「かってこい」とは? 大野晋ほか「東日本と西日本 列島社会の多様な歴史世界」
2010年 05月 20日
万葉集の「東歌」は長野・静岡以東の国から集められている。大野晋による「ことば」と題した文章から。
古代から大和地方の人が「アヅマ=東」というのは言語的に三つに分かれる。
その一つは今の関東から北の地方、いわばズーズー弁の地方。
その二つ目は長野・静岡以東で「見ろ」「勉強しない」「勉強しなければ」「雨だ」「広く」「買った」という。
以西ではそれぞれ「見よ」「勉強せん」「勉強せねば」「雨じゃ、雨や」「「広う」「買うた」という。
大まかに言ってこの境が東西の方言の分岐点になる。
そして三つ目が岐阜・愛知以東でこれは東京式アクセントと京都式アクセントの境になる。
不思議なのは伊勢神宮のある伊勢国、あるときはアヅマに入れられあるときは入れられない。
俺の母は富山の生まれ、俺は長野育ちだからアクセントが違った。
「雨が降る」が「飴が降る」に聞こえた。
学生時代に寮でカナズチが必要になったときに倉敷から来た先輩が「寮委員会でカッテコイ」というので買いに行った。
そうしたら貸してくれたので、手柄顔をして帰ったら「借りて来い」を「カッテコイ」、「買って来い」は「コウテコイ」だといわれて大笑いしたことがある。
大野は
日本民族、または日本文化の成立を考える上で非常に重要だと思われる一つの線、東日本と西日本の対立という大きな線が一本クローズアップされて来つつある。東日本と西日本との風俗、習慣、言語の相違は、漠然と、そしてまた、当然のこととして、人々に認識されている。つまりこれは一般的には、距離的な隔たりによる自然の現象と思われやすい。しかし、これは私の見るところでは決して、単なる距離的な隔たりによる現象ではない。由るところ遠く深い原因によるさまざまな現象の重なり合いの結果が、今見るような東日本・西日本の文化となっているのである。旧石器時代から近現代史までの東西日本の対立・交渉の歴史をいくつかのテーマに分けて専門家が概説する。
長い(前後)頭の東(アイヌ系)と短頭の西(朝鮮系)、東海・関東の野伏と西国の海賊、親方や年寄りが支配する東と年齢階梯制の西、囲炉裏の東と竃の西、フンドシの西と腰巻の東、馬の東と牛の西、柱の間の間隔を決めるのに東は柱割=柱間の間隔を先に決めるのに対して西は畳割=畳の枚数によって柱間の間隔を決める、譜代と外様、江戸っ子と上方者、瓜実顔と丸顔、白虎隊と奇兵隊、三井と住友、賢治と白秋、、、。
書く人は大野晋、小浜基次、芹沢長介、江坂照弥、小林行雄、渡辺保、杉山博、宮本常一、伊藤ていじ、久野健、村井益男、宮本又次、西山松之助、大江志乃夫、高木宏夫、町田佳声、山本太郎、小松伸六、尾崎秀樹、網野善彦(解説)
どうやら東と西ではもともとずいぶん違う人々がそれぞれ異なった歴史を築いてきたようだ。
大和朝廷に対立する独立国が東国に存在したという学説もあるし。
東日本の後進性にのみ視点を合わせるのではなくてそこには独自な文化が成立したという見方、地域差に視点を置くことの重要性。
とくに古代から中世にかけて東と西では社会構造に大きな違いがあるという見方、それが現在にも尾を引いているのではないかという問題提起は面白い。
たとえば網野が解説で
荘園・公領の規模が大きく、郡司となった豪族が諸郷に子孫を植え付けてゆく惣領制的、主従制的関係の発達した東日本と、小規模で散在的な荘園・公領に、百姓名主、公文、下司等々が重層的な職の体系をなし、それぞれの階層が姻戚等の関係を通じて横に結びつく座的組織の目立つ西日本との間には、決して後進、先進の関係では解決のつかぬ、社会の構造上の違いがあるといって差支えないと思われる。と書いている。
このことと関係があるのかどうか、俺はかつて労使関係の真っただ中で苦労したことがあるが、東の組合運動の進め方と西のそれとは違うものを感じた。
乱暴にいうなら東の方が教条的になりがちで西は柔軟・現実的なのだ。
30年前に出た本の文庫化だから現代の研究成果から見ると少し古いかもしれない。
東京一極集中の現在は、東の後進性などということがかえってピンと来ないか。
学問として読むのではない俺には実に楽しい本だった。
羊泉社MC新書
最近ゴシタイので、こんなコッテリ系のラーメン食べたいなぁ。。
へ~~~~おもしろい
私は一応江戸っ子なんだけど、
昔からなぜか西のほうが肌に合うんですよね
日本も縦に長いから、その文化の違い結構顕著ですよね
この花、すごく面白いですね
けだし「猫が興奮したときの尻尾」と言ったら、見目麗しい日本人ガイド嬢にケラケラと笑われたっけ(東言葉?)
そのうえ、西日本は南方系稲作文化(それを担った呉越系の弥生時代人)と北方系騎馬文化(それを担った扶余系の古墳時代人)の重層・融合で成り立っているんですよ。
「河内、山城、大和」と「斑鳩、飛鳥、平群」、どこか言葉の感じが違うでしょ。(笑)
私は宮崎や秋田の人がよっぱらって話すとほとんどわかりません。
網野さんの解説と関係があるんでしょうか。
それはともかく,にほんばしとにっぽんばしの違いは有名ですね。
ブラシノキ。この花の咲き方が面白いと思います。近くの公園にはシロバナがあります。もう咲いているんですね。早速見に行ってきます。
日本語の最初、始まりは北からでしょうか・・・・・?
どの説にも決め手はないのでしょう。
「日本語の起源」等々のシリーズが面白くて、かつて夢中になって読んだことを懐かしく思い出しました。
こちらでは、「ください」ということを「かー」と言います。
「それ」は「ほれ」になり、「ほれかー」で、「それください」という意味になります。
他にも、「あるでないで」で、「あるじゃないですか」という意味。
こちらでは、「アルデナイデ」はお店の名前に使われたりして、県外客にウケていますよ!
saheiさんを大好きなのが伝わってきます。
もちろん前から大好きだと思うのです、でも今は大好きを意識しはじめた幸せが伝わってくるというか、、
大人になったのかなあ?
一番面白いと思ったのはgakis-roomさんの
>ヤマト朝廷が全国を一元的に支配した,なんてことは虚構じゃあないかと思っています。
まだ日本列島全土を支配している権力は存在しないじゃないっすか。
東の恫喝献金から西の袖の下集金。
まして言語に至っては....
身近な話、TVのニュースカスターの、アクセントどころじゃなくて「生き生きする」と「行き来する」から「やむを得ない」「やむを負えない?」まで、管理職やお局様アナウンサーの人事異動に従ってフラフラフラフラ。
宇宙にもいろいろあってアングラ宇宙とか^^。