絶対に演らないのは「なめる」のようなグロのエロ、「おかふい」のようなグロも嫌い。
人情噺も、直してなんとかなるもの(「芝浜」「紺屋高尾」「子別れ」)以外は演らない。
単純な勧善懲悪、甚五郎シリーズも嫌い。
めくらの噺もダメ、変に身障者に配慮する風潮があって中途半端になる。
落語リアリズムのないものは演らないってこと。
それと上方弁のように完璧にはできないものは演らない。
怪談噺はバカバカしくて、、。
過去の名人が完成させてそれ以上に演じることが出来ないと思われる聖域には踏み込まない。
志ん生の「火焔太鼓」、文楽の「船徳」、三木助「味噌蔵」、圓生「おしくら」、小さん「強情灸」、、など。
「青菜」「幾代餅」「井戸の茶碗」「厩火事」「おせつ徳三郎」、、全滅、「片棒」内容が嫌い、祭りの再現なんぞ面白くもなんともない。
「甲府い」が大嫌いってのは俺もそうだろうと思う。
「百年目」の人情噺に近いから嫌いってのは分かるけれど、俺が前に書いたようにもっと番頭の遊び好きなところをデフォルメしたら面白いんじゃないかな。
同感するところもあるし、こんないい噺をどうして?と思うところもある。
最後に「粗忽長屋」「鉄拐」「居残り佐平次」「芝浜」「二人旅」「落語チャンチャカチャン」の最近の録音を全文書き起こしている。
どれも
作り替えた落語にさえも飽きてしまって、談志の分身とでもいうか、落語の中の登場人物が勝手に噺から飛び出してきてしまったある意味で究極の談志落語だ。
「芝浜」の後に
また違った『芝浜』が演れました。これは高座でしゃべったのかな、いい感じだ。
よかったと思います。一期一会ですね。けど、アドリブでこんなにできる芸人を、そう早く殺しちゃもったいないような気もする。
楽屋へ入ってまた、反省というか、振り返りたいと思います。くどいようですが、一期一会、いい夜をありがとうございました。
2007年12月18日、よみうりホール、俺は聴いていない。
つい最近も談志のキップを取りそこねた。
もう無理かな(俺も談志も)。
梧桐書院
芸術は一生勉強かぁ。。
勉強はともかく食べてみたい^^。
聴きに行ったことが無いのに、知っているストーリーはなぜかかなりあります。
聴きに行こうかしら。
↓ 戦争の裏話は凄いでしょうね。重苦しくて読めるかなという感じです。
「トレーシー」はそれほど凄い話ではないのですがじわじわと来ます。
オバマ大統領に黄金餅を山ほど送って、基地は国外へ行ってもらうと言うわけにはいかんかねぇ〜〜!!
買う気になる物はなかったなあ^^。
いつでしたか、談志さんの引退記者会見をTVで拝見したとき、
正直で、粋で、色気のある方だと思いました。
もう少し聴かせてもらえないか!...ほんと、そうですね。
先日、用事を済ませたあと、
不忍池近くの鰻やさんに立ち寄り、グラスビールで乾杯。
するとどこからか、ピーヒャララと囃子の音。
外に出ますと、上野駅周辺は、骨董市の旗..。
かなりの混雑でしたね、この日の上野は。
お写真拝見してビックリ!
もしかして、
同じ日にこのあたりを歩いていたのかもしれませんねぇ。